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異世界防衛戦線-刃と翼編-  作者: ミネアポリス剣(ブレイド)
漁船編
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13.Pay_Back

13.Pay_Back



ー洋上



海燕丸、芹洲丸、江戸川丸、独尊丸の4隻の改造を終えると、4隻を体外に排出し、スキブズワブニルは霧の中へと消えていった。

結局、スキブズワブニルが機械なのか生物なのか、そのほとんどが謎のままだったが、あれはどうやら外来種を餌として、その餌から得た理力をもとに船を強化する存在のようだ。この事実は漁師たちにとってこの上ない幸運であった。

どうやっても金にならない忌まわしい軟体動物が高価な装備に化けたのだ。

そしてこれから、高価な装備に金を産ませに行く。

「行くぞてめえら!クソ役人を血祭りじゃあああああ!」

海燕丸船長の咆吼とともに、4隻は政府の駆逐艦めがけて突撃を開始した。


ー駆逐艦


「田舎者どもが」

駆逐艦『東海』艦長、根津大佐は接近する4隻の漁船の反射波(エコー)を見て嘲笑する。

束になったところで所詮は旧型、『東海』は機関も火器管制もすべてが優れている。

当然だ、この駆逐艦を建造するためにどれだけの根回しを行い、どれだけの関係者に賄賂を送ったと思っているのだ。

田舎者には分からんだろう。

だからこそ、圧倒的な力で低脳な田舎者どもに徹底的に教育してやる。

「55浬!?速い!」

「あいつらただの漁船じゃない!艦長!」

「やかましい!さっさとミサイルを撃たんか馬鹿者どもが!」

低脳は艦の外だけではなかった。

艦内の連中も同じレベルのアホばかりだ。

何が速い!だ。

ミサイルの速度は超音速だ。ミサイルを当ててしまえばそれで終わりの相手に何を怖じ気づいているのか。

やはりここは自分がいるべき場所ではない。

自分は首都圏のエアコンが効いた部屋で働き赤絨毯を歩く生活こそが最もふさわしい。

使えない艦のクルーどものアホ面はいつもその事実を突きつけてくる。

忌々しい。

まあいい、憂さ晴らしはあの田舎者どもでするとしよう。

駆逐艦の垂直発射機から8発のミサイルが発射された。

1隻につき2発、機関部と火薬庫を破壊して航行不能にした後機銃掃射でなぶり殺しにしてやる。

それを地方の放送に流して見せしめにしてやるのだ。




ー漁船


駆逐艦から放たれたミサイルを漁船側も捕捉していた。

「迎撃態勢!」


対空パルスレーザー。


スキブズワブニルが取り付けた光の盾。

海燕丸と芹洲丸の上部構造物を囲むように取り付けたその兵装は光の束を飛翔するミサイルに向けて撃ち放つ。

音速と光速の激突は光速の勝利、8発のミサイルは己の撃墜に気付く間もなく爆散した。

「江戸川丸!付いてこい!」

「独尊丸!離れるんじゃないよ!」

漁船はそのまま二手に分かれる。

パルスレーザーが装備できたのは海燕丸と芹洲丸のみ。

残る2隻が攻撃要員だ。この2隻を守りつつ間合いを詰める。


ー駆逐艦


4隻の漁船は二手に分かれて接近。

両舷から挟み撃ちにするつもりか。

「敵船より発砲!」

しかし放たれた砲弾は遙か前方にむなしく水柱を上げるだけだ。

田舎者どもは武器の使い方も満足に知らないと見える。

「取り舵!」

根津大佐は転舵を指示する。

ミサイルは防がれたが敵の武装は本艦を捉えられない。

このまま間合いを維持してミサイルで一方的に攻撃すればいい。

しかし命令に反し艦は直進を維持、そしてその両舷を白い気泡の線が突き抜けた。

キャビテーション魚雷の雷跡だった

先ほどの砲撃は囮だ。

大佐の命令通りに舵を切っていたら横腹をぶち抜かれていた。

操舵手の判断に救われた。

「貴様!なぜ舵を切らん!言われたことも満足に出来んのかこの無能め!」

艦を救った操舵手の偉業に根津大佐は鉛の勲章を授与した。

脳漿をぶちまけた艦の救世主を大佐の息がかかった乗員が窓から投げ捨てさせるとそいつに操舵を押しつける。

「どいつもこいつもわしをコケにしおって・・・」

これが片付いたら田舎者どもも使えない船乗りどもも残らず正当な処罰を与えてやる。

「おい!異人を出せ!」


ー漁船


江戸川丸と独尊丸の魚雷の間を駆逐艦がすり抜けた。

政府の役人にしてはずいぶん鼻がきくやつがいるようだ。

「前方に外来種出現!」

「召喚の奇跡(スキル)や!向こうも用心棒連れとるで!」

「異人には異人じゃ!準備せえ!」

命令が下達され、渡来人(てんせいしゃ)たちが甲板上に集められた。

「マジかよ勘弁してくれよ・・・」

「よーし、追加手当弾んでくれよな!」

命令に対しやる気になっているのは隻眼の巨漢、スコット・スコフィールドと銀髪の転生者、アンジェリーナ・デオロットの二人だけで、ルーキー以下18名は死にそうな顔だ。

当然だ、この船で、命令が下達されるたびに渡来人(てんせいしゃ)は数が減っているのだ。

出航したときには40人いたのにすでに半分が軟体動物の餌だ。

光波斬(シュトラール)!」

震雷(ライトニング)

