見えた1つの光
ライラック・ミカエル
ファナーカやマルスと同じロンベルトの儀式によって高い魔力を持って産まれたエルフの勇者である。
エルフは長命で成長が遅く生まれながらに高い魔力を宿している。
三十を越えているのに見た目が若いのはそのためだ。
エルフは神に近い存在と言われ崇められているがその実、災厄や飢饉などの生け贄にされたり大戦中その高い魔力を求めていた魔王により大量に虐殺された。
生涯で子を1人しか授かることが出来ないエルフはその数を減らしミカを含め現在生存しているエルフは数える程しかいなくなった。
ロンベルトは大戦中魔物の軍に襲われていたミカの両親を助け保護した過去がある。
ファナーカはここに来るまでに起こった事を話そうとすると、ミカは手をファナーカの前に突きだし制止した。
「お爺ちゃん死んじゃったんでしょ?」
やっぱり知ってやがったか!?
ファナーカはミカの使う魔法の中に世界中のあらゆる場所を覗き見ることが出来る力があると知っていた。
全くデタラメな魔法だぜ。
ファナーカは頭を押さえた。
多分ここに来ることも事前に知っていたのだろう。ミカは魔法の応用で未来を先読みする事も出来る。
「冥界の女王ヘスティア…… とんでもないのを呼び出しちゃったね 彼女の放つ黒いオーラは浴びたものに幻覚を見せるの そしてそれは現実になって襲ってくる 正直お手上げかなー」
「何とかする方法はないのか?」
ミカは自身の知識とロンベルトの戦いからヘスティアの能力を見抜いていた。お手上げと言っているがどこか余裕のある表情を見てファナーカは何かを隠していると確信した。
つかみどころのない性格は昔から変わってねぇな……ヘスティアの魔法に興味津々じゃねぇか。
「方法は無くはないかな…… 3つあるよ!」
3つもあるのかよ!!
心の中でそうツッコまざるをえなかった。
やはりミカもとんでもないやつだ。
この時この幼い見た目の勇者が敵でなくて心底安心したという。
「1つは封印の重ね掛けぇ! これは現実的じゃないのは分かるでしょ?」
確かに出来なくはないがかなり無理がある。
巨大な力を封じるには更に巨大な力で抑え込む必要があるからだ。
一体どれだけの魔法使いを集める必要があるのか……
魔物との共生関係を望むファナーカに協力する者は殆どいないだろう……
「もう1つは5人の勇者で真っ向勝負! プフフ…… これも無理だねー」
意地が悪い……分かっていて言うミカの笑いに舌打ちをした。ミカの笑いはだんだんと何かを含んだものに変わり
「最後の1つは…… その為に連れてきたんでしょ? ベル君て言うんだ 可愛いね」
ファナーカも同じ魔法使いとして薄々感じていた。
ベルとミカの力が合わさればあるいわ……
しかし幼いベルを危険な目に合わせる事などしたくない。ベル以外の方法があるかもしれないとミカに会いに来たのだ。ファナーカは残念がった。
「そんな顔してないで聞いてファナッチ! ヘスティアはね 召喚された時に分身をこっちに送ったの だから本体は冥界にあるんだけどね お爺ちゃんが戦ってた時に似たような魔力を別の場所から感じたの それは弱かったけど確実にね 多分だけど冥界と呼ばれてる場所はこの世界に存在してるの! もう分かったでしょ?」
ファナーカはハッとした。大陸ユグドラシルは王国を中心に東西南北に土地を分けた。だがそれは大陸全土ではない。
マルスのいる南側の土地は更に広がっているのだ。
王国の支配している領土の最南端に巨大な山がある。荒れた気候が人の行く手を阻み、空からの進入も暴風雷雨により不可能と言われ魔法による干渉も一切受け付けない。
人々はその様子を神の怒りと称し怒山と名付けた人類未開の地。
伝記によればその先には神が作ったとされる巨大な門があると言われている。
「試練の門……」
ファナーカは息を飲んだ。本当かどうかさえも定かではないおとぎ話だと思っていた。
「さぁて! ここからがミラクルガールミカちゃんのありがたい話なんだぞ!」
ミカは顔の前でピースサインをしながらファナーカの前でどや顔を決めていた。




