表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/415

第八十二話 現代文って答えの探し方微妙だよね


「……お前な? バスケ大好きは良いけど、学生の本分は勉強だろうが? きちんと勉強もしろ! なんだよ、小テスト赤点で部活参加出来ないって」

「……そんなの、浩之先輩にだけは言われたくないです……」

「なんか言ったか!」

「なんにも言ってません! と、とにかく、浩之先輩! た、助けて下さい!」

「……ったく。良いか? 毎日の予習・復習をしっかりやっていれば高得点とは言わないまでも、赤点を取る事は無い筈だ。聞いたぞ? お前、練習後もロードワークして、朝は朝で走ってるらしいな? そりゃ、疲れて勉強なんか手に付かないんだろ?」

「……ご飯食べてお風呂に入ったらバタンキューです」

「だろうが。そんな環境だったら、成績なんて悪くなるに決まってるだろ? きちんと勉強を継続してこそ、良い練習も――」



「……ねえ?」



「――出来る……どうした、桐生?」

 俺の言葉を途中で止めて、隣に座った桐生はドリンクバーから取って来たメロンソーダをずずずと啜り。

「……なんで私、ファミレスに連れて来られてるの?」

 ファミレスのボックス席に座ったまま首を傾げて見せる。なんでって……

「……いいか、桐生? 今、この目の前に座っているポンコツバスケ馬鹿後輩が小テストで赤点叩き出しやがったんだ」

「言い方! 浩之先輩、悪意しかないです!」

「シャラップ! ともかく、このままじゃコイツ、バスケ部の部活動に参加出来ない。つまり、結構なピンチだ」

「……そうね。大体話は聞いていたから理解しているわ。でもね? それと私がファミレスに来たのって、なにか関連性があるの?」

 きょとんとした顔のまま、そう問う桐生。なんでかって?

「いや、お前……可哀想だと思わないのか? このバスケ馬鹿からバスケ取り上げたら」

「そりゃ、思わないでは無いわよ? 川北さんがバスケットが好きなのは見たり聞いたりして知っているし、そんな大好きなバスケットが出来ないと可哀想だな~とは思うわよ? まあ……自業自得な感は否めないけど」

「うぐぅ!」

「まあな。結局、瑞穂の自業自得だ。だがまあ、こうやって頼られた以上、なんとかしてやりたいと思うのが人情じゃないか?」

 まあ、智美じゃないけど瑞穂は練習しすぎだとは常々思ってはいたからな。それなのに、練習に付き合っていた俺にも責任――は無い様な気もせんでもないが、だからと言って見捨てるのも寝ざめの悪い話ではある。

「……良い心がけね。それで? 結局、私はなんの為に呼ばれたの?」

「……こうやって頼ってくれるのは有り難いが、残念ながら俺には瑞穂を教えるだけのスキルはない」

 俺だって別に勉強が得意なワケじゃないし。

「だがな? 俺には強力な味方が付いている。入学以来、学年主席を維持し続ける才女が!」

 そう言って親指をぐっと上げた後、ぽんと桐生の肩を叩く。



「先生、お願いします」



「……用心棒じゃないんだけど、私」

「……っていうか、アレだけ偉そうに講釈垂れてたのに、結局人頼みって……浩之先輩、マジで格好悪いです」

 失礼な。適材適所と言ってくれ。


◆◇◆


「……まあ、良いわ。東九条君のやり方はどうであれ、私も川北さんがバスケが出来なくなるのは可哀想だと思うし……少しぐらいなら勉強を教えるぐらい、問題無いわ」

 そう言って綺麗な笑顔を見せる桐生。その笑顔をきょとんとした顔で見つめ、瑞穂は視線を俺に向けた。なんだよ?

「……浩之先輩」

「なんだ?」

「桐生先輩、天使ですか? 誰ですか、こんな優しい先輩を悪役令嬢とか言った輩は!」

「……誤解されやすいヤツではある。まあ、口は間違いなく悪い」

「……あら? なんだか急に教えたくなくなって来たわ」

「ひ、浩之先輩! 謝って下さい!」

「俺のせい、これ?」

「冗談よ」

 今度は苦笑を浮かべて見せて、桐生はメロンソーダを最後まで飲み干すとグラスを横に置いた。

「……それで? 一体、なんの小テストで赤点取ったの? っていうか、根本的に小テストで赤点なんかあるの? 毎日の予習復習をこなしていれば、問題ない点数が取れると思うんだけど……範囲も狭いし」

 心底不思議そうな顔をする桐生に俺と瑞穂は顔を見合わせてため息を吐く。

「……流石、才女」

「……ですね。私達ボーダーライン組とは根本的に考え方が違います」

「一緒にするなよ? 俺はギリギリでも落ちないの」

「わ、私だって毎回落ちてるワケじゃありません! 今回、たまたまですよ!」

「……喧嘩しないでくれる、話が進まないから」

「す、すいません……えっと、今回赤点を取ったのは……現代文です。再試験をして貰えることになったので、そこで六十点以上取れば合格です」

「……」

「……え、ええっと……」

「……現代文で赤点って……なんというか……」

「な、なんでですか!」

「数学とかならまだ分かるんだけど、現代文で赤点って逆に難しい気がするのよね? なにか書けば部分点が貰えたりするし……何点だったの?」

「……二十二点です」

「……」

「……」

「……」

「……し、仕方ないんですよ! っていうか、現代文って勉強しにくくないですか! ねえ、浩之先輩!」

「……まあな」

 正直現代国語、現国は俺も苦手科目の一つだ。いや、苦手という訳でもないし、成績が悪いわけでは無いが……波が大きくテストの点が安定しない。正直、何を勉強して良いか分からず、勉強してもしなくても一緒という感じがするから、ついつい勉強が疎かになりがちでもある。実際問題、『この時の作者の気持ちを答えよ』なんて問題があるが、あんなもん作者しかわかんねえと俺は思う。締め切りに追われてやけっぱちになってたかも知れないし、腹が減って死にそうだったかも知れない。

「……屁理屈此処に極まれりって感じだけど……まあ、言っている事は分からないでは無いわ。東九条君の場合は本を読まないからだろうけど……川北さんも?」

「……どっちかって言うと体を動かしている方が得意です」

「……でしょうね」

 俺と瑞穂の答えにやれやれと首を左右に振る桐生。なんだろう、俺らが悪いんだけど、そんな態度をされると若干居心地は悪い。そんな俺らをじーっと見つめた後、桐生はぽんと手を叩いて見せた。


「……そうね。それじゃ、追試対策も必要でしょうけど、その前に根本的な国語の問題をしてみましょうか? まあ……そうね。肩の力を抜いた、クイズみたいなものよ」


 そう言ってにっこりと笑い。


「勿論……東九条君もね?」


 ……巻き込まれ事故だろ、これ。


『面白い!』『面白そう!』『続きが気になる!』『っていうか続きはよ』と思って頂ければブクマ&評価などを何卒お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 現代文苦手の癖に私立文系狙いとかちゃんちゃら可笑しい まぁ言うて理系とか逆立ちしても無理筋か [一言] 一緒の学校に通いたい的なおねだりはまだかなあ
[良い点] こういう日常、好きです。 ドタバタしてるだけが高校生じゃないですからね…。勉強で悩んで、何だかんだ部活して、遊ぶのが高校生…。…僕は遊んだことないけど。(闇) 桐生さんが、手伝おうとす…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