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異世界防衛戦線-刃と翼編-  作者: ミネアポリス剣(ブレイド)
序章2
23/23

23.帰還、しばしの休息

初めての人もリピーターの人も拝読ありがとうございます。

異世界防衛戦線の過去編として初めた刃と翼編、一旦この話で区切ろうと思います。

次回からは異世界防衛戦本編を更新していく予定になります。



今後の予定としては、

現代編 異世界防衛戦-the_Sentinel-

・10年後のルーキーが登場する予定です。

・主人公は「僕」に戻ります

過去編 異世界防衛戦-勇者と極道編-

・作中登場したベルンハルト財団の工房記、倒産寸前の町工場を再建する話になります


を考えています。


今後とも宜しくお願いします。

23.帰還、しばしの休息



討伐した三災獣(トライディザスターの毛皮、二枚のうち一枚は討伐の証拠品として緋本原(ひほんばら)旅団に引き渡した。

「もう一枚はいります?」

「好きに使えや」

三災獣(トライディザスターを放置していた場合、緋本原(ひほんばら)から西方の前線への物資輸送に支障が出ていたところだ。

早期に討伐したことで大きな問題になる前に兵站が回復したので、追加報酬ということだ。緋ノ(ヒノモト)の人間は結果を出す相手には寛大な傾向があり、緋本原(ひほんばら)旅団指揮官の稲葉大佐も例外ではなかった。


もう一枚の皮もすぐに買い手がついた。

『帳簿係』経由で企業に売り込みをかけたら大手被服メーカーの干支勝(えとかつ)商店が手を上げた。

解析用のサンプルとして使用するということだ。

1000万で買い取るということだ。

緋ノ(ヒノモト)において、地方への進出に最も野心を燃やしているのが『企業』だった。需要の飽和でジリ貧の内地に見切りをつけた多くの企業、財閥が新たなフロンティアを目指して地方に進出している。

