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第六十三話 たまにはツレとも遊びに行こうぜ!


「あれ? 浩之? なにしてんだよ、お前」

 屋上から降り、自分の教室にカバンを取りに帰る俺に掛かる声があった。

「藤田?」

「おう。お前、もう帰ったのかと思ったぞ? ホームルーム終わったらそそくさと教室出て行くし」

「カバン、おいてあっただろが?」

「置き勉かと思った」

「随分ダイナミックな置き勉だな、おい」

 カバンごとって。流石に俺だってカバンぐらいは持って帰るぞ? 弁当箱入ってるし。

「冗談だよ。カバンには全然気が付かなっただけだよ。んで? なにしてたんだよ?」

「あー……まあ、ちょっとな?」

「……」

「……なんだよ?」

「ま、まさか……告白……とか?」

「ちげーよ」

 むしろ真逆に近いかも知れん。後輩に詰められるなんて。

「そ、そっか。俺を置いてお前、一足先に大人の階段登ったのかと思ったぜ」

「付き合ったぐらいで大人の階段かよ」

「バカ、お前、付き合うって事はその後の事があるだろが! 何とは言わんが、ナニが!」

「……お前、最低な事言ってんぞ?」

 まあ男子高校生なら仕方のない所もあるが。

「っていうか藤田、お前は何してたんだよ?」

 コイツ、帰宅部だった筈だろ? なんでまだいるんだよ?

「俺はお前、ちょっと用事があってな?」

「ラブなやつ?」

「補習的なヤツ。補習は時間無いからって大量のプリント渡された。期限、来週末らしい……絶対、終わらん……」

 哀愁漂う目でそう言って窓の外を見やる藤田。ふ、不憫な。

「……ご愁傷様。まあ、それじゃ早く帰って勉強しろよ?」

「いや、流石に俺も今から勉強はちょっとしんどい。だからな、浩之! 遊んで帰ろうぜ!」

「いや、遊んでていいのかよ?」

 すげー量のプリント出されたんだろ? 遊んでる場合じゃないんじゃねーか?

「遊んでる場合じゃねーよ? でも、遊ぼうぜ!」

「……ある意味、清々しいな、おい」

 一周回って斬新だな、おい。

「……分かったよ。付き合おう」

 ……まあ、正直俺も今はあんまり直ぐに家に帰りたい気分ではないし、気分転換には丁度良いかも知れん。こないだ飯……っつうか、ワクドには食いに行ったけど、色々あって藤田と遊んでないしな。

「よっし! 流石、浩之! んじゃどこ行く? カラオケ? ゲーセン?」

「そうだな……カラオケはこないだ行ったばかりだし、ゲーセンとかどうだ?」

「うし! ゲーセンだな? んじゃ行こうぜ!」

 カバンを手に取り、嬉しそうに俺の肩に腕を回す藤田。やめろ、暑苦しい。

「やめろ。暑苦しいし、気持ち悪い」

「ひど! ま、いいじゃん! それじゃ駅前のゲーセンで良いか? 最近はまってる格ゲーあってさ! ちょっと練習がてら付き合ってくれよ!」

「はいはい。あんまり長時間プレイは勘弁な?」

「だいじょーぶ! 流石に俺も遅くまでは連れ回さんさ! それじゃ行くか!」

 意気揚々とそう言って教室を後にする藤田に続き、俺もその背中を追った。


◆◇◆


 駅前のゲーセンは放課後の時間帯という事もあり中々盛況だった。まあ、このゲーセン、格ゲーや音ゲーもあるけど基本はプリクラとかクレーンゲームメインだしな。

「んで? お前がはまってる格ゲーってのはどれだ?」

「アレだよ、アレ! 『オーランド・ストーリー』! 知ってるか?」

「いや、知らんけど……」

「元々、パソコンのゲームだったんだが人気に火が付いてな? そんで、家庭用に移植されてついには格ゲーにまでなったんだよ! 俺、パソコンゲーム時代からのファンでな!」

「……待て。パソコンゲームって……まさか」

「お前の想像通りだ、浩之」

「……どうやって買ったんだよ、それ」

 アレだろ? 十八歳未満お断りのヤツだろ、それ?

