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オルドーの町長

次の日の朝ファナーカはユキに昨晩の出来事と会議の事を話してオルドーの町に向かった。


ユキはファナーカの言っていたベルの事が気になっていた。


「昨夜ベルはまた怒りで魔力が漏れていたんだ しかもあれは5年前とは比べ物になら無いくらい強大な魔力だった 抑えるだけでも骨がおれた」


「そんな力がベルに?」

ユキは内心分かっていた。


ベルの潜在能力の高さは訓練の時からも薄々勘づいていたし。ユキ自身魔王直属の護衛部隊に所属していたオーガニクス家の当主だったからだ。


魔王直属の戦士と勇者の混血がベルである。


「あれほどの魔力は魔王のそれに似ていたんだ」

ファナーカが無理矢理に気持ちを抑えながら言うと


「これから何かが大きく変わろうとしているのね 私はあなたと同じように魔物も人間もきっと分かり合えると信じているわ ベルも優しい子に育ったじゃない だから無事に戻ってきてね」


ユキはこの先ベルに起こるであろう困難に不安を隠しきれなかったがファナーカを送り出した。


オルドーの町に着いたファナーカは導師のローブを目深にかぶり町長であるマルスの家に向かった。


町長のマルスはかつてファナーカや他の勇者達と共に魔王と戦った仲間だった。

魔王軍との戦線が激化していくなかでファナーカは和平の道を模索するようになっていったが5人の勇者は意見が割れてしまった。


マルスはその中でも中立の立場にいたから話せば分かってくれるとファナーカも思っていた。


アモンディア・マルス

彼は光の精霊の加護を受けた剣士だった。

光の加護を受けていたからこそ人も魔物も悪いオーラ、良いオーラの差が如実に見えてしまうのだ。マルスも苦しかったろう。


だからこそ魔物の村が近くにある場所で魔物と人間の道を見ていこうと決めた。

戦争が終わってから王国を離れてオルドーの町に住んだのにはこういった理由があった。


マルスの家に着くと屋敷の執事が客間に案内してくれた。


「やあ久しぶりだね ギートからも聞いたけどまさか魔物と暮らしていたなんてね 君らしいよ」

マルスは涼しげな笑顔で言った。


「昔話もしたいところだが今は用件だけを話させてもらう 昨夜の事は聞いているだろう 何もせず大人しく暮らしていたが人間が魔物を殺すなんてバカげている 魔物にも心がある! 対話もできるんだ なのに一方的に攻めてきている現状はなんだ! これが我々が勝ち取った平和なのか? 今の王国は腐っている」


ファナーカは熱くなる気持ちがおさえきれていなかった。


「それで用件というのは」


「人間と魔物 お互い手を取り合って生きていきたい マルス! 君は前から中立ではあったが魔物と戦うことに疑問を持っていただろう? このオルドーの町を発端に人の意識を変えていきたいんだ 私には子供がいる 魔物と人間のハーフだ。子供達に差別や偏見なんて悲しいことは教えていきたくない だから手を貸してほしい」


ファナーカはマルスに頭を下げた。


「これは人の考えを根本的に変える事だぞ しかも勇者だった私達が動く事になれば最悪戦争だって起きかねんぞ!」

マルスは事の重大さをファナーカに説こうとする。


「もとよりそのつもりだ! いきなりじゃなくてもいいんだ 何か足掛かりが掴めれば! まずは村の子供達をこの町の魔道学校に通わせたい 人と魔物も分かり合えるという事を証明したいんだ」

ファナーカは自分の考えをマルスに話した。


「この町だって魔物に対して憎しみを持っている人も少なくない 冒険者だってたくさんいる 君の子供の命の危険だってあるかもしれないんだぞ!」

マルスは心配で堪らなかった。


「その為に教えられる事は色々と教えてきたつもりだ マルスは魔物との交換留学の話を町の人達に伝えてくれたらいい 私の子供はきっとこの町を変えてくれると信じている」


「しばらく見ない間に君も随分と親バカになったものだな 分かった 最低限生活できるように協力させてもらうよ それに君の子供にも興味がわいた」


マルスも腹を決めたみたいだった。

「マルス! 恩に着る!」


「これで用は済んだろう? 細かい話はこれから進めていくとして今日はお酒を飲みながら久々に語らおうじゃないか!」


ファナーカはマルスと冒険出来た事を心から誇らしく思った。

本当に大変なのはここから始まる。ファナーカに迷いはもう無かった。

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