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えくすとら! その二百二十一 アツい風評被害


「……え、ええっと……」

 あんぐりと口を開けた西島――と、目をパチクリとさせる北大路。うん、気持ちは分かる。気持ちは分かるよ、二人とも。

「…………すみません、ちょっと理解できないんですけど? ええっと……その日のダブルデートのペアは東九条先輩と彩音先輩……」

「では、無いわね」

「……では、無いんですか……」

「ええ。さっきも言ったでしょう? その日は瑞穂さんと東九条君がペア、私と理沙さんがペアだったのよ」

「ええっと……」

 桐生の発言にうんうんと唸る西島。しばしそう言って唸っていたが、やがて、何かに気付いたかの様にはっと顔を上げておそるおそる。



「…………そういうプレイですか? うわぁ……レベル、たっかー……」



「違う! 何言ってんだ、お前!?」

 なんだよ、『プレイ』って! 後お前、ドン引きした顔すんな!! そして、どっちかって言うとレベルは低いだろう!? 後、モラル!!

「別に私と東九条君に特殊性癖があったわけじゃないわ。あれは……そうね? 言ってみればお礼、みたいなモノかしら」

「お礼?」

 西島の言葉に『ええ』と桐生は頷いて。

「瑞穂さんが……その、怪我をしてたのはご存じかしら?」

「川北さんが怪我……ああ、そう言えば松葉杖ついてましたね。なんでしたっけ? 骨折じゃなくて……」

「靭帯ね。靭帯損傷で松葉杖生活をしてたのだけど……まあ、その怪我のせいで色々とあって……バスケの大会に出たのよ」

「バスケ大会……ああ、あの市民大会!」

「ええ」

「……ええっと……どういう化学変化が起きたら川北さんが怪我をして、東九条先輩と彩音先輩がバスケ大会に出る事になったんです?」

 西島が首を捻って疑問を呈す。そんな西島の仕草に桐生がこちらにチラリと視線を送って来たので、俺は首を左右に振って口を開く。

「そこの所は置いて置け。どうしても気になるなら、瑞穂に直接聞くんだな」

 まあ、あいつもそこまで気にして無いかも知れないが……それでも、あの時は随分落ち込んでたしな。今は笑い話にもなっているんだし、きっと大丈夫なんだろうけども。

「なるほど。プライベートな話、ですか?」

「どちらかと言えばプライバシーの方かしら? あまり無神経に話をすることでは無いと思うわね」

 俺の意見に全面的に賛成なのか、桐生も頷きながら口を開いて言葉を再開する。

「まあ、そんな事があって藤田君とか理沙さん、雫さんとも仲良くなったのよ。そ、それで……」

 ちらっとこっちを見て頬を赤くして。



「その……ひ、東九条君とも……し、進展というか……な、仲が前より良くなったというか……」



 ……うん、恥ずかしいのは分かる。分かるけど、こっちをチラチラ見て小さく微笑むのはやめて? 可愛いよ? 可愛いけど、前、見て? 西島、『うへぇ』って顔、しているから。

「そ、それで……その……こういう言い方はアレなんだけど……わ、私たちの仲が進展したのは……瑞穂さんの怪我のおかげ、というか……」

「……ああ、そういう事ですか。アレですね? 文化祭効果」

「なにそれ?」

 あんの、そんなの?

「まあ、文化祭に限った話じゃないですけど……ほら、クラスで一つのイベントを一生懸命取り組んだりした後って、雨後のタケノコ並みにカップルが乱立するじゃないですか?」

「……ああ」

 そう言われてみれば……まあ、確かに中学の文化祭の時とかもそういう事あったし、去年の文化祭もあった様な気がする。『なんか今までより距離感近くね?』と思ってたらいつの間にか恋人になってました、みたいな事は確かに良くあるよな。

「ですが……東九条先輩と彩音先輩って許嫁で、それに同棲していましたよね?」

「そうね。あの時は同居、の方が近かった気もするけど……」

「だとしたら、川北さんの怪我の『おかげ』はちょっと違う気もしますね。まあ、有森と藤田先輩は完全に文化祭効果でしょうけど……」

「……まあ、そうね。確かに、私と東九条君はその時から……な、仲良しだったし? ショートカットにはなっただろうけど、直接的な原因かと言われたらそうじゃないかも知れないわ。でもね? それでも……こう、やっぱりちょっと申し訳無いと思ったのよ」

「そこで申し訳ないって思うのが彩音先輩の良さなのでしょうけど……まあ、良いです。それで?」

「瑞穂さんは東九条君とデートがしたいって。でも、流石に私もそれはイヤだったのよ。それで我儘――」


「瑞穂にデートをしないって言ったのは俺の意思だから。別に桐生の我儘じゃないぞ、西島」


 言い掛ける桐生を声で制す。別に桐生の我儘で瑞穂とのデートを断った訳じゃない。俺がイヤだから断った――なに、西島? その顔。ああ、あれか?

「別に桐生を庇っているわけじゃないぞ?」

「いや、そりゃそうでしょう」

「そう――へ?」

 あ、あれ? また無自覚にイチャつくなみたいな顔じゃないの、今の? そんな俺の表情に、『ああ』と西島は頷いて。

「変な顔してました、私? いや、そりゃ当たり前じゃないですか? 川北さんは可愛いらしい顔立ちしてますけど、東九条先輩、こんな美人の彩音先輩の彼氏でしょう? 普通に断るでしょう?」

「……はい」

「それなのに……こう、ドヤ顔で『俺の意思だから!』とか言って来たから……何言ってんだろう、この人って思っただけですよ?」

 うぐぅ!? ま、まあ確かに西島の言う通りだけども! っていうか別にドヤ顔なんかしてねーよ!!

「ん? でもそれじゃなんで藤原さんと川北さん、東九条先輩と彩音先輩でダブルデートしているんですか?」

「瑞穂さんが言ったのよ。それなら私も参加して良いって。でも、私も東九条君以外の男の子とのデートはイヤだったから……そしたら、藤原さんもってなって……」

「……」

「……」

「……言いたいことはいっぱいありますけど……それ、デートじゃないですよね?」

「……四人で遊びに行ったが近いわね」

 桐生の言葉に西島は頷いて。



「……っていうか、川北さんもパねーですね。彼女同伴で相手とデートって……脳が焼き切れそうなんですけど、私だったら」



 やっぱり東九条先輩の周りはレベル高いですね! なんていう西島に俺はため息を吐いた。風評被害が熱すぎる…… 


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