過去戦争
魔王は生まれながらの魔王ではなかった。
元々魔力も低く低級に属していた魔王は他の強い魔物の影に身を潜めながら暮らしていた。
ただ1つ他の魔物と違かったのは力への渇望が凄まじかったことだ。
魔力の根源や他の魔物の能力をつぶさに研究し、自身でも使えるような強力な魔道具を作った。
その魔道具は他の生物の魔力を吸収し自分の魔力として取り込むことの出来る恐ろしい力だった。
魔王はその力を使い他の魔物を力と恐怖で支配すると独立国家を建設して周辺の国々に戦争を仕掛けたのだ。
魔王は魔道具だけにとどまらず人間を魔物に変えてしまうような人体実験もしていた。
その非人道的な行動は元々恐怖で支配されていた魔物達に更に恐怖を植え付けた。
魔王軍の勢いは留まることを知らなかった。
頭の良かった魔王はそれぞれの魔物を部隊に分け実力のあるものを隊長に据えて効率良く町や村を支配していった。
ライオネルやドラグナー、セイレーンにオーガニクス家の魔物達が幹部になったのもここからだった。
魔物達が1つの軍隊として攻めてきたことで人間達は浮き足だった。
魔物の群程度なら同族であり得る話だが他種族混合の大部隊が攻めてきたことは1度もなかったからだ。
それも指揮官がいて統率がとれている。
元々人間よりも身体能力や魔力の高い魔物達が人間に遅れを取るわけがなかった。
今までそうした他種族混合が成されなかったのは単に他種族同士の仲が悪かった事とそれぞれがテリトリーを作り種族同士が干渉しないようにしあっていたからだった。
それを魔王が壊し支配したことによって魔物達の歴史は大きく動いたのだ。
魔物の侵略が進んでいくなか人間達も互いに手をとって戦うことを選択した。
今まで村や町それぞれが独立していたものを1つの巨大な国家として形成することで魔物達に対抗しようとしたのだ。
魔物が個々の能力で勝っているなら人間はその圧倒的な物量で対抗しようとしたのだ。
しかし後手にまわってしまった事と同盟によるゴタゴタが長引いたことによって戦況はなかなか好転しなかった。
この状況が何年も続き国が疲弊していった時1人の魔法使いが国に現れた。
魔法使いは当時の人間の中でも飛び抜けて魔力が高かった。魔法使いは国のために魔物と戦い続けたが1人では到底魔王までたどり着くこともかなわない。
魔法使いはこの状況を打破すべく1つの方法を国王に進言した。
それは国中の魔法使いと今年出産を控えている妊婦を用意しろと言うのだ。
魔王を倒す為だと聞いた国王は藁にもすがる気持ちで国王が控えている砦に魔法使いを集められるだけ集めた。
今年出産を控えている妊婦は5人集まった。この戦争を終わらせられるかもしれないのなら協力は惜しまないという強い思いも感じた。
魔王との戦いに魔力が重要だと思っていた魔法使いは一室に巨大な魔方陣を描きその真ん中に妊婦達を立たせると何かの呪文を詠唱し始めた。
砦に集まっていた魔法使い達も自身の魔力を高めていく。
光だした魔方陣はその光をどんどん強くしていく。
その光が強くなるにつれて魔法使いは1人また1人と倒れていく。
どうやら練っていた魔力を魔方陣に吸いとられてしまったようだった。
1000人はいた魔法使いが全員倒れた頃には魔方陣の中が全く見えなくなるほど光が国中を包んでいた。
詠唱を続けていた魔法使いは一言
「すまない」
と小さく言うとその国中を包んでいた光を魔方陣の中に留めていった。留めた光が徐々に小さくなっていく。
まるで妊婦達に光が取り込まれていくようだった。
光が全て消えた時妊婦達は皆気を失って倒れていたが全員無事だった。
それからしばらくして5人の妊婦はそれぞれ子供を出産した。
産まれながらに強力な魔力を持った5人の勇者を