恭士郎が取引しているベルンハルト財団もその一つだった。


ーあの若造、随分金払いがいいと思ったらっやはり競合がいたわけか。


ベルンハルト財団の若い研究員を思い出す。

地方は強力な外来種、原住民、原生生物が出没する危険地帯とされているが、欲の深い企業には危険は目に入らない。

企業の興味は強力な外来種、原住民、原生生物、こいつらがどれだけの利潤をもたらすか、それだけだった。

そして恭士郎はじめ外人部隊の転生者はこいつらの欲のおかげで飯が食えている。


「てことだ、企業とはコネを作っとけよ。コネがなけりゃ『帳簿係』のおっさんに紹介してもらえ」

「ハイ」

恭士郎は異世界転生初心者のセシリアにこの世界の力関係と、その中での立ち回り方を教える。

ここで暮らす限り遠からず必要になることだ。「じゃ、じゃあ、セシリアちゃん・・・また、一緒にお仕事しようね・・・はぁ、はぁ」

「うるせー!さっさと失せろボケぇ!」

任務(クエスト)を生き残ったランドセル男は恭士郎から報酬を受け取るとエクレールの銃撃によって転げ回りながら退散していった。

「じゃ、夜鳴子(よなご)に帰るわ。またなんかあったら呼んでくれ」

恭士郎一行は緋本原(ひほんばら)支部での完了手続きを済ませると帰路についた。



屋根、壁、電気、水道、ガス、これだよ、これこそ人間が人間らしくいられる空間だよ。

ルーキーが紹介された新居は人間が健康で文化的な生活が出来る素晴らしい場所だった。

2LDKの間取りは一人で住むには広すぎるくらいだ。

雨風がしのげる。

蛇口をひねれば水が出る。

スイッチ一つで電気がつく。


それらのありがたみをかみしめながらも、ルーキーにとって嬉しいことは他にあった。


石を詰めた靴下で殴ってくる警官がいない。

スタンガンで拷問してくるヒノモトマフィアもいない。

空飛ぶサメも人食い蛸に襲われる心配もない。空からミサイルが降ってこない。


緋ノ(ヒノモト)に転生して初めて心から安らいだ気分だ。

「ありがとうございますありがとうございます」

だばだばと嬉し涙を流しながら不動産業者の手を握りしめる。

「喜んでくれてうれしいですなー。こちらの物件でよろしければ支払いをお願いしますなー」

即断即決、電撃戦術。

ルーキーは現金を詰めた大型のキャリーケースを開ける。

内圧で飛び出した札束を業者に渡す。

「ありがとうございますなー」

業者は現金を詰めて領収書をルーキーに渡す。「私はこれで失礼しますなー」

必要な分の金を渡しても冬を越すのに十分な額が残っている。

この安心感。

冬の間自分の命が約束されている。

その事実に気が緩み床に寝転がる。

『畳』と呼ばれる草のフローリングが心地よい。

外人部隊のタコ部屋や漁船のハンモックでは到底味わえない、手足を伸ばして寝られる快感が愛おしい。

ルーキーの意識は穏やかに夢の中に沈んでいく。

「そうそう、ここ夜鳴子(よなご)の名前の由来ですがなー、夜になると外来種が活性化して郭を攻撃することがあるからなんですなー。臨時収入になるから腕利きの渡来人(とらいじん)に人気なんですなー」

業者が去り際に披露した豆知識は夢の中のルーキーに届くことはなかった。



「よお恭士郎!随分早かったじゃねーか!」

夜鳴子(よなご)の自宅ではスコット・スコフィールドがゴキゲンに肉を焼いていた。

「きょー!」

スコットの背中にしがみついて肉が焼けるのを見ていた娘のジーンは恭士郎を見付けると嬉しそうに駆け寄ってきた。

「おうジーン、いい子にしてたか?親父みたいな大人になるなよ?」

ジーンを抱き上げながら周りを見るとスコットの女房、レイラが洗濯物を乾かしている。

風を起こす奇跡(スキル)を常駐させることで乾きを早くしている。生活の知恵というやつだ。

そして、ピックアップトラックを駐めようと車庫を見ると見慣れない一台と一輌。

地方には珍しい車高の低い四輪。

「見ろ恭士郎!ジーンのために新車を買ったんだ!松本自動車の新型『スターロード』だぞ!」

魔王城までひとっ飛び。

というキャッチコピーでおなじみのスーパーカーだ。

V型10気筒ツインターボ搭載でオンロードなら320km/h出せるということは恭士郎も知っている。

「何が新車だよ、ベコベコじゃねーか」

「こまけーこたーいいんだよ!」

地方にオンロードがそうそうあるかと言われるとそうではない。

おそらく(くれ)あたりで買ってそのまま運転して夜鳴子(よなご)に持ってきたんだろうが、道中で外来種と戦闘でもしたのか、それともスコットの運転に問題があるのか、まあ両方だろうが新型は10年戦士の貫禄が出てしまっている。

おそらくスコットが今焼いている肉は道中で倒した外来種のものだろう。

一応まだ自走は出来るようだがが恭士郎が言いたいのはそこではない。

「ずー!ずー!」

運転席に座らせたジーンは伸ばした足先がアクセルに届いていない。

スーパーカーに限らず、自動車は三歳児が運転するようには作られていない。

「こんなもん買ってどうすんだ馬鹿野郎!」

恭士郎のツッコミ、しかしスコットはまったく意に介さない。

「馬鹿とはなんだ!こういうのは勢いなんだよ!家計簿気にしてちゃケツの穴の小さい大人になっちまうぜ!」

トングをカチカチ鳴らして恭士郎を威嚇する。そのトングを『スターロード』の運転席に向ける。

「ずー!ずー!」

ジーンはエンジンの鳴き真似をしながら楽しそうにハンドルを回して遊んでいた。

「楽しんでんだしいいだろ!」

言ってやりたいことは多くあるが、娘に免じて勘弁してやる。

次は一輌の方だ。

一式戦車、旅団が現行で使用している主力戦車、物置狭しと鎮座するその撤回のキューポラに手を突っ込んで中身を引っ張り出す。

「おいババア、なんでてめーまでいんだよ」

戦車の中にいたのは『白銀姫』アンジェリーナ・デオロットだった。

「うおっ!?くっせ!」

アンジェリーナの全身からは強烈な臭気が立ちこめている。

潮と魚の生臭さと鉄錆の匂いが入り交じった臭気はアンジェリーナの着ている囚人服のものだ。

このババアまさか漁船からずっと同じ服を着回してやがるのか!?

