メイドのオパールは、ご主人様に痛いくらいに、抱きしめられました。女性メイド型、完全思考同期装甲巨兵(ドレス)”メノウセキ”、推参。
優秀な侍女を沢山輩出する命道家。
ハイランド家に次ぐ武門の一族でもある。
ちなみに”メノウセキ”と搭乗者の下着は白。
「ご主人様、”オパール・命道”只今参りました」
侍女服のスカートの裾を掴み、瀟洒な礼をする。
少し慌てているようだ。
「来てくれたか。オパール」
ほっと息をついた。
主人の男性型、完全思考同期装甲巨兵の片腕が破損している。
7メートル近い巨体の前には、同じような大きさの巨獣が10体ほどいた。
過去に無計画に使用された、成長促進剤”ソダーツX”。
本来なら無害な家畜に使用されるものだが、それを食べた野獣まで巨大化してしまった。
それらの子孫と言える”X巨獣”である。
集団で興奮状態になった”スタンピード”を起こしている。
オパールは、主人とイノシシ型の”X巨獣”の間に、自分の女性メイド型、完全思考同期装甲巨兵”メノウセキ”を割り込ませた。
黒い侍女服に、胸からつけた白い鎧が腰のあたりから蛇腹状になり、エプロンのように見える。
鋼鉄製の、ホワイトプリムがきらりと光った。
搭乗者と同じ、黒髪のツインテールにされている。
「お引きになってください。ご主人様」
無表情だが、強い意志を感じる。
モーフィング(可動式)装甲で出来たロングスカートの一部に穴を空け、太ももに装備した”クナイ”を三本抜きうつ。
一瞬、白いガーターベルトとショーツがちらりと見えた。
「すまん。必ず帰ってくる。絶対死ぬなっ」
くやしそうな声だ。
主人は、下がりながら最愛にして最強の侍女に命令を下す。
「……ご主人の命のままに……」
「オパール・命道、命道を駆け参じますっ!!」
力強い声を出す。
腰の後ろに大きく蝶結びにされたリボンに刺された、二本差しの刀の一本を、目の前のイノシシに居合抜きする。
「ひとつっ」
大小二本の刀を両手に持った。
『二刀一流、”八突八斬”』
前進しながら、連撃を放つ。
「ふたつ」
「みっつ」
「よっつ」
パリ―――ン
両手の刀が粉々に砕け散る。
スカートを、指でつまんで礼をする”残心”の後、
グルオアアアアアア
襲い掛かってきた巨大なヒヒを、背中に背負った大太刀で真っ二つにする。
「いつつ」
◆
”メノウセキ”は、片腕を損傷している。
モーフィング(可動式)装甲で出来た”侍女服”は所々破れ、白い肌があらわになっていた。
周りには、10体の”X巨獣”の死体が転がっている。
「オパールっ」
大きな声だ。
主人が家来二人を連れて帰ってきた。
「お見苦しい所をお見せしました」
目を伏せた。
搭乗者と同じ、豊かな”胸部装甲”を前に倒し、その上にオパールは立っている。
スカートを指で掴み瀟洒な礼をした。
「オパールっ、無事でよかった」
声が震えている。
主人は、”メノウセキ”の開いている胸部装甲に飛び移り、最愛のメイドを、痛いくらいに抱きしめる。
「はい、ご主人様」
小さくつぶやく。
オパールは、無表情ながらも、頬を赤く染め、遠慮がちに抱きしめ返した。
装甲お嬢様シリーズ第三弾。