130.真相
《キリエSide》
ヴァジュラさんの歓迎会は、途中でマコラさん、そして仲間の小猿さんたちを加えて、深夜まで続いた。
小猿さんたちは進化して、猩猩っていう魔物になったわ。
マコラさんと、猩猩のみんなは、わたしの友達になってくれた。
いがみ合っていた子らが、仲良くなり、めでたしめでたし……。
と思っていたのだけど。
深夜、わたしはひとり寝室を抜け出して、彼女の元へ向かっていた。
デッドエンド村を抜けて、奈落の森のなか。
そこは、大きな湖が広がっている。
その畔に彼女がいた。
「ヴァジュラさん」
「こんばんは、キリエ」
わたしはヴァジュラさんの元へ行く。
布面で素顔を隠した彼女は、がしがし……と頭をかいた。
「こんな夜更けにどうしたんだい? 良い子は寝る時間だよ」
「うん……でも、ヴァジュラさんが、なんだかわたしに話したがってるような気がして」
ヴァジュラさんが黙って、がしがしと頭をかく。
「どうしてわかったんだい?」
いつものちゃらけた感じはなく、真面目に聞いてきた。
「そんな目をしてる気がしたの」
「……布面で顔隠れてるんだけどね」
「そうね。でも……そんな気がしたの」
直感としか言いようがないけど、ヴァジュラさんからはそういう、構ってほしいオーラのような物が出ていた、と思う。
「たいした直感力だ。それも神のなせるわざ?」
「いえだから……神じゃあないからわたし……」
「それ、いつまで保つつもりなんだい?」
なんだか見透かされてるような気持ちになった。
でも……わたしの答えは決まってる。
「わたしの信じる神は、ノアール神さまだけよ」
わたしに力を授け、導いてくれた大恩人。
ノアール神さま。
彼がいなかったらわたしは今ここに居ない。
たくさんの友達に囲まれて、楽しい生活を送れていない。
今幸せなのはノアール神様のおかげ。
すべては、神のお力なのだ。
「そうかい。まあ今はそれでいいと思うよ」
「……?」
「なんでもない。さて……キリエ。君の言うとおりさ。僕は君だけに、真実を告げておこうと思ってね」
真実……。
そう言われて、思い当たることがひとつあった。
「エレソン様の死について、かしら?」
「ご明察。さすがキリエだね」
わたしの前の聖魔王、エレソン・イノリ様は、死んだ。
しかもその死に、ヴァジュラさんが深く関わってるという。
チャトゥラさんたちがエレソン様のところへ行ったとき、血濡れたヴァジュラさんがいたそうだ。
「君に語ったことも、チャトゥラに行ったことも、真実だ。でも……ひとつ、伏せてることがある」
「……それを、わたしに? どうして?」
「君には……」
もにょもにょ、とヴァジュラさんが言いよどむ。
彼女の頬が赤い。普段彼女が見せる、理知的な感じではなく、どことなく幼いような……そんな表情。
「君には嫌われたくないんだ。だから……嘘はつきたくない」
別に嘘をついていたとしても、その人に特別な事情があるなら、別にそれは良いと思うけども。
ヴァジュラさんはそう考えるらしい。
「キリエ聞いてくれ。エレソンを殺したのは、僕だ。これは事実だ。でも一つ……重大な隠し事がある。語られてない真実が、ある」
「……それは?」
彼女は躊躇わずにこういった。
「エレソンに、頼まれたんだ。自分を殺してくれって」




