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巫女さん、異界の旅人に遭遇する

この作品は、作者の高校時代の黒歴史ノートを元に作られています。

久々の創作活動のため、非常に筆が遅いですがお付き合いいただければ幸いです。


「さて、どうしようかしら・・・」

 八木沢神社の巫女、八木沢神鈴(みすず)は悩んでいた。

 最近お菓子を食べすぎてお腹周りが気になってきたとかというわけではなく(別に気になっていないわけでないが)、今現在の状況そのものに悩んでいた。

 原因は、神鈴の目線の先、静かな寝息を立てる1人の少女である。

 肩より少し長い黒髪に、自分と同じくらいの体躯、そこまでなら別に気にはしなかっただろう。

 見慣れない服装に、異質な魔力の残滓が、猛烈な違和感として彼女の存在を異質なものとしていた。

「本当に、どうしよう・・・」

 

 この日、異世界の少女は、異世界転移してきた少女を拾った。


 事の発端は、神鈴が日課の掃除をしていた時にさかのぼる。

 神社といっても参拝客が来るような所ではないが、周辺の清浄さを保つために、毎日の清掃が必要となっている。春先は境内に咲いた花の花びら、冬なら雪かきが必要と年中掃除が必要な環境となっているため、1日欠かすとすぐに神社の周りに張ってある魔除けの結界に穴が開くため、神社が住居の神鈴にとっては死活問題である。

 そんな掃除を終えて、縁側でお茶を飲んでいる時に、それは起きた。

 突然神社の裏手、社務所の屋根に雷が落ちた。別にそれだけなら音に驚いたくらいで神鈴もそこまで気にしなかっただろう。神社内の家屋には防火魔法がかかっているので燃えることはないし、せいぜい直撃した部分の屋根の修理が必要になる程度である。

 神鈴が違和感を覚えたのは、落雷の余韻が去った後に境内に湧いた気配だった。神鈴は神社の巫女であるため、神社の結界内に入った対象は気配として判別できる。湧いた気配は落雷後に急に湧いたものだった。

 恐る恐る落雷地点、社務所側に回ってみると気配は社務所の中からしており、中を確認したら居間に件の少女が転がっていた。


 ここから少女の生死確認や外傷の有無、魔法による呪いの有無などを確認したのち、冒頭へ神鈴の悩みにとつながる。


「普通に考えるなら転移魔法の誤爆だろうけど、それならこんな濃い残滓が残るわけないし、この服装に説明がつかないからね」

 神鈴とてこの状況を困惑していないわけではないが、この時点である程度自体を把握していた。先代の巫女から似たような話を聞いていたからである。

『この世界には、時々異世界から迷い込む人がいる。その入り口がこの神社なのよ。私たちの家系は、代々この神社の守護を創造主から任せられているの』

 魔除けの結界や、神社の割に住居用の社務所がかなり大きいのはそのせいだと聞かされている。

 もっとも、先代もその前の代もそんな状況に遭遇した経験はないという。最後の迷い人が現れたという記録は、神社には残っていない。もやは伝承どころかおとぎ話にも近い存在である。

「ゲーム内だとそんな設定になってたのねー。プレイしてた時はチュートリアルのストーリーは流し読みしてたし知らなかったわ」

 神鈴はこっちの世界の住人には意味不明な独り言をつぶやきながら、少女が目覚めるのを待つことにした。


 ここまででお気づきの方もいるだろうが、この神鈴という少女、生前にプレイしていたVRMMORPGの世界にチュートリアルで最初に訪れる神社の巫女に転生した転生者である。

 生まれた当初より、記憶、意識共にかなりハッキリしていたがこの世界がプレイしていたゲームの世界だと認識できるようになったのは数年前と割と最近だ。ゲームで覚えたスキルなんかも使えるようになったのはそのころである。そんな彼女だからこそ、目の前に突如現れた少女の服装のデザインに見覚えがあった。

「この子の服、というか制服だよね。私の通ってたところのじゃないけど、まあそういうことなんだろうなぁ・・・」

 生前の記憶と、ゲームでの知識、伝承の内容から神鈴はある結論に至った。

「この子、ゲーム通りならこの世界にプレイヤーとして転移してきた、旅人なんだね」

 ゲームとしてのこの世界は魔王がいて世界を滅ぼそうとしてるとか、国同士が戦争してるとかはなく、プレイヤーは旅人として、世界を巡りスキルやアビリティを覚えるためのクエストをこなしたりして、やがて世界の秘密を解き明かすために創造主の試練に挑むという内容になっている。

 「ゲームの通りなら私は目覚めた彼女に、この世界に関する説明とかをするナビゲーター役ってわけね。ゲームでのことでしか覚えてないけど大丈夫かしら?」

 説明する内容は、そこまで難しいものではない。大雑把に分類するなら、基礎的な世界情報と各種ゲーム内機能の説明くらいだったはずである。世界情報はともかくとして、ゲームの機能を説明するのは非常に難しいことになりそうな予感がしていた。何しろ任意発動のスキルや、常時発動のアビリティと違い、ゲームの機能というのは神鈴本人にも使い方がわかっていない部分が多い。数年の間に試行錯誤を繰り返して、何とか使えるようになったのがインベントリ機能だけである。まあ、これだけでも十分に便利なのだが。

「そもそも、説明しても分かってもらえそうにない項目だし、省いてもいいか。別に使えなくても困る様なのはインベントリくらいだし、それは教えられるから問題ないわね」

 自分で自分を納得させながら、説明に必要なものを揃えてつつ、彼女の目覚めを待つ神鈴であった。


 




 

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