「ま、色々とルートがあるんだよ。お前だってパソコンぐらいあんだろ? やってみたかったら貸すけど?」

「……」

 正直に言おう。ちょっと、興味はある。だって、男の子だし。興味はあるけど……お前、今俺、桐生と二人暮らしだぞ? もしバレた日には……

「……いや、良い。遠慮しておく」

「ま、お前は賀茂や鈴木って云う美少女幼馴染が居るもんな~。別に三次元に逃避しなくても既に実生活がギャルゲーみたいなモンだよな」

「……そういうわけじゃないけど」

 いや、今その幼馴染関係で結構なハードモードなんですけど。ギャルゲーってこんな感じの展開ばっかなの? なんだよ、それ、めっちゃクソゲーじゃん。

「興味が出たら言えよ? いつでも貸してやるから」

 そう言って親指をぐっと上げる藤田。そんな日が来る事は……あると、良いな。興味あるし。

「それじゃ、オーランド・ストーリーは……っと。一杯だな」

「人気なのか?」

「パソゲー時代からのファンも多い作品だしな。此処まで混むのは珍しいが……」

「どうする?」

「んー……ちょっとだけ待っても良いか? もしアレなら帰っても良いけど……」

「……んな気回さなくても良いよ。あんまり遅い時間は無理だけど、少しぐらいは待つから」

「そうか? わりぃな」

「気にすんな。んで、どーする? レースゲームでもするか?」

「あー……いや、俺、此処で待ってるわ。良いか?」

「ああ。それじゃ俺、ちょっとその辺見て回って来る」

「そっか? それじゃ悪いけど……空いたら携帯鳴らすから、対戦プレイしようぜ!」

「おっけー。それじゃちょっと行って来る」

「あいよ」

 藤田にひらひらと手を振って、俺はゲーセンの中を歩く。格ゲー、音ゲー、スロット・パチンコ、メダルゲームのコーナーを順繰りに見て回り。

「あれ?」

 目の前にあったクレーンゲーム、そのプライズ品に目が留まる。

「……ははは。懐かしいな。なに? こんなのあんの?」

 クレーンゲームの中にあったプライズ品は、俺が小学生の頃に智美と涼子に付き合わされて見てたアニメ、『魔法少女クレヨン巫女ちゃん』の主人公、『相川ミミコ』のぬいぐるみだった。

「いや、でもアレ、十年ぐらい前のアニメだぞ? 今更、ぬいぐるみで出るのか? もしかしてよく似てるけど違うキャラ、とか?」

 クレーンゲームに張り付き、じっくりとぬいぐるみを観察する。んん……よく似てる気がするんだが……



「……うわー。男子高校生がちっちゃい女の子向けのアニメのぬいぐるみ見てる~。あれって、『大きなお友達』ってヤツ~?」



 と、唐突に後から声が掛かる。その声に慌てて振り返ると。



「よ、ヒロ。何してんの、こんな所で?」



 智美の姿がそこにあった。


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― 新着の感想 ―
[一言] かつて、スクールデイズというエロゲがアニメになった時、最終話がバッドエンドすぎるとして、差し替えられ。海外のアニメファンからは差し替えられた環境特集にボートが出ていたから Niceboat…
[良い点] 智美ちゃんにヘイトが集まってるんですかねぇ・・・ キャラとして寧ろ好きですが。 誰も悪くないけど、このままでもいられない。 その辺りが上手く描かれてて好きです。 [気になる点] 桐生さんフ…
[気になる点] どの面下げて元凶様がいらしたのでしょうか? [一言] おそらく読者からのヘイトの多くは今コイツに向かっている
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