第六十一話 皆が皆、爆弾を放り投げるから、こんな大炎上してるんだね。
今日で本作は初投稿から一か月! およそラノベ二冊分の文字数に……! 最近更新ペース遅くなっていて申し訳ないんですが、これからもよろしくお願いします。
「……なあ? なんで俺、お前に放課後呼び出し受けてんの?」
「昨日の夜、秀明から電話があったんですよ。『浩之さんに言ってきた。俺、智美さんに告白するから。お前も頑張れよ!』って。んでまあ、どういう事かちょっと事情を聞いておこうかと思いまして。バカだバカだとは思ってたんですけど、竹やりでヒコーキ落とそうとするほど、勝算の無い賭けするほどはバカな奴じゃないはずですし、アイツ。なら、なにかしらお三人の関係に変化でもあったのかと思いまして」
不満そうにそう言ってつま先でカンカンと屋上の床を叩いて見せる瑞穂。昼休みはにぎわう事の多い屋上だが、放課後の今の時間は人っ子一人おらずに閑散としている。そんな屋上で、『私、不満です』を隠そうともしないその態度に、俺――と、隣にいる涼子は困った顔を浮かべて見せる。
「み、瑞穂ちゃん? 怒ってる?」
「怒ってるっていうか……不機嫌ですね。そもそも、涼子先輩と智美先輩の喧嘩の原因が分かりませんし……茜は茜で煽ってるみたいだし、秀明のバカは猪突猛進してるしで、なんだか私だけ蚊帳の外みたいで……」
「か、蚊帳の外ってワケじゃないよ! ねえ、浩之ちゃん?」
「まあ……敢えて喋る必要はないかな~とは思ってたけど」
智美と涼子は当事者、茜は俺の妹で、秀明は智美の事が好き……ってなると、皆ある程度関係が深いが、瑞穂に関してはそこまで関係がある訳じゃないし。
「……本気で言ってます、浩之先輩? 私、智美先輩のグチ、滅茶苦茶聞いてるんですけど? 正直、おはようからおやすみまで暮らしを見つめられているみたいでウザいんですけど? 理由も分からず、『そうですね~』って相槌打つのもそろそろ限界なんですけど?」
……滅茶苦茶関りあったわ。ごめん、瑞穂。
「あー……まあ確かにお前が一番被害者かも知れんな。分かったよ。そんで? お前は何が聞きたいんだ?」
「全部……と、言いたいところですけど、概ね二点ですね。一つはなんで智美先輩と涼子先輩が喧嘩しているのか。こっちは私の生活に支障が出始めてるので早急に解決して頂きたいです。可能なら、仲直りのサポートもしますし」
「……いや、あのな? 智美と涼子の喧嘩の原因は言っただろ? 犬と猫だよ」
犬と猫、どっちが好きかで喧嘩になったんだよ。どっちに付いても解決しようがないだろうが。そう思う俺に、瑞穂はとても冷たい視線を向けた。
「……バカなんですか、浩之先輩? 本気でそう思ってるのなら秀明並みのバカですよ」
「……秀明の扱いが酷い。っていうか、本気でって」
本気じゃねーの? 犬と猫の言い争いだろ、コレ? そう思い涼子に視線を向けると苦笑を浮かべてこちらを見ていた。なんだよ?
