第四十三話 浩之君は男の子!
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俺の言葉に、しばし愕然とした表情を見せる藤田。が、それも一瞬、何時もの様にヘラヘラと笑顔を浮かべて見せた。
「んだよ~、浩之? まさか、両方キープとか言うんじゃないんだろうな? そんな事言ったら大親友の俺でもお前をぶっ飛ばす!」
「……いつから大親友なんだよ、俺ら。つうかお前、笑いながら物凄い事言ってんな?」
ちょっと怖いんだが。主に顔が。般若か、お前は。
「んじゃなんだよ? あ、アレか? よくある『幼馴染なんて兄妹みたいにしか思えねー。女として見れるか!』ってヤツか?」
「……」
「あれ?」
「……んなワケあるか。だってお前、良く考えて見ろ。あいつら、結構な美少女だぞ? それをお前、幾ら幼馴染だからって『女として見られない』?」
静かに……だが、確実にワナワナと震える俺。それはまるで力を溜める火山の様で。
「んなワケ、あるか!」
……そして、噴火。
「お、おい! 落ち着けよ、浩之……」
「大体だな? あいつら、俺んち来て風呂とか入るんだけどよ? そのまま俺の部屋に来たりするんだぜ? 『なんの漫画読んでるの~?』とか言って近くに来てみろ! シャンプーやらなんやらの良い香りがしてやべーに決まってんだろう! 俺だって正常な男子高校生だっつうの!」
「ひ、浩之!」
「しかもお前、『今日はヒロの部屋で寝る~』とか言ってくるんだぞ? お互い高校生だぞ? んなモンお前、寝れるワケねーだろうが! 俺の理性、マジで仕事してるぞ!? どんだけ社畜だよってレベルで!!」
本当に勘弁してほしい。切実に。
「お、落ち着け! 静まり給え!」
「……ふぅ……」
「……ひ、浩之?」
……落ち着いた。ふぅ……
「……まあ、そんな訳で異性として見ていないって事はないな。むしろ、異性としてガンガン見まくってる」
「……マジかよ。そんな風には見えないけど……」
「そんな風に見せて無いからな」
「なんで?」
「……色々あるんだよ」
「それ、聞かない方が良い話?」
「話して面白い話では無いと思うし、積極的に話したいとも思わない話。どうしてもって理由があれば、まあ、話さんことは無いが……そんな理由、お前にあんの?」
「好奇心以外はない」
「んじゃ話さねー」
「いいよ、それで。にしても……なんだ? お前も結構苦労してんだな? さっきの怒り方とか真に迫るものがあったし……」
「まあな。だからまあ、幼馴染って言ってもそんなに良いモノじゃないとだけは言っておく」
「……そっか。俺なんかあんな可愛い幼馴染が居たら絶対に幸せだと思ってたんだが」
「幸せは幸せだぞ? 毎朝美少女二人と登校出来るし」
最近は無理だが、小、中、高校一年まで一緒に通学してたんだ。十分に勝ち組人生と言っていいだろう。
「……どっちなんだよ、お前?」
「良し悪し、って所か。まあ、いいじゃんか。それより食ったか? 食ったらそろそろ帰るぞ」
「ちょ、待って! 後ポテトだけだから!」
そう言って紙の袋に入ったポテトを掻きこむ藤田……って、おい! 喉に詰まらせて目を白黒させるな! ちょ、まて! 水持ってくるから!
