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異世界防衛戦線-刃と翼編-  作者: ミネアポリス剣(ブレイド)
序章2
19/23

19.三災獣(トライディザスター)

19.三災獣(トライディザスター)


外来種の襲撃現場は暫定ではあるが秩序を取り戻しつつあった。

破壊された線路は取り外され、工兵によって新たな線路が敷設中、装甲列車は少なからぬ損傷を受けているが機関車は稼働しているので線路敷設に合わせて緋本原(ひほんばら)に帰投後修理するとのことだった。

「お手数ですが。帰投前に車両の被害状況を確認させていただけないでしょうか?」

『狂剣』伊達恭士郎の要望を旅団の指揮官は承諾した。

「死体は破壊された貨車じゃ。ガンカメラの画像の写しもやるわ」

「ありがとうございます」

恭士郎は書類と半導体の記録媒体を受け取り、損傷した車体の写真を撮る。

「あいつ敬語話せるんだ」

女神エクレールはそんなことを考えながら列車の周りの惨状を見る。

8両ある車両で損害がない車両はなく、車内外には人間の死体の切れ端が散らばっている。ここまで凶悪な魔物(ここでは外来種と呼ばれているが)は他の世界ではめったに見ない。「サイヤク・・・テショウカ?」

紫髪の少女セシリアは破壊された車両と、そこにある何かを見ているようだった。

それが何かはエクレールには分からない。

この子はボロ屋敷にいる地縛霊が見えたり、精霊とかそんなのが見えるらしい。

エクレールには見えないが。

「お待たせしました。それではブリーフィングを始めたいと思います。士官以上を集めていただけないでしょうか?おいおまえら来い」

旅団の指揮官に頭を下げレディとガールは雑に手招き。

この公務員崩れはずいぶん親のしつけが良かったようだ。



仮設指揮所のブリーフィングに集まったのは恭士郎と、旅団の士官、エクレールとセシリア、それとあと一人。

「なぜいる」

先ほどセシリアを息を荒げて追い回し、血走った目でランドセルを押しつけてきた変態がしれっと紛れ込んでいた。

「『狂剣(マッドブレイド)』ですね。勇名はよく聞かせていただいています。先ほどご息女が暴漢に襲われていたのを目撃し、救助に馳せ参じたのですが力及ばず取り逃がしてしまいまして・・・。『帳簿係』からこちらに向かったと連絡を受けたのでご息女の安全のためこちらに伺わせていただいた次第です」

