表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

002

川辺を歩くこと丸1日。懐かしの我らが王都が見えてきた。いやー、本当に久しぶりだよ。


・・・でも待って。王都ってここまで大きかったっけ?大きさ的に言うと俺が知っている王都がゴブリンの身長で、目の前の王都がオークの身長ぐらいかな。俺の言いたい事わかる?要するに王都が凄く大きくなってるってこと。いったい俺は魔界にどれぐらいいたんだろうね?


まぁ、今が何年なのかは後で調べるとして、まずはギルドだよ。ギルドに行かないとお金がないし、お金がないと服も食べ物も買えない。


「って、ちょっと待て待て」


そんな声が聞こえて肩を掴まれた。振り返るれば掴んでいたのは門番の警備兵だった。


「何?」


「いや、何じゃないから。その格好はどうしたんだい?」


あー、この格好ですか。やっぱり目立つよね。


「追い剥ぎ?」


魔界の魔物に引ったくられて失った魔道具とかも結構あったし、嘘にはならないと思う。このボロボロの服も8割魔物のせいだし。


「やっぱりそうか。君、冒険者?」


「うん。ギルドカード失くしたから再発行してもらおうかなって」


「そうだな、そうした方がいい。少し待ってろ」


警備兵のお兄さんはそう言うと詰め所に入っていった。何があるのか知らないが、待ってろと言われたので大人しく待つ事にする。


そしたら近くにいた別の警備兵が話しかけてきた。


「そんなにボロボロなのによく無事だったね。怪我はしてないか?」


「してないよ。そんなにボロボロに見える?」


「見えるな」


俺の格好を再度見てその警備兵は苦笑した。そして何故か頭を撫でられる。意味が分からない。


「おまたせ」


戻ってきた警備兵に渡されたのは服。古くはあるが俺のボロボロの服よりは何倍もマシな服だ。


「これは?」


「あげるよ。どうせ捨てる服だから、そのまま貰ってくれて構わないさ。その服よりはマシだろう?」


同感だ。


「ありがとう、お兄さん。あそこで着替えてもいい?」


「ああ。着替えたらそのまま街に入っても構わないよ」


その警備兵のお兄さんも笑顔でそう言って俺の頭を撫でた。だから何故撫でる?


俺は警備兵の詰め所を少しだけ借りて着替えた。少しだけぶかぶかだけど、さっきのボロボロの服よりは断然マシだと思う。詰め所から出て街に入る時に、警備兵のお兄さん達に手を振ってから街中に入った。



街の雰囲気は俺の知っている王都とまったく変わっていなかった。活発に動く街、力強さを感じる街。俺の知る王都だ。凄く懐かしい。


「あの、すみません」


「ん?なんだ坊主」


「冒険者ギルドはどこにあるの?」


「冒険者ギルドならこの通りをまっすぐ行って、大通りを左に行けばいい。すぐに大きな建物が見えるから簡単にわかるはずだ」


「どうもありがとう」


「おう、気をつけてな」


通りすがりのおじさんに聞いたら丁寧に教えてくれた。どうらや治安がよくなっているらしい。いい事だ。


王都を観光しながら冒険者ギルドに着いた。懐かしいな、なんて思いながら扉を押して中に入ると、見慣れた風景が広がっている。ああ、本当に懐かしい。その懐かしさに浸りながらもギルド内を歩いていく。向かっているのは素材買取り受付だ。ギルドカードを再発行してもらう前に先に買取りを済ませておこうと思ったからだ。


「こんにちは。依頼の受付なら向こうよ?」


買取り受付にいたのは美人な受付嬢。受付嬢はギルドの顔になるから綺麗な人が多いんだ。


「こんにちは。買取りだこらここで合ってるよ」


「そうなの?何か持っているようには見えないけど」


「空間収納を持ってるからね。たくさんあるから奥に行ってもいい?」


奥には解体場がある。大量の買取りの時は必ずと言っていい程通された場所だった。


「空間収納を持ってるなんて珍しいわね。いいわよ、いらっしゃい」


受付嬢の後ろをついていく。この通路を通るのも随分と久しぶりだ。通路を抜けると解体場に出た。そこでは相変わらず解体専門のギルド員がせっせと魔物を解体している。


久しぶりの解体場を見回してたら、上からクスクスと笑う声が聞こえてきた。見上げると笑っているのは案内してくれた受付嬢。どうして笑っているのか分からなくて首を傾げたが、受付嬢は答えずに空いているスペースを手で指して言った。


