動くギート
合格したベル達はロンベルトから直接制服を受け取りこの日は帰路についた。
入学式当日ベル達は村の入り口に集まった。
親達も見送りにきている。
ぞれぞれが挨拶を済ませるとファナーカは空間転移魔法で扉を出した。
扉を開けるとそこにはオルドーの魔道学校の前だった。
「便利な魔法だよなー ベルは出来ないのかー?」
テッドが羨ましそうに言った。
「父さんは行った事のある場所のイメージが大事って言うけど難しくて」
リンが先頭をきって
「あたしが一番ー」
と我先にとかけていった。
入学式はやはりベル達は目立っていた。
周りから奇異の目やヒソヒソ話が聞こえてきたがそんな事よりも初めての体験にワクワクしていて大して気にならなかった。
一番びっくりしたのは朝普通に送り出してくれたファナーカが担任として教壇に立っていた事だ。
「父さん!」
ベルのびっくりした顔にファナーカは
「ファナーカ先生だろ?」
とあくまで冷静に返した。
ファナーカが元勇者だった事は町でも噂になっていたし、魔法のスペシャリストが教師としてやってきたことに生徒達は盛り上がった。
周りの生徒達は魔物との生活に最初は戸惑っていたがベル達と一緒に生活していくなかで魔物に対する見方も変わってきたのだろう。
1ヶ月もするとベル達の事を悪く言う者はいなくなっていた。
町の人達も同じで初めは警戒していたがそれも最初だけだった。
リンの調合した薬草は効果抜群だと町の人達から絶賛されているし
シャルの動物の言葉が分かる力は乳の出の悪い牛の悩みを聞いて解決策を出したり言うことを聞かない牧羊犬の不満などを飼い主に代弁してあげるなど町にとっても協力的な彼らは好印象をもたれた。
だがそれを快く思っていない人物がいた。
商人のギートである。彼は表立っては動きを見せてはいないがある日店の応接室にオルドーの町には似つかわしくない不穏なオーラを放つ二人組を呼んだ。
「本当に大丈夫なんだろうな?」
ギートは不安げに二人組に聞いた。
すると赤いローブを目深にかぶった女性が
「あたしらの噂を聞いて依頼してきたんだろう? 貰えるもんさえ貰えれば仕事はきっちりしてやるよ」
自信満々に答える。横にいた全身フルプレートの大柄の男は一言
「魔物は皆殺す」
「あんたらの噂はこっちでも有名だ 実力を疑ってる訳じゃないんだが相手が相手なだけに少し心配で」
「確かに勇者様とは正面きってやりあいたくはないね なーに あたしらのやり易いようにやらせてもらうよ」
女性は何やら含んだ物言いで答えた。
「とんでもない魔力を持った子供…… 面白そうじゃないか」
また何かが起ころうとしていた。