「ちょっと恭士郎!レディになんてことうおっ!?くっせ!!」

ピックアップトラックから降りて近づいてきたエクレールとセシリアも臭気に顔をしかめた。

「無礼な」

アンジェリーナは不快感をあらわに舌打ちをする。

臭気を指摘されたからではない。

この銀髪の転生者は自分のルーチンを邪魔されるのを極端に嫌う。

戦車の中で何か作業してたのを中断したのが気に入らないのだ。

だが恭士郎にとってババアのルーチンなどどうでもいい。

夢中でスーパーカーで遊んでいたジーンが不快感を露わにしている事の方が問題だ。

ババアが小汚いのはババアの勝手だが子供がいる場所で不衛生にされたら子供が病気になりかねん。

「つべこべ言わずに風呂に入れクソババア!」

恭士郎はアンジェリーナを放り投げる。

アンジェリーナは一回転して着地すると舌打ちを一つ。

周りの圧力に押されていやいやながら建屋の中に消えていった。

「なんでいんだよあのババア」

「決まってんだろ!戦車を衝動買いしたら冬を越す金がなくなったに決まってるぜ!ジーンはあんな大人になっちゃだめだぞ!ああ言うのは社会のゴミだからな!」

付き合いの長いスコットにとってはいつものことで驚くようなことではなかった。

「お前もここにいるってことは冬を越す金を使い込んだんだろ?」

「そんなことより肉焼いて飯にしようぜ!おめーが討伐した新種の肉も食ってみたいしな!」

スコットがトングをカチらせる。

この話はここで終わりにしたいということだ。


食卓は随分賑やかになった。

恭士郎、セシリア、エクレール、スコフィールド家3人、あとは風呂から出たアンジェリーナだ。

囚人服以外の服を持っていないアンジェリーナは干していたスコットのシャツを借りパクして食卓にどかっと座り込んだ。

「よーし、肉食うぞ肉!」

スコットが新種外来種の肉にかぶりつく。

「なんか鳥みてーだな」

それは知ってる。恭士郎は既に食ってる。

「これは何の肉だ?」

スコットが焼いていた肉について訪ねる。

「知らん!まあ食っても大丈夫なんだからいいだろ!」

こいつテキトーすぎだろ。

「チビ、お前はもっと肉を食え」

野菜をチビチビ啄んでいるセシリアに肉を押しつける。肉の脂は野菜煮合うのだ。

セシリアは気分悪そうに野菜の上に置かれた肉の塊を見る。

「ちょっと恭士郎!セシリアちゃん困ってるわよ?」

脂を搾り出した肉カスを酒で流し込んだエクレールが恭士郎に文句を言う。

「あ、これいい!お酒に合う!」

そしてそのまま肉カスをつまむ。

その脇ではアンジェリーナが鍋を使ってアンテナを立てていた。

「点いた」

そして液晶テレビの電源を入れると映像が映る。

KBC(暮公共放送)のチャンネルだ。


「突然ですが臨時ニュースです。昨日未明、経石近海にて海賊行為を行っていた政府軍の駆逐艦を漁船『海燕丸』が拿捕しました」


画面には表彰台に上る浅黒く日焼けした漁師。おそらく漁船の船長だろう。

「あ、船長(キャップ)だ!」

それに反応したのはスコットだ。

楽しそうに画面を指さす。

「実は俺様このカイエン・マルの船長(キャップ)親友(マブ)なんだぜ!」

スコットは船長(キャップ)と一緒に仕事した時の自慢を妻子に披露する。

銛を投げる真似をしたところでジーンが喜んだのでさらに気を良くする。

スコットと言う男は行った先で好かれて帰ってくることには定評がある。

だから外人部隊での地位もそれなりに高いわけだ。

もっとも、金銭感覚がまともならやらなくていい仕事の方が大半だが。

娘と違って女房のレイラは眉間を押さえて複雑な顔になっている。


テレビの前の視聴者の思惑は意に介さず海燕丸の船長はインタビューに受け答えをしている。

拿捕した駆逐艦は旅団に寄贈すると発表して旅団から感謝が告げられる。

旅団は寄贈された駆逐艦を離島に配備して発電機にするということだ。

そしてカメラが切り替わると鉄柱に縛り付けられた詰め襟の男達が画面に映る。

政府軍駆逐艦の士官達が横一列に並べられている。

「き、貴様ら!政府軍に刃向かうとどうなるか分かってるのか!?」

ドンッ!

