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えくすとら! その二百二十二 ラブコメの定番っしょ!


「それで……どうかしらね?」

 あんまりにもあんまりな『ダブルデート』事件に、西島がアホみたいな顔をしながら『レベルたけー』といった後、俺らは普通にエアホッケーを楽しんだ。『エア』エアホッケーの練習の成果か――まあ、普通に運動神経の良い桐生の大活躍で、俺らチームの辛勝で終わった後、『ちょっと喉も乾いたのでジュースでも買いに行きます』という西島に、北大路が付いて行った後、ベンチに座った隣の桐生からそんな声が聞こえて来た。

「どう、とは?」

 なんの話だ? と首を傾げる俺に、桐生が呆れた様にため息を吐いて見せる。

「貴方ね……良い? これは『ダブルデート』なのよ?」

「どっちかって言うと俺らは保護者ポジションだけどな」

「う……ま、まあそうかも知れないけど!」

 実際、『二人きりは無理です!』という北大路についてきた形だし。そんな俺の言葉にコホンと一つ咳払いし、桐生は言葉を継いだ。

「まあ、確かに東九条君の言う通りでしょうね。でもね? 折角のダブルデートなのよ? これ、北大路君と琴美さんが進展しても良いのじゃないかしら?」

「あー……まあな」

 西島の事は……まあ、昔が悪すぎたというのもあるが、今では悪感情の類はない。まあ、普通に俺を粗食扱いしたりとか、桐生を洗脳しているとか、どこでもかしこでもいちゃつくなって言ってくるとか、所々カチンと来る事はあるが。え? 最後は俺らが悪い? そーかよ。

「北大路が良いと言って、西島も良いと言うなら……二人が恋人同士になるのも悪くないのか?」

 北大路は俺に憧れていると言ってくれているし、それを除いても可愛い後輩でもある。ある意味幼馴染でもあるし。そういう意味では北大路にも……なんだ? 幸せ? うん、幸せになって欲しい気持ちはある。

「……小悪魔的な所はあるけど、琴美さんは普通に良い子だと思うわ。距離的な問題はあるだろうけど……二人がお付き合いしてくれたら、私はちょっと嬉しいのよね」

「まあな」

「ゆくゆくは北大路君と琴美さん、古川君と茜さん、藤田君と雫さん、それに私と東九条君でカルテットデートとかもしたいし」

「……」

「あれ? し、したくないの?」

「いや、カルテットデートは良いんだけど……」

 それ、絶対『おまけ』が付いてくる気がするんですが。具体的には智美とか涼子とか瑞穂とか明美とか。

「カルテットデートで収まらない気がするんですが、それは……?」

「……まあね。でも、それはそれで楽しそうと思ったりもするのよね」

 そう言ってコテンと俺の肩に頭を預ける桐生。

「……また言われるぞ? 何処でもかしこでもいちゃつくなって」

「いいじゃない。今は二人きりだし」

「此処、ゲームセンター。むしろ今までの付き合いの中でも上位に入る人口密度なんだけど?」

「外野の声も視線も気にならないわ。そりゃ、少しははしたないかな~と思わないでも無いけど……」


 これは私の特権なの、と。


「いつでもどこでも浩之といちゃつけるのは私だけでしょ……?」

「……彩音だけだよ」

「ふふふ。嬉しい」

 そう言って桐生は俺の肩から頭を離して少しだけ寂しそうな表情を浮かべる。

「……名残惜しいけど、此処ではこれでおしまいね? はしたないし……みられるのはやっぱり恥ずかしいから」

「あー……そうだな」

 若干、残念だなとは思う。思うがまあ……

「……今日からまた、二人きりだしな」

 二泊三日のお泊り会は今日で終了。北大路は京都に帰るし、他の面々も今日は自宅に帰る。普通の生活が戻って来るし……まあ、なんだ。いちゃつきたくなれば……な?

「……そうね。確かに、家に帰ったら沢山甘やかして貰いましょう」

 にっこり微笑んで、桐生はベンチからたちあがると俺の方に視線を向ける。

「それじゃ、行きましょうか!」

「二人を迎えにか?」

 ジュースお願いしているし、此処で待っておこうかと思ったんだけど、迎えに行くのか? まあ、時間も勿体ないと言えば勿体ないし、それはそれで良いんだけど。そう思う俺に、桐生は顔の前で右手の人差し指を立てて『ちっちっち』と振って見せる。

「違うわよ。さっきも言ったでしょう? あの二人が恋人になるのは私も東九条君も反対では無いんでしょう?」

「まあ」

「それなら、此処は二人きっりにしてあげた方が良いじゃない? その方が仲も深まるだろうし」

「……ああ」

 漫画やアニメとかでよくあるヤツね?



「ラブコメの定番でしょう? ダブルデートで途中からはぐれちゃって……それで、二人の仲が急接近するって!!」



 にっこりと笑って俺の手を取って『さ、いこ?』と微笑む彩音に。

「……なあ?」

「な、なあに?」

「これ、お前が俺と二人きりになりたかっただけって思うのは……自意識過剰か?」

「……」

「……」

「……もうちょっと別の所で発揮してよ、そのカンは」

 頬を真っ赤に染めてそう言った彩音が無茶苦茶可愛かった事を付け加えておこう。まあ、俺も嬉しいし。


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