「んー……そだね。瑞穂ちゃん、正解。私も智美ちゃんも犬と猫ぐらいで絶交までは行かないかな~」
「……マジか」
「当たり前だよ~。それこそ十年以上の付き合いだよ、私と智美ちゃん。むしろそんな事で本気で喧嘩なんかしないよ~」
……いや、お前ら本気でパッキンアイスで喧嘩してたじゃん。え? あれは幼いころだけなの? 今は大人になったの? お前らが? うっそだー。
「……あの日、智美ちゃんと一緒に帰ったんだ。それで、普通に仲直りしたんだけど……」
少しだけ言い淀む涼子。視線をちらりと俺に向ける。
「……なんだよ?」
「うーんっと……これって言っても良いのかな? 浩之ちゃんと……その……あの件」
「……あの件?」
「最近、私達が一緒に登校していない理由」
「……ああ」
許嫁の件か? 桐生がどういうかだが……でも、瑞穂だしな。秀明に『良い仲』って教えた茜の事だから、どっかで話が漏れる可能性は全然あるし……そもそもコイツ、こう見えて結構口も堅いし。
「……瑞穂」
「はい?」
「お前、口は堅い方だよな? 秘密とか守れる方か?」
「誰にも知られたくない事は、喋らないのが一番ですよ? つい、ポロっと口から漏れる可能性もゼロじゃないですし。でもまあ、喋るなと言われれば喋らない自信はあります」
「だよな。それじゃ……良いぞ、涼子」
「? なんです、一体?」
頭に疑問符を浮かべる瑞穂。そんな瑞穂に一つ頷き、涼子は言葉を継いだ。
「最近さ、浩之ちゃんと桐生さん、仲良いと思わない?」
「あー……そうですね。ちょくちょくお昼もご一緒させて頂きましたし、確かに仲が良いなって思って――」
沈黙。後、顔を真っ青にする瑞穂。
「――って、ま、まさか、浩之先輩、桐生先輩とお付き合いしてたりするんですかっ! え? そんなの聞いて無いんですけど!!」
「なんでわざわざお前に報告が要るんだよ。つうか、付き合ってねーし」
「報告要るに決まってるじゃないですか! 付き合ってるんだったら、私だって色々と戦略を変えて――って、え? つ、付き合って無いんですか?」
「付き合ってはない」
「……『は』って、なんです、『は』って」
「あー……その、な?」
……どうしよう。いや、言うって決めたんだけど、いざ言おうとするとなんか若干恥ずかしい。そんな俺をちらりと横目で見て、涼子が口を開いた。
「許嫁なんだよ、浩之ちゃんと桐生さん」
「……」
「……」
「……へ?」
「だから、許嫁なんだよね~。浩之ちゃんと桐生さん」
「ちょ、え、は? い、許嫁? い、いいなずけぇーーーーー!!」
「バカ! 声がでけーよ! 誰かに聞かれたらどうするんだよ!!」
「す、すみません! で、でも……え、ええ……」
しばし茫然とした様子で中空を見つめる瑞穂。待つことしばし、ようやく意識を取り戻したか、視線を俺に向けた。
「……良ければ理由をお聞かせ願いますでしょうか? 私の知る限り、許嫁なんて浩之先輩の今までの生活で影も形も無かったと愚考しますが」
「どんな喋り方だよ、それ。ホラ、俺の家って商売してるだろ? あー……その縁でだな? 桐生の親父さんと俺の親父が知り合いで、年も一緒だしって今に至る感じ」
借金云々は置いておこう。瑞穂だって茜の幼馴染だし、俺の親父にも当然あった事があるし……これ以上、親父の評判を貶めるのも可哀そうだし。
「……ちなみにソレ、皆知ってるんですか? 秀明も?」
そう言ってジト目を向けて来る瑞穂。皆って……
「知ってるのは智美と涼子、それに茜だな。今のでお前も入ったけど」
「……うーん……まあ、その三人なら私が一番最後でも仕方無いですかね……でも! そういう事は私にも教えて欲しいです! なんか仲間外れみたいで『や』です!」
「……悪かったよ」
でもいきなり、『許嫁出来ました~』って言いにくいんだよ。涼子と智美だってすげー驚いてたし。
「うー……まあ、言いにくいのは何となく分かりますが……まあ、その件については良いです」
そう言って瑞穂は視線を涼子に戻す。
「それで? わざわざそれを言ったって事は喧嘩の原因に関係あるって事ですよね?」
「そうだね。思いっきり喧嘩の原因に関係あるよ?」
「……ちなみに、どういった理由なんです? お聞きしても良いですか?」
「うん。そもそもその話はしなくちゃいけないかな~と思ってたし」
そう言って、涼子は視線を俺、瑞穂の順に向けて。
「――いつまでも『三人』じゃいられないよ、って言ったんだよ? 智美ちゃんに。うかうかしてたら、桐生さんに浩之ちゃん、盗られちゃうよ? って……『『私と智美ちゃん』と『浩之ちゃん』の二人と一人になるよ、ってね?」
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