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003

すいません。主人公の年齢を10歳から12歳に変更しました。

 ブラウンさんが開け放ったギルドマスターの部屋にはゴツイ体格の男性が椅子に座っていた。そいつは俺がよく知っている人だが、俺の記憶よりはるかに老けていた。そいつはいきなり入ってきたブラウンさんを驚いた目で出迎えた。


「突然どうした?そんなに慌てて入ってくる要件があるのか?」


声も聞き慣れた声色よりだいぶ渋くなっている。渋くなっているが、久しぶりにこいつの声を聞いた。本当に懐かしいよ。俺が魔界から戻る直前に会いたいと思った仲間の1人。


「ああ、ある。大ありだ」


「で、その要件に関係するのが脇腹に抱えている子供なのか?」


「そうだ。長年お前らが会いたがっていた奴を連れてきてやったぞ」


「ん?それはどういう意味だ?」


ブラウンさんはその質問には答えずに俺を机の前に降ろした。そのお陰で俺とそいつの目がばっちり合う。一瞬遅れてそいつは目をこれでもかと思うほどに見開いて俺を凝視してくるから居心地が悪くなる。


「やぁ、久しぶり。元気にしてた?」


居心地が悪いのを吹き飛ばすように軽く声をかけてみた。だが、すぐに反応がない。どうしたんだろう?


「・・・・本当にお前か?フリードなのか?」


恐る恐るというように尋ねてくる重剣士ゴラード。滅多にみない仲間の姿に珍しいものも見た気分になってくる。


「そうだよ。背は縮んじゃったけどね。あ、あと髪が少しだけ伸びたかな?」


肩にかかる髪を持ち上げてやっぱり長くなったと思い、それからゴラードに視線を戻す。


「お」


「お?」


ゴラードが何かを言おうと口を開いた。


「おおぉぉ~!フリード!フリードが帰ってきたぞ!」


ゴラードは立ち上がると嬉しさのあまりなのか、俺を抱きしめる。だが痛い、めちゃくちゃ痛い。怪力のくせに全力で力を入れてるんじゃないか?こいつは俺を抱きつぶすきか!


「フリード、よく無事に帰ってきてくれた!どこも怪我してないな?欠損とかしてないよな?」


とても力強い腕の中から解放されたと思えば、すぐに身体チェックが始まった。服の上からとは言え弄られるのはくすぐったい。


「してない、してないから。俺は怪我もしてないし、欠損もしてない。だから手を放せ!くすぐったい!」


全力でゴラードの手から逃れると、またもや抱きしめられてしまった。今度もまた怪力抱合かと思って身構えたが、今回はさっきと違って優しかった。まるで本当にここにいるのを確かめるような感じだ。


「よかった。本当によかった。よく帰ってきてくれた、フリード」


「・・・・少し大袈裟すぎない?」


「大袈裟なもんか。どれほど俺たちが心配していたと思っているんだ」


「たかが5、6年で大袈裟だよ」


それを聞いてばっと弾けるように俺を放してまじまじと見つめてくるゴラード。いや、女性とならともかく男性と、しかもおじさんと呼べるような人と見つめ合うのは何も嬉しくないんだけど。


「フリード、あれからすでに20年たっているんだぞ?」


「え?」


今、20年って聞こえたんだけど、気のせい?


「20年?」


「そう、20年だ」


はっきりと言われてしまった。え、マジで?俺が魔界で徘徊していた間に20年も立っているの?ああ、でもこれで納得できた。


「だからみんなお爺ちゃんになんだね」


5、6年でこんなに歳をとるとは思えなかったんだよね。いやー、ブラウンさんなんて俺が解体で無理をさせたから一気に歳をとったかもって本気で思ってったんだよね。危ない危ない。これからはブラウンさんの体調をきにかけよう。気にかけるところが決して魔物の数に向かない俺だった。


「お前、何を考えていた?」


呆れた表情で聞いてくるゴラード。


「だって5,6年でこんなにみんなが歳をとるなんてどう考えてもおかしいなって思ってたんだよね。魔法を使ったかもとは思ったけど、進んで歳をとろうって人はさすがにいないだろうなって思って」