海燕丸に向かった巨大なカジキを光の奔流が消し飛ばし、芹洲丸に向かった巨鳥をアンジェリーナの電撃が撃ち落とした。

「アンジェリーナ!それじゃ内臓が炭だ!とても食えたもんじゃねえぞ!仕事は丁寧にやらねーとな!」

「がさつ者、そっちは死体が残ってない」

ルーキーは今度こそ死を覚悟したが、この厄介な同乗者のせいで次の命令まで猶予が出来てしまった。

おかげでストレスと船酔いで胃の中がカクテル状態だ。

「このまま突っ込むぞ!つかまれ!」

4隻の漁船はさらに駆逐艦へ肉薄する。


ー駆逐艦


「何をしている!さっさと反転せんか!」

根津大佐がどれほど金切り声を上げても状況は好転しない。挟まれないように転舵しようとしたところで進行方向に砲弾が着弾し進路を押さえられる。

根津大佐以外の乗員はこのまますれ違うのが一番早く離脱できると思っていたがそれを教えて理解できるだけの頭は官僚のなり損ないの大佐にはないことを理解しているためだんまりを決め込んでいた。

対空火器を持つ駆逐艦一隻にミサイルを集中して飽和攻撃すればあるいは包囲を脱出できるかもしれないが、ケチな官僚くずれはそれをよしとしない。やろうとした砲雷長は床に転がって脳漿をぶちまけている。

「早く反撃せんか馬鹿者!」

大佐がわめく時間は駆逐艦にとって無意味な時間だが、漁船たちは有意義に活用して距離を詰めていた。


ー海燕丸


駆逐艦は水柱に包まれて動きがとれていない。

先頭を走る海燕丸は後続の江戸川丸の援護射撃を受けながら駆逐艦の横腹めがけて突入。

走る激震を強度過剰に設計された船体は受け止めた。

一方、舷側に破孔を生じた駆逐艦はその動きを止めざるを得ない。

「突入!異人ども!突っ込め!」

船長の号令一下渡来人(てんせいしゃ)たちが駆逐艦に鉤縄をかけてよじ登ろうとする。

そして近接火器(ゴールキーパー)の猛射を受け5人が消し飛んで後退を余儀なくされた。

「ひ、ひいいいいいいいい!」

「おちつけルーキー」

スコットが光波斬(シュトラール)で無力化しようとするが絶妙に死角になっている。

海燕丸より駆逐艦の方が干舷が高いせいで攻め込みにくくなっているのだ。

「アンジェリーナ!あのおもちゃを黙らせろ!」

スコットにとってあの女をアテにするのは少し癪だが、適任だから仕方あるまい。


ー芹洲丸


「やれやれ」

うどの大木のスコットが泣きついてきたのでアンジェリーナ・デオロットは行動を開始する。

従えている無人哨戒機にぶら下がると海面スレスレから接近。近接火器

が囮の無人機を射撃する間に一気に近接火器(ゴールキーパー)に乗り移った。


生命付与(ライクライフ)


無生物にかりそめの生命を与える奇跡(スキル)により、近接火器(ゴールキーパー)は駆逐艦からの制御を受け付けなくなった。



ー海燕丸


近接火器(ゴールキーパー)の沈黙とともに駆逐艦への乗り込みが再開された。

甲板によじ登り船内を目指す渡来人(てんせいしゃ)の歩みは再び止められる。

駆逐艦に積み込まれていた渡来人(てんせいしゃ)用心棒が奇跡(スキル)で迎撃してきたためだ。

浄眼鬼(サイクロプス)。恨みはないが死んでもら


光波斬(シュトラール)


海燕丸の渡来人(てんせいしゃ)を熱線で二人焼き殺した渡来人(てんせいしゃ)をスコットが光線で射殺して甲板上は乱戦の様相を呈す。

「ルーキー!原住民どもが艦を制圧するまでこいつらを押さえるぞ!」

「何言ってるんだ!できるわけないでしょそんなこと!」

駆逐艦が擁する渡来人(てんせいしゃ)はおよそ30人、こっちはあと10人強、通常の3倍の戦力差でそんなこと出来るはずがない。

さらに言えば相手はルーキーより明らかに格上だ。

「死ねおらああああ!」

そしてルーキーを穴だと認識した渡来人(てんせいしゃ)が早速ルーキーに襲いかかってくる。

「きいいいいああああああああああううううういいいいいいいいああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

