えくすとら! その二百二十八 束縛系カノジョ
「……浮気って」
茜の発言にジト目を向ける桐生。うん、まあ……うん。
「な、なんですか、彩音さん! その目!! 浮気ですよ、浮気!! 秀明、折角私に逢いに来てくれているのに、北大路にバレるといっつもバスケに誘われて……秀明も秀明だよっ!」
桐生の視線に抗議の声を上げる茜。そんな茜の抗議に一瞬、『うっ』と息を詰まらせながら、それでも視線を秀明に向ける。
「……こんな事を茜さんは言っているけど? どうなのかしら、古川君?」
桐生の視線に、少しだけ気まずそうに秀明が頭を掻く。
「いや~……その、まあ……茜の言っている事も間違いでは無いと言いますか……確かに、京都に行った時に北大路とバスケをしたことはあります」
「……それは……う、ううん……ど、どうなのかしら、東九条君?」
困った様な顔をこちらに向けてくる桐生。う、ううん……これはまあ、どうなんだろう?
「……茜の気持ちも分からんでもない。確かに、折角恋人が逢いに来てくれたなら、そりゃ出来れば邪魔が入らずに一緒に居たい気持ちは分かる」
「……そうよね? 確かに、茜さんの気持ちも分かるわ」
俺と桐生の言葉に茜の目がキラキラと輝く。
「おにぃ、彩音さん!! 信じてた!! やっぱりバカップルの二人は良く分かってる!! そうだよねぇ!? 普通、彼女に逢いに来たら彼女を優先だよねぇ!」
「……なんかいきなり擁護したくなくなったんだけど」
「……奇遇ね、私もよ」
気が合うな、桐生。バカップル言うな、このバカ妹め。
「……ただ……ねぇ? 古川君の気持ちも……」
「……そうなんだよな。分からんでも無いんだよ」
なんかライバルっぽい関係ではあるが、普通に北大路と秀明の二人って仲良しなんだよな。遊びがバスケって言うのはちょっとどうかと思うが……まあ、そこに関してはともかく。
「俺だって桐生を放って……というのはちょっと語弊があるかも知れないけど、藤田と遊びに行くこともあるしな」
「それを言うなら私もよ。智美さんとか涼子さん、瑞穂さんとか理沙さんとか雫さんと遊びに行くこともあるもの」
そもそも茜、そこまで束縛系だったかな? いや、俺も妹の『女の子』の部分は知らんから、そういう感情もあるかも知れないけど……
「男同士の友情とかはあんまり認めないタイプだっけ、お前?」
俺の言葉にフルフルと首を左右に振る茜。
「別にそんなことまで言うつもりは無いよ? 秀明がこっちで友達と遊ぶのも全然問題ないし……友達との遊びを優先して、京都に来れないっていうのも別になんとも思わない。秀明には秀明の友人関係もあるだろうし、休日全部使え! 京都に逢いに来い! なんていうつもりは毛頭ないよ?」
まあ、女の子がいたらそこまで寛容になるかどうかは分からないけど、と秀明を一睨み。こえぇよ。
「ただ……折角京都にまで逢いに来てくれた時は、私の為に時間を使って欲しい。折角京都に来てくれたのに、逢える距離にいるのに……それでも、私じゃないことを優先されるは辛いよ、やっぱり」
「……」
「……」
桐生と目を見合わせて、小さくため息を吐く。
「……どう思う?」
「……物凄く気持ちは分かるわね。一気に茜さんの味方をしたくなったし……あの子、本当に可愛いわね? 貰って良い? 妹にしたいんだけど?」
「その内妹になるから、それまで我慢しとけ」
桐生にそう返し、俺は視線を茜と秀明に向ける。
「それでも秀明も北大路と遊びたいよな?」
「遊びたいっていうか……まあ、北大路とするバスケは好きなんで……茜には申し訳ないとは思うんだけど、やっぱりバスケはしたいかな、とは思いますね」
「ちなみに三人でバスケをするってのは?」
「……精神的に俺が死にますし、物理的に北大路が天に召される可能性までありますけど、それ勧めます、浩之さん?」
「……そうだよな」
仲悪いもんな、北大路と茜って。仲悪いって言うか、茜が一方的に毛嫌いしている可能性が高いが……そして、蹂躙されているのは何時だって北大路だ。
「……ちなみになんだが、秀明はどれくらい茜を放って北大路と遊んでんだ?」
「言い方悪いっすよ、浩之さん!! 茜を放ってってワケじゃないですけど……」
そう言いつつ、気まずそうに視線を逸らし。
「…………一時間っす」
「……は?」
「だ、だから! 一時間ですよっ! 京都の方に、時間貸しのバスケコートがあるんで……一時間だけ北大路とバスケしているんです!!」
「おま……それ」
「わ、分かっていますよ!! 折角京都に行ったのに彼女放っておいて――」
「ああ、違う。秀明じゃね」
そう言って俺はジト目を向けて。
「……お前な? 一時間くらい許してやれよ? 一時間くらいは良いだろうが」
愛が重い系のカノジョか、お前は。おい、桐生? お前もなんか言ってやれ。流石にこれは秀明がかわいそ――
「……桐生?」
「……い、妹になる……ぎ、義妹……そ、そうよね? い、何時かは茜さん、私の義妹になるのよね……」
「……俺が悪かったから、戻って来てくれない?」
頬に手を当てて、『やんやん』とばかりに体をくねらせる桐生にため息を吐く。俺が軽率な発言したけど……そろそろ慣れろよ、桐生も。知ってるだろ? 離すつもりはないの。