「買取りしてほしい魔物はそこにお願いね。入りそう?」


「うーん、ちょっと小さいかも」


「このスペースより大きい魔物なの?」


「大きな魔物もあるよ」


そう答えると受付嬢は一瞬固まったがすぐに元に戻った。


「ねぇ、今大きな魔物が一匹じゃなくて、他にも魔物があるって聞こえなんだけど」


「うん、大きな魔物もいっぱいあるよ」


「・・・・とりえずこのスペースに入りそうな魔物を出せるかしら?」


「わかった」


空間収納から魔界で大量狩りしたオークを出していく。出だしのオークだけでスペースがいっぱいになってしまった。あー、やっぱり足りなかった。他にもスペースを使わせてもらえないかな。


受付嬢にスペースの追加を頼もうと振り返ったが、その受付嬢は出来たオークの山を見て固まっていた。


「受付のお姉さん?」


呼んでも返事がない。


「お姉さん?」


ダメだ。完全に心ここにあらずだ。どうしよう。


受付嬢を放っておくか、強引に現実に戻ってきてもらうか悩んでるいると背後から人の気配がした。見ると見知った顔の男性が俺たちの方に向かって歩いて来ていた。彼に会うのも久しぶりだ。


「おー、こんなオークの山なんて久しぶりに見るな」


彼はこの解体場の責任者であるブラウンさんだ。何だか見ないうちに結構老けてるな。


「こんにちは」


「おお、お前か。こんなオークの山を持って来たのは」


「うん」


ブラウンさんは俺が魔界に行く前から付き合いがある。毎回こうやって大量の魔物を持ってくるから、その度に顔を合わせていたからだ。たまに持って来すぎだと文句を言われてたけど。


「にしても懐かしいな。昔にもお前さんみたいに大量に持っていた奴がいたんだよ。いやぁ、懐かしい」


すいません。たぶん、それは俺の事かと思います。


「坊主、買取りはこれだけか?」


「まだあるよ」


「ならさっさと出してしまえ。解体なら俺たちがパパッと終わらせるからさ」


「なら使っていいスペースはある?受付嬢に聞こうと思ったんだけど、こんなだから」


受付嬢はまだオークの山を見て固まっている。本当にいつまで固まっているんだろう?受付嬢を見たブラウンさんは苦笑して納得してくれた。


「俺は経験済みだからなんともないが、本当ならこの反応が普通なんだぞ」


「そうなの?」


「ほら、周りを見てみろ」


言われた通りに周りを見ると、受付嬢と同じようにオークの山を見て固まっている解体場職員が大半だった。外から戻ってきた職員さんが同僚達を見て驚いてる。あ、でもその人もオークの山を見て固まっちゃった。何だか見てて面白いね。


「それにしても、このオーク達はどいつもいい筋肉してるな。こんな凶悪そうなオークは見たことないが」


何かを考え始めたブラウンさんを横に俺は周りの人を面白そうに見ていた。そして俺の横顔を見て何かに気づいたブラウンさんは慌てて乱暴に俺の肩を掴み、正面を向かせる。


「な、何?」


真顔で俺の瞳を覗くように見てくるブラウンさんに、俺は若干引きぎみだ。


「・・・お前、フリードか?」


おー、よくわかりましたね。


「そうだよ。久しぶりだね、ブラウンさん」


別に隠す事でもないのでそう告げると、彼は目を大きく見開いて固まった。あれ、なんでブラウンさんまで固まったの?経験済みじゃなかったの?あ、たぶん俺に驚いてるんだ。やっぱり驚くよね。成人男性が帰ってきたら子供になってるんだから。うん、俺でも驚くかも。


「お、お前、本当にフリードなのか?嘘じゃないよな?」


あ、再起動した。


「嘘じゃないよ。まぁ、多少見た目に変化はあるけど俺は俺だし」


「うん。このマイペースは確かに俺の知ってるフリードだ」


おい、なんだよ。そのマイペースって。俺は質問に答えてるだけだぞ。


「買取りなら後でしてやるから、まずは来い」


そう言ったらすぐにブラウンさんは俺を横腹に抱えた。まるで逃がさないように捕獲されている気分だ。


「ブラウンさん。自分の足で歩けるから降ろしてくれない?」


「この方が早い」


「いや、早いって何が?」


「いいから黙って運ばれてろ」


どうやら降ろす気はないらしいので、仕方なく俺は腕の中でぶら下がっている事にした。それにしてもブラウンさんの腕は筋肉がついてい太いし、がっしりしている。男らしくて羨ましい。俺は子供の身体だから腕が細い。成人してた時はもっとが筋肉あったのに!


独りでに勝手にがっかりしていたら、いつの間にか見覚えのある扉の前に来ていた。この扉はギルドマスターの部屋の扉だったはずだ。なんでこの部屋に?


俺の疑問はブラウンさんが乱暴に開けた放った先に座っていた男を見て解消された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