人間の知恵か生物の本能か、ルーキーの行動は全くの無意識。

声帯を限界以上に震わせて起こした可聴領域ギリギリの化鳥音に敵がひるむ。

「いいいいいいいああああああああうううううううあああああああああああ!!!!!!!!!!!」

そして怯んだ敵に海燕丸から適当にひっつかんできた防火斧を投げつけて敵の顔面を叩き潰す。

即死だった。

「ひっ!」「おいやべえぞ!」

死んだ渡来人(てんせいしゃ)は駆逐艦でも腕利きだったのだろう。

駆逐艦側の渡来人(てんせいしゃ)は距離を取ろうと進撃を止めた。

「きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

そこへ敵を殺して戦意を高めたルーキーが防火斧を持って突入し暴れ回る。

「なんだこいつ!」「嘘だろ火炎弾が当たったのになんで動いてんだ!?」「バケモンだ!」

敵の戦列は一瞬で崩壊した。

「おお、やるじゃねーか。帳簿係にいい人材がいるって教えてやるか」

スコットが感心している脇ではアンジェリーナが艦上に設置された機関銃を無力化しているところだった。

「クリア」

すべての機関銃を無力化したというアンジェリーナの連絡とともに海燕丸、芹洲丸の船員が艦内になだれ込む。

勝負は決したようだ。


ー駆逐艦


「き、貴様等・・・」

根津大佐の息がかかっていなかった船員は隠し持っていた銃を取り出すと自分の口に突っ込んで引き金を引いた。

残っているのは大佐の息がかかった船員のみだ。

艦内通信では悲鳴と怒号、艦内にある銃より重い銃声が支配するようになっていた。

状況を理解した船員は速やかに少しでもましな選択をしたが、根津大佐の決断は遅かった。

「航海長!」

イエスマンの航海長に白旗を渡し艦橋から蹴り出す。

降伏の交渉をさせるためだ。

田舎者どもめ、この屈辱は忘れんぞ。必ず戻ってきて思い知らせてやる。

というのんきな思考は全身に銛を生やした元航海長が送り返されてようやく吹き飛んだ。

「き、貴様等!このテロリストどもっ!こんな真似して政府が黙っていると

「やかましい!」

虚勢を張る根津大佐の顔面に海燕丸船長の鉄拳が突き刺さる。

砕けた前歯が乾いた音を立てて転がった。

「お前等役人、は善良な臣民の富を簒奪した。我々の船に空からミサイルをばら撒いた!そのお前等が我々を、テロリストと呼ぶううぅ!」

「船長、ええからキャビアの場所聞き出そうで」

「おおそうじゃった!」

海燕丸船長はハカセの進言で短い演説を切り上げると根津大佐の尋問にかかる。

「キャビアはどこなら」

「ふぁあいふ」

よく分からないことを言ってごまかそうとしたので指を一本へし折った。「ふぁがあああああああ!?」

「強情張るなや」

尋問は2分で終わった。

指を10本折った時点で歯が砕けてしゃべれないことに気付いたからだ。

「しゃあない、しらみつぶしに探すしかないで」


ー甲板上


「ひっ、降参、降参する・・・だから助

「きいいいああああああうううういいいいいい!!!!!」

最後に残った敵渡来人(てんせいしゃ)の命乞いにルーキーの防火斧は耳を貸さず、一撃で脳天に突き刺さった。

「終わった、10人」

アンジェリーナ・デオロットは無人哨戒機にぶら下がったままスコットの隣に着地。

「俺様は15だ!また俺様の勝ちだな!」

「言ってろ馬鹿」

倒した渡来人(てんせいしゃ)の数はスコットが多いだろうがこっちは機関銃や近接火器(ゴールキーパー)の無力化も行ってる。

片手間の作業に一喜一憂するほど白銀姫:アンジェリーナは暇ではない。「あれは?」

アンジェリーナは今なお金切り声を上げて防火斧で死体を切り刻んでいる渡来人(てんせいしゃ)を指す。

タバコをふかしながらスコットは少し楽しそうに答える。

「期待の新人(ルーキー)ってとこだな」

出港時40人いた渡来人(てんせいしゃ)はオルトロスとの戦闘で20人に、そこからさらに戦闘を経て、残っているのは3人だけだった。

「そう・・・」

まあ、今生きている時点でスコットの言葉に嘘はないだろう。

「きいいああああああああああ!」

ルーキーの奇声の脇では漁師たちが駆逐艦に奪われたキャビアを運び出している。

さらにその脇では降伏した水兵が甲板から海に蹴り落とされている。

艦の制圧は終わったようだ。

「よーし!引っ張るぞ!」

江戸川丸と独尊丸が駆逐艦の曳航を始めた。

これも港に持って帰るということらしい。

最新鋭の駆逐艦だから旅団に売りつけて金にするのだろう。

「これより帰投する!歌え!」


ー瞳の奥に秘めた、真実。

ー青い宝石が輝いている

ー小さく落ちた雫

ー波紋が静かに

ー広がっていく、一瞬の形

ー刻み揺れる



男たちの凱歌とともに5隻の船は西に向かう太陽に凱旋する。

海に再び平和が訪れたのだ。



to_be_continued

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― 新着の感想 ―
[良い点] スキブズワブニル見てたら、う○きの法則の天界獣思い出しました。 互いにwinwinの関係のようで……。
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