「捏造じゃねえか!」

「うるせえババア!」

「何がババアだ殺すぞ!」

「お前ら黙れ!始めるぞ!」

この変態は後で始末してやる。

拳銃に『確実に』初弾を突っ込み引き金の感触を確かめる。

今度はしくじらない。

「まず、ガンカメラの映像から今回の『外来種』は知能が高いと考えられます」

「そう思う理由は?」

士官の一人の問いに恭士郎がガンカメラの映像を映す。

外来種が装甲列車の進路に割り込んで線路を破壊する映像が現れた。

「真っ先に線路を破壊して動きを封じています。列車を認識し、線路の上を走ることを理解しているものの動きです」

「なるほど」「一理ある」

恭士郎の説明に対し旅団の士官達は納得し先を促す。

セシリアはその光景を畏怖の念で見る。

キョウシロウは自分を『コウムイン』だといっていた。

『コウムイン』がどういう身分かセシリアは知らなかったが、キョウシロウが有力な貴族だという推測は間違っていないだろう。

これほど的確に現地人からの信頼を勝ち取るのは並の貴族では難しい。

オイゲン様に付いて蛮族の討伐に赴いた時、現地の村人から矢を射掛けられたことがあった。

村人が協力的になる頃には村の働き手がいなくなっていたのを今も思い出す。

その後、村ぐるみで蛮族に内通していたことが発覚して怒ったオイゲン様が慈悲深く生かしておいた村人を教会に押し込めて教会ごと焼き殺したのはよく覚えている。

矢が掠めてけがをしたセシリアをずっと心配してくれたオイゲン様の顔は今でもはっきり覚えている。

恭士郎は思い出にふけるセシリアをよそに説明を続ける。

「外来種の攻撃手段ですが、この外来種が単体とした場合、3通りの攻撃手段を持っていると予想できます」

攻撃を受けた車両の破壊形態が大まかに3通り。それを恭士郎が示す。

・電装系の焼損と兵隊の内蔵の炭化

・炭化し変形したコンテナ類

・砕けた鋼板、線路

「つまり、どういうこと?」

エクレールはこれだけの情報では何が分かるのか分かっていない。

セシリアも同様だった。

「続けえ」

司令官に促されて恭士郎が続きを説明する。

「攻撃手段として予想されるのは、

・電撃の抵抗熱による焼損

・火炎による炭化

・冷気による脆化

になります」

恭士郎の分析に対し旅団の士官達も同じ結論らしく。

「一理ある」「報告とも一致するな」

などと言っている。

ーこのチンピラ、仕事『は』できるんだ。

不本意だがエクレールもそれは認めざるを得ない。

「それはいいけど、そんなやばいやつどうやって倒すんですか?」

恭士郎に疑問を投げかけたのは例のランドセルクソ野郎だった。

普段通りの恭士郎と裏腹にすでに顔色が良くない。恭士郎の場合は顔色が良くても面つきは悪いが。

ランドセルクソ野郎は恭士郎の説明だけで当該外来種がいかに強力かを正確に理解したようだ。

迅速にセシリアの手を取って逃げようとする

「君もここにいては危ないぼくと安全なところにいこうか・・はぁ、はぁっ・・・」

「なんだてめー逃げる気か!」

エクレールが銃を向けて威圧するがランドセルクソ野郎は全くひるまない。

「おいババア説明聞いてなかったのか?それともボケて新しいことが覚えられないのか?相手が説明通りのバケモンなら戦って死ぬより弾で死んだ方がまだマシだ!」

「じゃあ望み通り死ねや!」

女神とランドセルクソ野郎の生産性のない口論は恭士郎によって制止された。

「言うまでもないと思うが、既にこの場所も外来種の狩り場だぞ。単独行動した奴から狙われるから逃げるには遅すぎだ」

ランドセルクソ野郎は硬直。

「じゃあ仕方ないな」

「いや戻るのかよ」

あっさり席に戻ったランドセルクソ野郎にツッコむエクレールにランドセルクソ野郎はツッコみ返す。

「説明聞いてないのかよ!今一番助かる可能性が高い方法は協力して外来種を討伐することだぞ。これだからババアは・・・君はこんな歳の取り方しちゃだめだよ」

青筋が浮くまでエクレールを存分におちょくったランドセルクソ野郎は席に戻るとセシリアを自分の膝に座らせようとする。

その手をすんなりかわしたセシリアは恭士郎に質問する。

「ソレテハ、トノヨウニシテタイコウスル、ノテショウカ?」

セシリアは日本語は片言だったが、恭士郎の言ったことはきちんと理解しているようだった。

話が早い。長生きしてる女神(アイシン)よりこのチビは合理的な思考ができるようだ。と恭士郎は分析する。

チビでガリだということを除けば優秀だ。

チビでガリでもできることはやらせたらこなせるだろう。

恭士郎はホワイトボードを持ってくるとつながった長方形とその長方形を中心に赤丸を

書く。

そこから少し離したところに三角矢印とそこから青い丸を書く。

青い丸は赤い丸より小さい。

「赤が装甲列車の機関銃、青が外来種の攻撃範囲だ」

ガンカメラの映像を見る限り、外来種は機関銃の射程外からは攻撃を行っていない。

「機関銃の有効射程は2000m、稜線の関係で約500mから射撃を行っています。

外来種の攻撃は射程100mといったところですね」

「その数字はどうやって出したんなら?」

司令官が質問する。

「ガンカメラの映像から外来種の攻撃位置を割り出して、装甲列車の位置とその場所の距離を実測しました」

初手で線路が破壊されたのは怪我の功名というべきだろう。

「また、曳光弾を使用していない機関銃は損害が少ないことから夜目もあまり利かないと思われます」

被害が片側、風下側に偏っていることからおそらく音か匂いで索敵しているのだろうがいずれにしても暗視眼鏡(ナイトビジョン)ほど広域を見渡せるわけではない。

現時点ではまだ推測の域を出ないが理にはかなっている。

旅団の士官一同も特に異論はないようだった。これらから、外来種の襲撃予想地点は見通しの悪い山間部に絞られる。

もしそうでない場合は装甲列車の索敵能力で察知、迎撃が可能だからだ。

「報告は以上です。後続の部隊への展開をお願いします」

恭士郎は説明を終えると、懐から名刺を取り出して司令官に渡す。

「あと、外来種に関する情報を集めている企業があります。情報提供すれば礼金を払うとのことなので知人の連絡先をお伝えします」

渡した名刺は『ベルンハルト財団』の若い研究員のものだった。

地方軍閥である旅団は政府からの圧力をはねつける手段として、企業を誘致したがっている。

政府はその動きを嫌っていて中央と地方の仲は非常に悪い。

これは『外人部隊』でそれなりに働いた転生者なら誰もが知る事実だった。

地方を制御下に置きたい中央と、その中央を疎む地方。

別に珍しい構図ではない。

日本のように緩いのが珍しいのだ。

その日本ですら大陸に権益持ってた頃は軍閥が暴れていたし、チョンマゲが流行った頃は言うに及ばずだった。

ついこの間も『(くれ)』旅団統治下の漁船が政府海軍の駆逐艦を襲撃して乗員を皆殺しにしたばかりだ。

だがそんなことは恭士郎以下『外人部隊』にとっては憂慮するほどの問題ではない。

むしろ、『外人部隊』にとっては両者の対立は重要な『飯の種』だからだ。

政府に目をつけられた旅団は締め付けによって戦力が不足しがちで、それ故に随所で『外人部隊』をアテにして仕事を持ってきてくれる。

今のこの『緋本原(ひほんばら)』旅団のように。

だから、旅団に対し付き合いのある企業や団体を紹介するのは旅団にとってはありがたいだろう。

恭士郎の業務を逸脱しているが、ここで恩を売っておくことは今後の仕事に関わってくるだろう。

ベルンハルト財団も地方への進出に意欲があるから旅団と財団の利害は一致している。

「おお、気が利くのう」

指揮官はありがたく名刺を受け取ると撤収の指示を出した。



旅団が撤収した後、残ったメンツはピックアップトラックの荷台に地図を広げ、潜伏予想地点に印をつけていく。

『外来種』は列車や線路を理解している。

線路の上しか走れない、食い物を積んだ牛かなにかだという認識だろうがその認識は概ね間違っていない。

だから襲撃したい場所は線路の近くに絞られる。

そして、目ではなく聴覚、嗅覚で獲物を探す関係から待ち伏せがしやすい場所は見通しが悪く風が吹き込む山間部に絞られる。

あとはその場所を地道に潰していく。

「よしお前ら、『外来種』の追跡にかかるぞ」

ピックアップトラックが走り出す。

しばらくして『帳簿係』から連絡があった。

旅団から受け取った血液サンプルを『分析』した結果、新種だと確定したそうだ。


外来種名:三災獣(トライディザスター


to_be_continued

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