「・・・・・さすがフリード。そういえばお前はこういう奴だったな」


「なんか失礼な事を言われた気がする」


「気のせいだ」


気のせいと言われてもね。


「あ、そうだ。ブラウンさん、解体場は大丈夫なの?誰にも言わないで勝手に来ていたけど」


「あ!そうだった。悪いな、俺は仕事に戻るぜ!明日までには金にしておくから、料金は明日取りに来い」


「わかった」


ブラウンさんはここに来た時と同じように去っていった。嵐のような人だ。それからゴラードに視線を戻す。


「老けたね」


「お前は若返ったな」


「大人のほうがいい」


「がははは!そりゃそうだ、酒が飲めないもんな!」


「言うな!考えないようにしてたんだぞ!」


そうなんだ。子供の姿だから酒が飲めないんだよ。あの仕事終わりに飲むエールが!疲れを吹き飛ばしてくれる長年親しんでいたエールが!子供だからという理由で飲めないんだ!がっくりと肩を落としている俺にゴラードは豪快に笑いながら頭をなでてくる。お前もか。どうしてそう俺の頭をなでるんだ?


「にしてもお前、小さい頃は可愛かったんだな」


何を言う。俺は男だぞ。


「そうかな?でも可愛いなんて言われて喜ぶ男はいないでしょ。俺はどっちかっというと格好いいがいい」


「お前は男の子だろう」


くそっ、正論で言い返せない。俺が悔しがっている間もゴラードは頭を撫で続けていた。いつまで撫でるんだろう、こいつ。


「今は何歳くらいなんだ?」


「そうだね、うーん、12歳くらいだと思う」


「え?この身長でか?」


「俺は後から身長が伸びる体質だったんだよ。15歳くらいまでは伸び悩んでいたかな」


俺の身長が急激に伸び始めたのはちょうど成人する頃からだ。ゴラードたちと出会ったのは18歳だからすでに平均身長を上回っていたんだよね。


「ゴラードから見て、俺は何歳に見える?」


「10歳」


「・・・・マジで?」


「マジだ。お前、小さすぎだぞ」


ううっ、傷つく。小さい頃は身長が一番の悩みだったんだぞ。それを今になっても悩む事になるとは、これは何かの罰か。


「まぁ、俺は小さなフリードも好きだぞ。大人のお前と違って愛嬌があるしな」


「悪かったね。大人の俺は無愛想でさ」


「いやいや、一応今のは褒めたんだぞ。だからそう拗ねるなって」


「褒めてない!小さなフリードってなんだよ!」


身長のことで憤怒する俺にゴラードは終始ずっと笑っていたのだった。




 しばらくの間はお互いに再会を喜んで話をしていたが、そろそろギルドマスターは職務に戻らないといけないと思うのは俺の気のせいだろうか。だが、ゴラードは一向に職務に戻る気配がない。


「ゴラード、仕事はしなくてもいいのか?」


「ん?あぁ、後回しでもいい仕事だから別にいいんだよ」


「でも俺の知っているギルドマスターは忙しそうだったけど」


「あいつはあいつ、俺は俺だ」


なんかめちゃくちゃな説明だ。まぁ、こいつが大丈夫って言うならいいのかな。どうせ後で怒られるのはゴラードだし。


「今夜泊まる宿は決めているのか?」


ふと思い出したようにゴラードが尋ねてくる。


「まだ」


「なら俺の家に来い。部屋ならたくさん余っているぞ」


「ん?ゴラードの家ってそんなに大きな家だったっけ?」


「引っ越したんだよ。ギルドマスターだぞ?前の家より広い家ぐらいは持ってるさ」


「へぇ。ならお言葉に甘えるよ」


「そうしろ」


会話がひと段落して出された紅茶に口をつける。さっきから飲んでるけど、食べ物を口にするのって魔界に渡る前依頼じゃないか?ということは20年ぶりの食事になるのかな?おー、今思えば空腹を感じないとか以上だね。そういえば冒険者ギルドに買い取り以外で何をしに来たんだっけ?何か忘れているような・・・えーっと、えーっと。


「あ!」


「ん?どうしたんだ?」


「ゴラード、俺のギルドカードはまだ再発行できる?それがないと果物すら変えないんだけど」


「それなら問題ない。今すぐにでもできるぞ」


「なら頼むよ。切実に新しい服が欲しい」


「まぁ、待て待て。そんなに焦らなくてもお前のギルドカードは逃げやしないんだ。明日でも問題ないだろ」


「でもお金が」


「俺の家に泊まるんだから宿代は必要ないだろう?」


「服は必要だよ」


「家に息子の古着があるから心配するな。成長が早くて数回しか着られなかった服が残っているはずだ。今

のフリードなら着られるだろう。だから服代も必要ない」


どうしてだろう。なぜか俺の退路が断たれていっている気がする。そうのように思うのは俺だけ?でも明日あ再発行してくれるみたいだし、それでもいいか。


「わかったよ」


そうして俺はゴラード家に居候する事になった。

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