返答は銃撃。

勇気ある士官が動かなくなって文句を言う奴はいなくなった。

「よし、全員殺せ」

士官達と向き合うように横一列に並んだ銃口が一斉に火を噴き、士官一同が一斉に動かなくなった。

「うわ、えっっぐ」

女神エクレールは画面の向こうの惨劇に常識的な感想を出した。

もっとも、女神にとって人間同士の小競り合いは犬の交尾くらいの認識でしかなく、その認識の中での『常識的』な訳だが。

「なんだよレイラ!別に珍しくねーだろ?」

一方で人間の価値観で常識的な反応を示したのは一人だけだった。

真っ青になって怯える女房をスコットが叱責する。

「全く、飯がまずくなるぜ」

「スコット、こいつ昔から気が小せーんだ。あんま言ってやるなよ」

女房を叱責するスコットを恭士郎が叱責する。

緋ノ(ヒノモト)において、政府と地方の小競り合いは特段珍しくない。

外人部隊にいるとその小競り合いを飯の種にするからいやでも関わることになるし、関わっていれば嫌でも慣れる。

レイラのように慣れることができない者もたまにいる。

スコットに拾われず、外人部隊に居続けたらレイラは今日まで生きていられなかっただろう。

このことがあり、恭士郎にとってスコットは形はどうあれ同期を救った恩人といえた。

だから借金の尻拭いを押しつけられても文句はあっても最終的に折れる関係になってしまったわけだが。

「可愛い子ぶるな・・・鬱陶しい」

怯えるレイラをアンジェリーナが嘲笑する。

「ババア、お前少し黙ってろ」

アンジェリーナは冷酷だ。

特に女相手だと容赦がなくなる。

それ自体は個人の考えで否定するつもりはないが、飯時まで女の敵は女をやられるとしらける。

「えーと、転生者諸君!ちょっといい?」

険悪になりつつあったところに女神の一声が差し向けられた。




「はいちゅーもーく!これからあたしがこの世界でやるべき仕事について説明させていただきたいと思いまーす!」

エクレールは夜鳴子(よなご)の地図を広げると、自身の使命と、その使命のために転生者の協力の必要性を説明し始める。

現在、この場には転生者の中でもトップクラスに強力なのが3人揃っている。

半ば忘れつつあった本来の仕事を酒の勢いで思い出したからついでに話をしてみよう。


エクレールは説明する。

前任者のお局ババアのやらかしで本来であれば別の世界の調和を維持するために必要な神器がこの世界に流れ着いてしまったことを。

そして、前任者が責任を取らずバックレたことで品行方正清廉潔白なエクレールが緋ノ(ヒノモト)に送られてしまったことを。

「ああ、俺様を転生させた更年期ババアか!あいつは死んだ方がいいな!」

「清々する」

スコットとアンジェリーナはババアのバックレに極めて好意的だった。

心が通じ合うのを感じる。

こういう恨み辛みは共有できる仲間と語り合うに限る。

「でね?このセシリアちゃんも巻き添えでこの蛮族ばかりの世界に送られたのよ!?酷いでしょ?」

「イタイ」

酔いに任せてセシリアの背中をバシバシ叩く。

「それはどうでもいい、続きを言え」

恭士郎がエクレールの手を掴んで続きを促す。

「それでね?あたしはその神器を回収しないといけないわけ」

そのために人間の世界で活動するための借りの肉体を得て緋ノ(ヒノモト)に顕現したまでは良かった。

良くないのはここからだ。

「でね?その神器(アーティファクト)っていうのが今ここの旅団に盗られちゃってるわけ」

緋ノ(ヒノモト)でも神器(アーティファクト)は非常に重要な代物だった。

だから、それを手にした人間はすんなりと引き渡してはくれない。

事実、エクレールは顕現直後に旅団司令部に接近したら機関銃と榴弾砲による応対を受け命からがら恭士郎のところまで逃げて来る羽目になった経緯がある。

そして、神器(アーティファクト)の巻き添えで転生したセシリアも半殺しにされ、戦車で轢き殺される一歩手前だった。

そうでなければ品行方正な女神や超絶美少女が公務員崩れのチンピラの居候に成り下がったりしない。

もちろん、女神も戦闘手段は持っている。

万が一、原住民に神器(アーティファクト)を奪われた場合、戦闘して奪うための奇跡(スキル)が使える肉体を持って顕現する訳だが、その戦闘力は剣とか槍を持った相手を想定したもので、数百メートル先から炸裂弾を飛ばしてくる蛮族を制圧することは考えられていない。

