15.任務
15.任務
0:35 緋本原、美穂間を移動中の輸送列車が攻撃を受け、食料、医薬品が強奪される。
兵員、装甲の損傷から大型の外来種単体の攻撃と判明。
装甲列車の反撃により撃退には成功するも撃破には至らず外来種は逃走、近傍の山林に潜伏中。
2:00 美穂旅団より外人部隊へ討伐依頼。
6:00 外人部隊招集。
「以上が現在の状況だ」
外人部隊緋本原支部の会議室で『帳簿係』が簡潔に説明した内容だ。
夜中に起こされて呼び出された転生者はあくびをかみ殺し、あるいは夢の中で説明を聞く。
ーガラクタばかりだな。
『帳簿係』は分析の奇跡で集まった転生者の面々を見渡す。
『軍曹』がいた頃は良かった。
転生者には訓練が行き届いていたし統率もとれていた。
無い者ねだりしてもしょうがないが自分が若かった頃と比べるとあまりに落差がひどすぎる。
今回の任務で3分の2は帰ってこないだろう。
死亡後の除籍手続きにどれだけ時間を取られるか、週末のゴルフは諦めるしかないか。
「おっさん」
ガラクタの中から声を上げたのは『軍曹』と同じ日本出身の転生者。
『狂剣』伊達恭士郎だ。
恭士郎は咥えていたタバコをコーヒーの入った紙コップに突っ込む。
「外来種の情報はどれだけある?」
『帳簿係』は「旅団からの伝聞だが」と前置きをする。
1.殺害された兵隊の死骸から、外来種は電撃およびそれに準ずる攻撃手段がある
2.焼夷弾による攻撃は外皮で弾かれて通用しなかった
3.徹甲弾は外皮を貫通した
4.ガンカメラの写真を分析したが近傍に出現する外来種と一致はない
「新種か、あるいは未踏地区から流れてきたか」
その答えは狭い会議室で唸っていても出てこない。
「確認だが」
「なんだ?」
「任務内容は『討伐』でいいんだな?」
「旅団は生死は問わないとのことだ」
恭士郎の問いに『帳簿係』は即答。
ここの確認は怠ってはならない。
『捕獲』任務で目標を殺害などしたら報酬が支払われない、どころか賠償を請求されるリスクがある。
スコットがよくやるミスだ。
こちらとしては縛りが少ないので楽でいい。
「死体は旅団に提出するのか?」
「それも不要だ。討伐したやつが好きにしていいとさ」
ただし討伐した証明はできるようにしておけよ、と『帳簿係』は付け足す。
この確認をしてくる時点で恭士郎には不要な付け足しではあるが。
「報奨金は?」
「討伐者に2000万、参加者には100万ずつ支度金が支給だ」
寝ていた転生者の何人かが起きてメモを取り始める。
こういう手合いは支度金だけせしめて逃げ出すということを『帳簿係』は経験で知っている。
逃げ出すまで生きていられるだけの技量があればの話だが。
「二人以上で討伐した場合は折半か?」
「そこは当人同士で決めてくれ」
ずいぶん無責任だと恭士郎は吐き捨てタバコを紙コップに突っ込む。
次のタバコの煙の向こうで『帳簿係』はお前等大の大人なんだから自分で決めろと言う態度だ。
外人部隊は個人事業主の寄り合い所帯だから報酬の分配でいつも揉める。
その過程で報酬を巡って殺し合いになることも珍しくない。
こういうところをテキトーに済ますところが外人部隊の悪癖だと恭士郎は思っている。
『帳簿係』も恭士郎の言わんとしていることは理解している。
実際、『軍曹』がいたころはなあなあではなかった。
だが、だからといって今ここで直す必要は感じていない。
討伐者は恭士郎になることがほぼわかりきっているし、残りは途中で逃げるか死ぬかするだろう。
報酬の奪い合いが発生する事態こそ滅多に起こることではない。
「以上だ。参加する者は支度金を受け取って準備にかかれ。参加しないやつは帰れ」
07:00
「ねえ」
緋本原支部の受付でエクレールは恭士郎に問いかける。
ブリーフィング終了後他の転生者は外来種の討伐に向かったが恭士郎は未だに支部の受付でタバコをふかしている。
真面目にブリーフィングを聞いていたかと思えばずいぶんのっそりとした動き出しに疑問を呈するのは当然だった。
「お、来たな。おいチビこっち来い」
答えようとしたところで『帳簿係』が戻ってきたので恭士郎はセシリアを伴って『帳簿係』の元へ向かう。
「こいつに任務を発注したい」
内容は外来種の討伐補佐。
荷物運びから野営地の設営など。
報酬は前金で10万、終了時に10万。
『帳簿係』は内容を確認すると古いプリンターに出力する。
「これでいいか?」
差し出された紙をセシリア・イシュトバーンは確認していく。
「おいチビ、日本語が読めるか?内容を口に出して説明してみろ」
「ハイ」
セシリアは書いてある内容を片言の日本語で説明する。
最初に『帳簿係』に説明した内容とおなじ内容だと言うことをこのチビは認識している。
それを確認すると恭士郎は依頼者の欄に直線多めのサインをする。
「お前はこっちだ。名前を書け」
セシリアは受注者の欄にきれいに自分の名前?を書く。
恭士郎にはセシリアの国の文字は読めない。
「セシリア・イシュトバーン。間違いないな」
『帳簿係』は分析の奇跡で本人の名前であることを確認する。
「いいかチビ、任務はこうやって受けるんだ。内容が書面と同じかちゃんと確認しろよ」
恭士郎は他にも仕事を受ける上での注意事項をセシリアに説明する。
慣れないうちは外陣部隊を通して任務を受けること。
そうすれば力量に合わせた任務を斡旋してくれる。
自分の力量で不足なら金を払って補助要員を雇い入れることも出来る。
契約内容や報酬の分配で揉める要因になるからやるやつは少ないし、出来ることを知ってるやつも多くはないがシステムとしては存在する。
サインするときは必ず内容を確認すること。
後で依頼者がごねて報酬を下げてくることがある。
例えばスコットはアホでテキトーだからそれで買い叩かれることがしょっちゅうある。
ーあいつ細かっ!?小姑かよ
女神エクレールはセシリアに事細かに説明する恭士郎を見て軽く引いていた。
プライベートでは絶対つるみたくないタイプの人間だ。
まあ、元公務員という経歴を見ればすぐ分かることだが。
「これで任務は受理された」
『帳簿係』はサインされた誓約書をスキャナーに通す。
「つーわけだチビ、しっかり働け」
恭士郎がセシリアの背中を叩きタバコを吸いに戻る直前、セシリアは恭士郎に向き直るとかわいらしく頭を下げた。
「ヨロシク、オネカイ、シマス、コノヤロウ」
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