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精霊召喚

シャルの体が淡く光だし鱗が生え竜人本来の姿に近づいていく。竜人化したシャルの魔力が高まっていくのを感じる。

シャルは謎の言語をすらすらと唱え続けている。

するとシャルの上空に魔方陣が浮かび上がった。


「これは…… まずはあの娘から殺してしまいなさい!」


女性は何かに気付いたのか魔獣にシャルを襲うよう命じて自身も魔方陣を展開させた。

ベルもそれに反応して防御魔法を展開しようとしたが女性の魔法の方が早く発動した。


「遅い! ライトニング」


女性は雷の筋をシャル目掛けて放つ。

その時上空にあった魔方陣から強い光が放たれてその場にいた全員の目が一瞬霞んだ瞬間

ダーン!!

大きな音と共に煙が舞い上がり辺りが見えなくなった。


煙が薄くなっていくとベルの目の前に何か巨大な影が見えた。

その影の正体は煙が無くなってハッキリした。

綺麗な銀色の毛を身に纏った巨大な狼だった。しかし魔獣とも違うその美しい狼の出現にベルも訳が分からなくなった。


「大丈夫…… 私が……呼んだの」


シャルはポツリとそう言った。

上空に出来た魔方陣はこの狼を呼び出す為のものだった。


「すごいよシャル! いつの間にこんなすごいこと!」


ベルもリンもダッドも知らなかった。

しかしこれでなんとかなるかもしれない。ベルは目の前にいる銀色の狼から感じるオーラはファナーカのように力強く感じたからだ。


「シャル あの魔獣達をどうにか出来る?」


「…… 多分…… 大丈夫…… ポチ…… 魔獣をやっつけて……」


ポチと呼ばれた銀色の狼は大きな遠吠えをあげた。

それはシャルの頼みを聞いた狼の力強い返事のように思えた。


遠吠えの威圧感に魔獣は気圧されてしまっていた。

ポチは遠吠えを終えると体を低くして獲物を狩る体勢になった。


それは一瞬の事だった。ポチは魔獣の1体を瞬時に噛み上げ胴体から真っ二つに噛み切った。


「神々の災いフェンリル…… まさか精霊召喚までしちゃう子がいたなんて」


女性は考えを巡らせていた。


同じ召喚魔法でも魔獣を無理矢理操って呼び出すのとは訳が違う。精霊召喚、世界の源になる全ての力には精霊と呼ばれる神に近い存在が世界に干渉して起こっている。火には炎の精霊の力が干渉していると言った具合に。

精霊召喚はそんな神に近い存在と契約を結びその力を使役するものだが神に認められる程の器が要求される。

魔法は精霊の力を少しだけ借りて起こすものだがその事象そのものをこちら側に呼ぶということは台風をいきなり目の前で起こすという位無茶苦茶なものだった。


この無茶苦茶な力と相対して自分も無事ではすまないと瞬時に判断すると


「今回はここまでのようね」


女性は魔方陣を目の前に出すと別の空間に消えてしまった。


「待って!」


ベルは女性が消えた場所に行くと目をつぶり黙り混んでしまった。


「ウゥ…… 兄ちゃん……」


ダッドが力なくうなだれる。魔獣はポチによって全て排除された。

ポチはシャルにすり寄る。シャルはポチの顔を優しく撫でながら


「ありがとうポチ…… でも……」


シャルの悲しそうな顔にポチも心配そうな目を向ける。


「みんな聞いて!」


突然ベルがみんなに向かって話はじめた。


「テッドが見つかるかもしれない!」


みんなの悲しい表情がベルの一言で驚きの表情に変わった。

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