運用が実情に追いついていない。

お役所仕事あるあるの一例だが、当事者になるまでエクレールすら気にもとめてなかった。

だから、神器(アーティファクト)の奪還には数百メートル先から炸裂弾を飛ばしてくる蛮族に勝てる強力な転生者を味方につける必要があるのだ。

「というわけで、あんた達の協力が必要なわけ!」

エクレールがテーブルを叩く。

「で、女神サン。報酬はいくら払ってくれるんだ?」

「ただではやらない。生活ある」

スコットとアンジェリーナの返答もまた、恭士郎と同じ。

労働には対価が必要ということだ。

エクレールは二人の返答に対し返す。

「モノは相談なんだけど、いくらだったら受けてくれる?」

ただではやらない。それは、裏を返せば相応の対価があればやると言うこと。

だからまず相場を知る必要がある。

スコットがまず女房と娘を見回す。

「1000億だ」

スコットの見積もりはこうだ。

旅団を敵に回すとなると家族の生活まで脅かされる。

今と同じ生活は出来ないし、指名手配がかかれば社会的な福利厚生は全て消し飛んでしまう。

幼児を抱えてそんな生活をするのはまっぴらごめんだ。

さらには外人部隊への旅団の信頼も失墜することになり、その補填も必要だ。

これらを考えるともう二桁つり上げても良かったかもしれない。

続いてアンジェリーナの見積もり。

「1200億」

こちらは夜鳴子(よなご)が持つ火力を概算したものだ。

この火力を元に突破可能なだけの兵器を調達して『生命付与』を施し、火力の集中で突破を狙う。

言うまでもないが、提示した価格だと突破出来る『ことがある』レベルの話であって、確実を期すならさらに値段は上がる。


典型的なお断り価格だった。

「恭士郎!」

エクレールは恭士郎に向き直る。

「ちょっと神界(じっか)に帰るわ!」

「そうしろ」

今の状態では状況を前に進めることは不可能だ。

この情報を持ち帰って予算を立ててもらうしかない。

困った時は報告、連絡、相談だ。

「じゃあセシリアちゃん、元気でね?」

エクレールはセシリアの頭を撫でる。

雪のような白い肌、宝石のような瞳、上質な生地のようななめらかな髪を最後に堪能するとエクレールは黄色い粒子となって現世から離脱していった。

「おいチビ」

女神が去ったのを見届けた後恭士郎はセシリアの肩を叩く。

「アイシンのいう神器(アーティファクト)、取り返したいか?」

セシリアは首肯。

神器(アーティファクト)はセシリアにとってオイゲン様との最後のつながり、神器(アーティファクト)を守りオイゲン様にお返しすることがここで生きる目標であることに変わりはなかった。

「取り返せるかは知らんが、訓練は続ける。今のうちに飯を食っとけ」

恭士郎はセシリアの頭を撫でると、全く減っていないセシリアの皿に肉をもう一塊追加した。




ルーキーにとっての安らぎの時間は無残にも破壊された。

物音に目が覚めたところに強烈な閃光、闇夜を見ようと瞳孔を開いていたルーキーの視界が真っ白になる。

空き巣狙いか?いや、空き巣が派手に音と光が出る道具を使うとは思えない。

困惑覚めやらぬままルーキーは緑斑の服の一団に取り囲まれ、電極の付いた銃で撃たれて意識を失った。



そして目が覚めると輸送トラックの中、同じように椅子に座らされた転生者が並んでいる。進行方向からはやば気な外来種の咆吼が聞こえる。

困惑する転生者達にスピーカーからの状況説明が行われる。

「外人部隊諸君!一時間前レーダーが侵略的外来種の接近を捉えた!諸君はこれより前線に赴き駆除に当たられたし!」

え?

「つまり、これから外来種と戦えってこと?」

ルーキーのつぶやきを聞いた隣の転生者がルーキーを押しのけてトラックの荷台から飛び降りて、そして後続の装甲車にひき殺された。


ーここ夜鳴子(よなご)の名前の由来ですがなー、夜になると外来種が活性化して郭を攻撃することがあるからなんですなー。臨時収入になるから腕利きの渡来人(とらいじん)に人気なんですなー


ここに来て、夢の中で聞いた不動産業者の豆知識を思い出した。

「うわあああああああああああああああああああ!!!!!!!いやだあああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


時刻は21:00

外来種の時間は始まったばかりだった。




Chapter.1 End

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― 新着の感想 ―
[良い点] エクレール、バックレ被害の巻き添え喰らってたうえに、敵が強大だから何億積んでも足りそうにないという……。
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