えくすとら! その二百三十二 東九条浩之取扱説明書
過日、悪役令嬢許嫁のコミカライズ二巻が発売されました!! これも皆様の応援のお蔭です。ありがとうございます!!
「ま、まあ浮気云々は置いておいて……確かに智美ちゃんだもんね? なんか遠慮なしに秀明とかおにぃを遊びに誘いそう。なんの意図もないけど、たまたま逢ったとか、暇だったからとかで」
秀明の言葉にドン引きしながらそんな事を口にする茜。そんな茜に、桐生が渋い顔をして見せる。なに?
「……そうかしら? 古川君はともかく……東九条君に関しては智美さん、本気で行くんじゃないから? これは別に古川君を馬鹿にしているという訳ではなく……」
そんな桐生の言葉に、茜はちっちっちと言わんばかりに指を振って見せた。
「……まあ、智美ちゃんと付き合いの浅い彩音さんは分からないかも知れませんが……その辺は大丈夫ですよ! だって智美ちゃんですもん」
「そうかしら? 正直……私と茜さんが逆だったら不味かったと思うわ。智美さんのことですもの。なんか一気に持っていきそうな気がしない?」
こっちをちらりと見てそんな事を言う桐生。いや、桐生さん? それは流石に馬鹿にし過ぎじゃない?
「……流石に俺、そんなに不義理じゃないんだけど?」
「ええ。勿論、貴方がそういう人じゃ無いのは分かっているわ。誠実で、私の事を大事にしてくれているのは知っているの。し、知っているのだけど……」
そう言って心持頬を赤く染めて、もじもじし出す桐生。なに? なんか言いたいの? そう思い、首を捻る俺に。
「だ、だって……男性は上半身と下半身で違う生き物なのでしょう?」
「桐生さん!? 待て、お前、どんな本で得た知識だ、それ!?」
とんでもない事言いやがった。何言ってんだよ、お前!? それ、禁書指定だ!!
「ほ、本じゃないわ!! そ、その……琴美さんが教えてくれたのよ!! 『良いですか、彩音さん。男性は頭とシモじゃ別のイキモノですからね? 油断してたら東九条先輩なんて簡単にぱっくんちょされますよ?』って!!」
「なに教えてんだ、あいつは!?」
マジでなに教えてんだよ、西島!? そして桐生!! そんな嘘情報を簡単に信じるな――
「……嘘なの?」
「……なに?」
「だ、だって……智美さん、スタイル良いじゃない? 私よりも……む、胸もあるし……」
「……コメントし辛い事を……」
「……昔、東九条君だって言ってたじゃない。智美さんと付き合ったらしたいことがあったって」
「……」
「だから……密室とかで、智美さんがこう……く、くっついたりしたら……」
心配そうな、少しだけ不安そうな桐生。そんな桐生に、何か言葉を発しようとして。
「ああ、大丈夫ですよ、彩音さん。だって智美ちゃんですもん」
そう言ってにこやかな笑みを浮かべて、茜は言葉を続ける。
「だって、智美ちゃん……おにぃと一緒くらいの『ヘタレ』ですから! そんな大胆な事、出来ませんよ!!」
熱い風評被害だ!
「誰がヘタレだ、誰が!!」
「え? おにぃと智美ちゃんに決まってんじゃん。幼馴染拗らせ界隈じゃん? 誰が私と瑞穂の睡眠時間を奪ったと思ってんの?」
「……すみません」
浩之、貝になります。
「だから彩音さんは心配しなくて良いと思いますよ? ヘタレの智美ちゃんはどんなにおにぃが好きだとしても自分から積極的なアプローチとか出来ませんから。そりゃ、多少はふざけてじゃれたりするかも知れないですけど……おにぃがその気になったら目を白黒させてなんにも出来ないと思いますよ?」
「……なるほど」
「ええ。それに……彩音さんが心配するのは智美ちゃんじゃないです」
「と、言うと?」
「涼子ちゃんの方が肉食系ですから。彩音さんが気を付けるのは涼子ちゃんの方です!!」
「……確かに」
「特に涼子ちゃんなんて罠まで張って、その罠に気付かない様に誘導しながらハメるタイプですし……」
「狡猾な頭脳を持ったライオンなんて、そんなの最強じゃない……」
「ですです。だから彩音さん! 涼子ちゃんからおにぃをちゃんと守ってあげて下さいね!!」
そう言ってにっこりと笑う茜に、感動した様な表情でそんな茜の手を握る桐生。え? 何見せられてんの、これ?
「茜さん……! ありがとう! 応援してくれるのね!!」
「もちろんですよ! そもそも、おにぃ、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ……とまでは言いませんけど、間違いなく情が深いのは深いんですよね」
「……わかりみが深いわ。そうよね! 東九条君って、基本優しいのよね!! 嬉しいんだけど……誰にでも分け与えるのはちょっと、なのよ。だからこそ、逆に雫さんが凄いと思うわ」
「ああ、雫の彼氏ってなんか聖人みたいな人なんですよね? おにぃはそこまでじゃないと思いますけど……でも、間違いなく裏切ったりとかはしない人間ですし。だからこそ! 彩音さんはおにぃが離れて行かなくすれば良いんですよ!!」
「ぐ、具体的にはあるのかしら!? 東九条君が離れて行かない方法が!!」
くわっと目を見開き、茜に詰め寄る桐生。そんな桐生を、『まあまあ』とばかりに手で押さえて。
「私が教えてあげますよ!! おにぃを生まれた時から知っているこの私……東九条茜が! 名付けて、『東九条浩之取扱説明書』!!」
「茜さん!!」
……なんの話だ、これは?




