表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界防衛戦線-刃と翼編-  作者: ミネアポリス剣(ブレイド)
漁船編
12/23

12.スキブズワブニル

12.スキブズワブニル




ー地上


「ねえ恭士郎、この人も転生者?すごい美人じゃない」

出航前にスコットから恭士郎宛てに送られてきた写メールをのぞき込みながら女神エクレールは興奮気味だった。

今の仕事を完遂する上で、転生者の協力は不可欠だったが、その候補はおっさんとチンピラくらいしかいなかった。

だからこの写真の転生者の情報はぜひ乳sっふする必要がある。

黒髪黒目の原住民の中にあって銀糸のような長髪は肥だめの中に86カラットのダイヤが輝いてるようだ。

落ち着いた紫色の瞳からは写真越しに高い知性と落ち着きが伝わってくる。

ぜひお近づきになりたい。

そして美少女転生者セシリアちゃんと一緒にこのチンピラの居候をおさらばするのだ。

「ババアだぞ?」

気分が良かった女神にはチンピラの無礼な物言いも耳に入らない。

「まあ、『白銀姫』のババアは人格以外は優秀だ。漁船から戻ってきたら依頼をかけてみるといい」

外人部隊に入ったばかりの恭士郎に奇跡(スキル)の使い方を教えたのはこの銀髪の転生者だった。

スコットと同じ10年戦士、平均寿命1ヶ月の外人部隊にあっては破格の実力者といっていいだろう。

人格以外は。

「恭士郎・・・」

そうこうしてたらスコットの女房が入り込んできた。

出航した後連絡してたらスコットとの連絡が途切れたらしい。

「電池でも切れたんだろ」

不安そうな女房に対し、恭士郎はなんだそんなことかというような対応だ。

「あいつは死なねえよ。ババアがいるなら余計に死にようがない」

スコットと最初につるんだときスコットは恭士郎に自慢していたものだ。

ーいやー、サラリーマン時代によぉ、俺様としたことが『うっかり』『死神』を無反動砲で吹っ飛ばしてよ?

スポンサーからは生け捕りにしろって言われてたから報酬値切られちまってよー。

副隊長から小言言われて大変だったぜ!ー


サラリーマン時代に殺した『死神』は『人間の』狙撃手だったらしいが、この後は本物の死神も恐れて近づかなくなったと酒でハッピーになった頭で自慢していた。

実際、あのデカブツを死神『ごとき』がどうやって殺すことが出来るか全く分からない。



ー???


スキブズワブニル。

船乗りの伝承に伝えられる巨大な船だ。

政府、旅団、企業、いずれにも登録されていないこの『建造物』は艦船なのか、島なのか、はたまた『外来種』なのか、そのすべてが謎だった。

「おお、こりゃすげーな!宇宙船みてーだ!」

「エアコン効いてる」

人類は、その謎の腹の中にいる。

「えらいハイテクじゃのう」

「豊島四起でもこれほどの設備はそうそうあらへんで・・・」

はしゃぎ回る転生者とくつろぐ転生者、興味深く観察する原住民。

ルーキーは不安と疲労で何もする気が起きない。

巨大な島が口を開き漁船もろとも自分を飲み込んだ時は死んだと思ったが、死神はなぜだか自分のことが嫌いでしょうがないらしい。

ルーキーは自分が幸運の女神に『まったく』愛されてないことはこれまでの人生で嫌というほど思い知っている。

だから今死んでいないと言うことはこれからさらなる不幸に遭うという事実の確認でしかなく、だからこそ今の状況を喜ぶ余地はどこにもなかった。

「それにしても、ここの設備誰が動かしてんだ?」

隻眼の転生者:スコット・スコフィールドの疑問を検証すべく銀髪の転生者:アンジェリーナ・デオロットが奇跡(スキル)を使用する。


生命付与(ライクライフ)


