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コミカライズ決定記念! 『ありがたいを、当たり前に』

コミカライズ記念&残業断ってまで四巻読むのを優先して下さった方が『彩音と浩之のイチャイチャが好き!』とおっしゃて下さったので。いや、残業を断ると会社との関係が悪化する可能性があるので私のは後回しで大丈夫ですよ?(笑) 冗談はともかく、名前を出すとご迷惑になるかもしれないので誰かは言えないですが、いつもありがとうございます!


……イチャイチャ分、ちょっと不足気味ですが……今回は仕様ですw


「なんか……随分慣れたよな?」

 例の『恋びっとぽいこと、しよ?』発言以降、今日も今日とて俺の膝の上に乗った桐生がそのままの姿勢で俺の顔を見上げてくる。

「何が?」

「この体勢だよ。初日のあの桐生は何処に行ったんだろ」

 今日だってチラチラとこっちを見てきて、俺が胡坐をかくと何も言わずに嬉しそうな笑顔を浮かべてぽふっと俺の膝の上に収まったもんな、桐生。初日の『あわあわ』は何だったのか、てレベルで慣れてきている。いや、毎日毎日緊張して俺の膝の上に乗られてもそれはそれでこっちも『あわあわ』しそうなんで良いんだが。そんな俺の言葉に、少しだけ桐生が不満そうにジト目を向けてくる。

「……なに、その不満そうな顔」

「不満って言うか……ええ、でも不満ね。貴方ね? 私が緊張して無いとでも思ってるの? 今だって心臓が破裂しそうなほどにバクバクいってるのに」

「……緊張してんの?」

 嬉しそうに膝の上、乗ってきたじゃん。緊張とは程遠い気がするんだけど……

「緊張はしているわよ。まあ、緊張って言うかドキドキしてるのだけど……ともかく、常の状態では無いわね」

 そう言って桐生が俺の胸に後頭部を当ててまるで猫の様にぐりぐりと擦り付けてくる。

「常の状態じゃないし、ちょっとだけ恥ずかしいわよ。そもそも私、誰かの膝の上に乗るのだって初めてだし」

「豪之介さんの膝の上とか乗ってないのか?」

 あの人の事だから桐生を膝の上に乗せてご満悦な表情浮かべてそうなもんだけど。いや、会ったこと無いから実際はどうか知らんが……あの溺愛ぶりを考えてると。

「そりゃ、小さいころは有ったかも知れないけど……そういうモノじゃないでしょ、『これ』って。お父様の膝の上と貴方の膝の上、同じな訳が無いでしょう?」

「……まあ、そりゃそうだよね」

「ええ。だから……いえ、だからこそ、かしら? 恥ずかしいよりも『嬉しい』が勝ってるのよ。貴方とこうやって触れ合っていられるのは……ありがたいわよ」

「大袈裟な」

 ありがたいって。そこまで良い物じゃないぞ、俺の膝の上なんて。

「そこは考え方次第だし……私にとっては充分、ありがたいは。知ってる、東九条君? 『有るのが難しい』って書いて『ありがたい』よ? 人との付き合いが壊滅的に苦手な私が、こうやってす、す、す……い、許嫁! 許嫁の膝の上に座って甘えてるのよ? こんなの、ありがたい以外の何物でもないわよ」

 そうやってにこやかに笑う桐生。うん、まあ……そこまで言って貰えるとこう……いや、嬉しいよ? 嬉しいんだけど、こう……照れるわ!

「でも……そうね、東九条君の言う通りかもね」

 にこやかな顔を一転、桐生の顔が思案顔になる。

「なにが?」

「いえ、緊張しているかどうかはともかく……この『ありがたい』が『当たり前』になるのはどうかと思ったのよ。そう言う意味では最初の私の方が良いかも知れないわね」

「……別にいいんじゃね?」

「良くないわよ。ありがとうが当たり前になると、そこに感謝が無くなるもの。貴方と一緒に居られる事、私本当に幸福な事だと思ってるから、だから――」


 最後まで喋らせない様、桐生のお腹に回した手に力を籠める。


「――あ」

「……お前が有難いと思ってくれるのは、その……嬉しいけどさ? 俺的にはこれを当たり前って思って欲しいんだよな」

「……」

「別に感謝が無くなって良いって意味じゃないぞ? 俺だってお前に料理して貰ったり、掃除して貰ったりしているの、感謝してるし。でもさ? これからまあ、長い時間を過ごしていくわけだし……その、なんだ?」

 巧くは言えないし、上手くは言えない。でも。


「俺的には――この関係が『当たり前』であって欲しい。そんな特別でもなんでもない、普通の事としてまあ……お前と一緒に居られれば良いかな~と……そう思う次第です」


 回した俺の手に、桐生の手が重なり、そのままぎゅっと力が籠る。

「……ねえ」

「……なに?」

「踊っても良い?」

「今?」

「ええ……ああ、でもやっぱり踊るのは後ね。だって」



 貴方の膝の上に座るなんて幸せ、手放すのは嫌だもの。



「……ねえ? これ、『当たり前』って思って良いのよね?」

「……まあ、うん……はい」

「ほんとにぃ? ほんとに良いの? ほんとに当たり前って思っていいの? 毎日毎日、これをして貰えるって思って良いの? 私――」



 期待しても良いの? と。



「……まあ、その……うん、ええっと……」

 嫌な訳じゃないよ? 嫌な訳じゃないけど……その……分かって! 言葉にするの、マジで恥ずかしいんですけど!!

「ふふふ……なに、その歯切れの悪い返答は」

「……恥ずかしいの。察しろ下さい」

「やぁだ! ふふふ! 東九条君の甲斐性無し~。こんな時ぐらいは格好良く言い切ってよ~」

 言葉だけ聞けば、不満そうなそのセリフを、満面の笑みで。



「――たくさん、二人で『ありがたい』を作ろうね? それで、そのありがたいをいっぱい、いっぱい、『当たり前』にしようね?」



 蕩ける様なその笑顔を見つめ、俺は黙って桐生のお腹に回した手に力を籠めた。



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