◆◇◆
「……お帰りなさい。遅かったわね?」
リビングのドアを開けると、そこにはソファに座って本を読んでる桐生の姿があった。そんな桐生に片手をあげて、俺はリビングの椅子に座りこむ。
「ただいま。ちょっと藤田と寄り道してた」
「……『お友達』と寄り道?」
「……」
「……なによ?」
「いや、もうお前の『私、友達いません』の自虐ネタを聞きたくないな~って」
「あら? それは残念ね。折角持ちネタにまで昇華しようと思っていたのに」
「なに目指してんの、お前?」
「別に何も目指してはいないわよ。ただ、純粋に楽しいし、嬉しいから」
「自虐ネタが?」
「自虐ネタを言って、聞いて貰える相手がいる、という事実がよ。その相手と同居してるのよ? 楽しいし……嬉しいに決まってるじゃない」
「……」
「照れてる?」
「ちょっとだけ。お前もだろ。頬、赤いぞ」
「ふふふ。まあね。流石にちょっと恥ずかしいと思ったわ。でも……嘘じゃないから」
「あんがとよ」
そう言って俺は頭をバリバリと掻く。こっぱずかしい事この上無いんだが。
「……まあ、この話は此処までにしましょう。それより大変だったみたいね?」
「なにが?」
「鈴木さんと賀茂さん。貴方の教室でひと悶着あったんでしょ?」
「……なんで知ってるの?」
「学校中……とまでは言わないけど、結構な噂よ? 交友関係の狭い私の元にまで届くんだもの。まあ、あの二人は目立つし、とても仲良しでしょ? その二人が喧嘩だなんて珍しい事になってるんだから、そりゃそれぐらいの話題になってもおかしくは無いんだけど……ちなみに、貴方の事も噂になってるわよ?」
「……マジか。どんなの?」
「『いつも通り、東九条が二人に言い寄られて困惑してる。爆発しろ』」
「……なにその噂。ゴシップ感が半端ない」
「まあ、それだけ平和って事よ」
「……俺、全然平和じゃねーのに」
「良いじゃない。美女二人に取り合いにされるなんて、男の甲斐性でしょ?」
「……その上、許嫁も美女ってか」
よく考えたら三大美女制覇じゃん。何それ、俺ってもしかしてハーレム王なの?
「あら? そう考えればそうね。凄いじゃない」
「全然、嬉しくないのが凄い」
何が嬉しくないって明日からの皆の視線が怖い。
「……それにしても不思議ね」
「なにが?」
「貴方、あの二人の幼馴染でしょ? どちらかと付き合うって言う選択肢は無かったの? 女性の私から見ても、二人とも魅力的だと思うし……きっと、貴方に好意を寄せていると思うのだけど?」
「……」
「どうしたの?」
「さっき、藤田とも同じ話をしたな~って」
「あら? そうなの? なんて答えたの?」
「俺が涼子と智美、どっちかと付き合うなんて事は絶対に無いって」
「……そうなの?」
「まあな」
「それは……理由を聞いても良い話?」
「それもさっき聞かれた」
「なんて答えたの?」
「話して面白い話では無いと思うし、積極的に話したいとも思わない話。どうしてもって理由があれば、まあ、話さんことは無い」
「……そう。ちなみに私が聞きたいって言ったら?」
「……正直、気分はあんまり良くない話だぞ? っていうか、俺――だけでも無いか。皆、格好悪い話だ。あんまり言いふらしたい話ではないし、聞いたら他言無用で頼むレベル」
「……」
「それでも聞きたい?」
「……そうね。ちょっとどうしようかなって思ってる。思ってるけど……私、貴方の許嫁よ? 聞く権利も……聞く義務も、あると思う。旦那の『浮気』のチェックは必要だし」
「……浮気って」
まあ……そう言われればそうかもな。将来、結婚する相手だもんな。過去の女性関係を詮索するのはどうなんだって意見もあるだろうが、俺だって桐生に男の影がチラチラしてたらあんまり気分はよろしくない。って、あれ?
「……お前、浮気は許すって言って無かった?」
「……言ったわね」
「んじゃ別に聞く必要なくね?」
「……」
「……」
「……う、うるさいわね! 良いじゃない! ちょっと格好付け過ぎたって思って後悔してるわよ! 良いから、キリキリ喋りなさいっ!」
「どわ! 分かった! 分かったから怒るな!」
ソファの上のクッションを振りかぶる桐生をどうどうと手で制し、俺はリビングの椅子から立ち上がる。
「……長い話にもなりそうだし、コーヒーでも淹れるわ。お前も飲むか?」
肩を怒らせながら頷く桐生に苦笑を浮かべ、俺はコーヒーを淹れる為にキッチンに向かった。
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