「反応しない」

無生物にかりそめの生命を与える奇跡(スキル)をこの巨大な建造物は受け付けなかった。

「てことたーこのデカブツは生き物ってことか!」

「あるいは神器(アーティファクト)やな」

インテリの原住民(ハカセと呼ばれていた)は周りにある装置のようなものを金槌で叩く。

金属のような音が返ってきたが、どうやらここにある設備は機械ではないようだ。

機械であればこの巨大な構造物を接合するためのボルトなり溶接痕なりがあるはずだが、それがどこにもない。

島ほどの大きさの機械を作ることは現在では技術的には可能だが、そのすべてを一体成形で作れと言われれば話は別だ。

このスキブズワブニルは、人間が作ることも、人間が維持することも前提としていないのだ。

「おい!なんか動いたぞ!」

漁船4隻が投錨した地点に巨大なげんこつロボが出現した。

「なんだこの野郎!やるか!」

「おっちゃん!まだ動いたらあかん!」

光波斬(シュトラール)で迎撃しようとするスコットをハカセが制止する。まだ敵かどうかは不明だ。

「獲物を取られた」

げんこつロボは曳航していたオルトロスを掴むとそのまま溶鉱炉のような場所に運んでいった。

オルトロスはげんこつロボから逃れようと身をよじり、高水圧でげんこつロボを切断しようとするが、漁師が仕掛けた電極から電流を流されるとたちまち抵抗できなくなった。

「タコ野郎が、人類なめんな」

そして、溶鉱炉に投下されたオルトロスの断末魔が響き渡った。

「獲物がなくなった」

「かめへんかめへん。どうせ銭にならん」

オルトロスを始末したスキブズワブニルは人類の前にホログラムを出現させる。

「これは、海燕丸?」

船の立体モデルに対して武器と機関の立体モデル。

これを海燕丸のモデルにドラッグすると画面端の数値が減っていく。

「もしやオルトロスを食わせた礼に船を改造しろってことか?」

画面端の数値はオルトロスを食った分で改造できる上限とうことだろうか。

強力な武器をドラッグすると数値の減りは大きくなる。

「対空パルスレーザー、怪力線照射装置、電磁砲、ずいぶん景気がいいねえ」

芹洲丸、江戸川丸、独尊丸も同様の状態になっているようだった。

ただ、改造出来る上限は4隻で持ち回りだからここは話し合いが必要になるか。

「これなら、あの役人に目に物見せてやれるぞ・・・」

船の改造に頭を捻りながら、漁師たちの顔には獰猛な笑みが張り付いていた。



ー洋上



「一体どうなってるんだ!」

政府海軍駆逐艦『東海』に艦長:根津大佐の金切り声が響く。

ここ三日のうちにキャビアの『密漁』を行う漁船が全くいなくなったからだ。

理由はわかりきっている。

ここ数日の間で外来ザメの回遊コースが移動したからだ。

もっとも、それを説明したところで艦長の金切り声がやむわけではないので、乗組員は金切り声で隠れる程度に「知るかボケくたばれ」と毒づくのみだ。

「チッ!」

使えない乗組員は知らないだろう。

根津はこの駆逐艦の導入にどれほど根回しをしたのか。

そして、金を出したがらない中央を言いくるめるのにどれほど賄賂を送ったか。

そして、自分の出世のために密漁を取り締まった実績、そしてキャビアがどれほど重要なモノかを。

これだから兵隊は、言われたことしかしないし大局も見れない、見る気がない。

根津は思う、自分は決して地方のドサ回りで終わる器ではないと、この駆逐艦もただの腰掛けにすぎないのだ。

こんな使えない兵隊どもは用が済んだらサメの餌にしてやる。

電波標定機(レーダー)に艦影!」

考え事をしていたら使えない兵隊に思考を中断させられた。

これだから兵隊は、自分で考えて動けないのか。

使えない奴らだ。



電波標定機(レーダー)が捉えた艦影は4つ、旧型の駆逐艦を改造した漁船だ。

サメもいないのに何しに来たというのか。

「よお役人!」

通信越しに漁船からの怒鳴り声が響いた。

「こないだはよくも舐めた真似しやがったな」

どうやら密漁を取り締まられたことを逆恨みした田舎者が報復に来たらしい。

まったく、品性にかける連中だ。

どこの蛮族だ。

「おまえら政府のやり方に思うところはあるが、俺たちは蛮族じゃねえ!積み荷と船を差し出して泣いて謝るなら軍人らしく銃殺で済ませてやるぞ」

「田舎者風情が、舐めおって・・・」

身の程知らずが、この駆逐艦は最新の火器管制装置が付いているのだ。

一度に128の目標を捕捉し命中させられる。

皇帝陛下より賜った神の矢だ。

田舎者の鉄屑など敵ではない。

「総員戦闘態勢!田舎者に思い知らせてやれ!」

かくして、サメを巡る戦いは最終局面を迎える流れとなった。






-to_be_continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