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第三十二話 幼馴染との昼食会


「おーっす。おはよ、ヒロ。元気?」

「おはよ。まあ、元気っちゃ元気かな? 涼子は元気か?」

「元気よ。『浩之ちゃん、元気してるかな?』って心配してた」

 登校してすぐ、智美から声が掛かるのはこの一週間での決まり事みたいなもんになってきている。小学校も中学校も、ずっと一緒に通っていただけに『朝、学校で一番に挨拶をする』というのが凄く違和感を感じる。

「……なーんか変な感じだよね?」

「なにが?」

「『朝、ヒロに学校で挨拶する』ってのが」

「……」

 こいつもか。ま、俺らはちっこい頃からずっと一緒の幼馴染だしな。やっぱり違和感はあるよ。

「……その内、慣れるんじゃね?」

「……そうかな? なんか私、何時までも慣れない気がするよ。ヒロがいない日が毎日、毎日続くのって」

「そうは言ってもお前、俺らだってずっと一緒なワケじゃねーだろうが。大学になったらそれこそ日本全国……かどうかはともかく、離れ離れになるんだし」

「それは……そうかもだけどさ」

 そう言って俺の机にぐでーっと寝そべる智美。下から覗き込む様にこちらを見る智美の表情は不満さしか表してないんじゃないかってぐらいに頬が膨らんでいる。

「……そんな顔すんなよ」

「……そうだね。あ! そうだ! 忘れてた! ヒロ、今日はお昼は? 用意している? 愛妻弁当とか」

「声が大きい! あー……今日は購買でパンでも買おうかなって思ってたところ」

「そっか。それじゃさ? 一緒にご飯食べない? 久しぶりに、涼子も入れて三人で! 今日、涼子お弁当の日なんだ!」

「そうなのか? んじゃ購買で買って……屋上でも行く?」

「その必要はナッシング! 涼子、いつもの癖で作り過ぎちゃったんだって。だから、ヒロは弁当の処理係に任命されました」

「涼子の弁当の処理係なんて幸運な役回りなら喜んでお受けする」

 旨いしな、あいつの料理。

「にしても、あいつも結構抜けてるよな。作り過ぎるなんて」

「まあ、涼子だって慣れて無いんだよ。ヒロのいない日常に」

「そうか?」

「私より付き合い長いしね、涼子の方が」

「まあ、家も隣同士だし、生まれた時から知ってるっちゃ知ってるけど」

「だから、余計にじゃない?」

「……慣れるしかねーな、それも」

「まあね。それじゃ、ヒロ! お昼に屋上に集合ね!」


◆◇◆


「はい、浩之ちゃん。唐揚げ」

「さんきゅ……ん、上手い。流石。あ、おにぎり一個貰うぞ?」

「どうぞ。こっちがおかかでこっちが昆布だよ」

「んじゃ、おかかで」

「はーい」

 昼休み。屋上に上がってみると、智美と涼子は既にレジャーシートを敷いて待っていてくれた。礼代わりに買ったミルクティーとスポーツドリンクをそれぞれ涼子と智美に渡し、俺は涼子の手作り弁当に舌鼓を打つ。相変わらずうめーな。

「どう? お味の方は」

「相変わらず旨い。絶妙な塩加減だし」

「そうだよね~。涼子の料理、本当に美味しいよね。ただ、文句をいう訳では無いのですが、もう少し塩気が多ければこのおにぎりはもっと美味しくなると思うのです」

「なんで敬語なんだよ。つうか、文句があるなら食うな。俺が全部食うから」

「も、文句じゃないってば! その……昔はもうちょっと塩気が強かったかな~って」

 そうか? 涼子の料理が塩辛いなんて思った事はないが……そう思い涼子の方に視線をやると、苦笑を浮かべた涼子と目があった。

「……智美ちゃん、正解。ホラ、昔は浩之ちゃんも智美ちゃんもバスケしてたでしょ? だから、試合後のお弁当とかは気持ち塩分多めに作ってたんだ。走りっぱなしのスポーツだし」

「……マジ?」

 そんな気を遣ってくれてたの?

「って言っても、ほんの少しだよ? むしろ智美ちゃん、良く気付いたね? 言われても『そうかな?』って思う程度の分量だったのに」

「ふっふっふ~。神の舌を持つ女と呼んでくれたまえ。ヒロとは違うのだよ、ヒロとは!」

「喧しいわ」

 いや、気付かなった分際で偉そうには言えんのだが……そうなんだ。そりゃ知らんかったわ。

「……なんか悪いな。気付かなくて」

「ううん、良いよ。美味しいって思って貰ったらそれで構わないから」

 俺の謝罪にふんわり微笑んで首を左右に振る涼子。エエ子や。

「さ、そんな事気にしないで浩之ちゃんも智美ちゃんももっと食べて! 折角――」


「浩之先輩!」


 突如、屋上の扉がバーンっと音を立てて開く。この小喧しい声は瑞穂だな?

「……なんだよ?」

「あー! また涼子先輩のお弁当食べてる! ずるい!」

「別にずるくねーだろ」

「ズルいです! 涼子先輩ー!」

「……瑞穂ちゃんも座って食べる?」

「はい! ご相伴に……っと、そうじゃなかった! 浩之先輩に用があったんです!」

「……なんだよ? もしかしてバスケの誘いか? それは流石に面倒くさいぞ?」

「ちが――まあ、違わないんですけど、今日は違いますよ! 先輩、桐生先輩と仲良しなんですよね?」

「……」

 答えにくい質問を。

「……前も言ったろ? 弁当を一緒に喰う仲だ」

「じゃ、親友って事ですね」

「まて。なんでそうなる」

「だって桐生先輩、誰かと一緒に居る所見た事無いですもん。しかも一緒にお弁当まで食べるなんて、そりゃもう親友でしょ」

「……仲は悪くは無いと思う。親友かどうかはともかく。それで? どうした?」

「ああ、いやね? 私、此処に来る前に校舎裏でパン食べてたんですよ」

「……なんで校舎裏? あんな人気のない所で」

 なに? コイツ、もしかしてクラスに友達いないの?

「ほら、あそこ、告白のスポットじゃないですか。だから、ちょっと『きゅんきゅん』分を補給したい時にこっそりあそこに隠れて――」

「趣味が悪すぎだろ!」

「冗談です。流石に人が来たら退散しますよ。今日はちょっと色々疲れてたんで、一人になりたかったんですよね~」

「……なんかあったか?」

「大丈夫です。大丈夫ですから、そんな心配そうな顔しないで下さい。ホント、ちょっとしたストレスでイライラしてたんで、友達と話して感じ悪くなっちゃうかも知れないんで一人で居ただけです」

「……そっか」

「ご心配ありがとうございます。でも! 言いたいことはそれじゃ無いんです! 私が校舎裏に居たら、桐生先輩が来て!」

「桐生が?」

「そうなんですよ! ほら、あそこって告白スポットで、桐生先輩って超美少女じゃないですか! だから、あ、これは絶対告白だと思ってですね」

 ……桐生に告白、か。なんだろう? 別に桐生が誰に告白されても文句は言えんが、あんまり面白くな――



「でも、ですね? 桐生先輩の後に来たのって、女の先輩だったんですよ。しかも三人で、ちょっと怒ってるみたいで……あれ、喧嘩じゃないですかね? 一応、浩之先輩の耳にも入れて置こうかと思いまして。『あの』桐生先輩に喧嘩売るって、生半可な気持ちじゃ怖くて無理ですし、そう思うときっとガチな方で……ヤバくないですかね、コレ?」



 ――なんか、一気にきな臭くなってきたぞ、おい。


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