えくすとら! その二百十六 やってきたぜ、ゲームセンター!!
北大路の案を採用した俺たち四人は、近場のゲーセンに足を運んだ。まあ、『ゲーセン』とはいえ、先日桐生と行った『がっつり』したゲーセンではなく、大型ショッピングモールの中のゲーセンだが。
「なんで此処にしたんだ、西島?」
ゲーセンというアイデアを出したのは北大路だが、なんせコイツ、京都から来ている訳で土地勘はない。ならば、と此処で提案したのは西島だった。そんな俺の言葉に、西島はにっこりと笑って口を開く。
「ゲーセン自体はいいアイデアだと思うんですけど、流石にずっとゲームは出来ないかな~って。だってそうじゃないです? 流石に一日中ゲームをする訳には行かないじゃないですか? 無茶苦茶ゲーム好きならともかく……あ! 北大路君、ゲームセンターって良く行くの? 行くんだったらごめんだったけど……」
しゅんとした西島の表情に、北大路は首を左右に振って見せる。
「あー……こないだ浩之さんとか秀明とか桐生さんとか……あと、茜さんと行ったのが初めてやから、そない行った事はないかな?」
「よかった~。ずっとバスケばっかりしてたタイプっぽいし興味ないかな~って思ったし……北大路君。女の子とデート! とかあんまり興味無さそうだし?」
少しだけ揶揄うように笑んで見せる西島に、北大路は苦笑を浮かべて見せる。
「そないな事はないで? 今日の……で、『デート』も楽しみやったし」
「嬉しい事言ってくれるじゃん! でもまあ、そういう訳ならゲーセン単体よりも、こういったショッピングモールの方が良いかな~ってね? ずーっとゲームセンターも飽きるだろうし、お腹空いたらフードコートとか、一階のレストラン街に行っても良い。ウインドショッピングはちょっとって言ってたけど……ほら、此処、スポーツ用品店も入っているしさ? それなら北大路君も楽しめるんじゃない?」
西島の言葉に、桐生が『ほぅ』という感嘆のため息を漏らして見せる。
「……驚いたわね。琴美さん、色々考えているのね。凄いわ!」
桐生の誉め言葉に『えへへ』と頬を掻きながら西島が少しだけ照れた顔をして見せた。どっちかっていうとスレた……っていうと怒られるか。なんか斜に構えてる感のある西島のその表情は年相応で可愛らしいものがある。実際、北大路の頬も赤いし。
「そんなに褒めて貰う事じゃないですけど……でも、ありがとうございます、彩音先輩」
嬉しそうに緩む西島同様、桐生の頬も嬉しそうに緩む。あー……なんか姉妹みたいだよな、こいつら。性格的にも似てるし。
「ま、それじゃ行くか? ゲーセン。時間も豊富って訳でもねーだろうし。帰りの新幹線もあるんだろ?」
「あー……まあ、はい。言うて遅い時間なんでまだまだ大丈夫ですけど……」
「盛り上がってもっと早くから遊んどけば! ってならねーようにだよ。ほら、行くぞ?」
そう言って三人を連れだってゲームセンターの中へ。通路に面した所にはクレーンゲームや……ミニクレーンっていうのか? なんかちっさいクレーンゲームが所狭しと並べてあり、店の奥の方にはメダルゲームや、カードを使って遊ぶゲームが鎮座している。物珍しそうにきょろきょろとゲーセン内を見渡した北大路がこちらに視線を向けてくる。どーした?
「浩之さん? 此処ってゲームセンターなんですよね?」
「そうだよ。見たら分かんだろうが」
ゲームしかねーじゃん、此処。そう思う俺に、北大路は首を捻って。
「格闘ゲームは無いんですか?」
「なんだ? ハマったのか、格ゲー?」
お前格ゲーは……ああ、いや、そうか。茜をボコボコにしてたな、お前。レバガチャで。
「ハマってはないんですけど……なんかゲーセンって言ったら格ゲーのイメージが……」
「平成初期のゲーセンのイメージじゃねーか、それ? 最近のゲーセンでは格ゲーはあんまり置いてねーぞ?」
いや、俺が藤田と行くような『ガッツリ』なゲーセンにはあるんだよ、格ゲー。でもこういう……何て言うんだろ? ショッピングモールに入ってるようなアミューズメント施設っぽいゲーセンにはあんまりあるイメージないんだよな、格ゲー。その癖、奥まった所にはスロット台とか置いてあるのに。やっぱアレか? 格ゲーってイメージ悪いのか? 不良のやるもの、みたいな? そういや、茜もリアルファイトしそうになってたしな~。お兄ちゃん、悲しい。
「……そうですか」
「……本当にハマったのか、格ゲー?」
心持しょんぼりする北大路にそう声を掛けると、北大路は首を左右に振って見せて。
「俺、格ゲーはちょっと自信があったんで……恰好ええとこ、見せたろかな~って」
「それは流石にデート向きじゃないと思います」
北大路? 流石に格ゲーはあんまりデートに向いてないと思うぞ? こう、もうちょっとあんだろ? つうかお前、まさかあのワンプレイで自信持ったんじゃねーよな? アレはまぐれだぞ、まぐれ!
「……それはもうちょっと修行してからにしろ。格好いい所見せたいんだったらな」
にしても……ゲーセンまでがプランで後はノープランか~。まあ、バスケばっかりやってた北大路だしな。そら、仕方ないとも言えるんだが……
「あ、あの~」
これからどうしようか、と悩んでいると俺の右隣から小さく手が上がる。桐生だ。
「桐生? どうした?」
「そ、その……何にも予定が決まって無いんだったら……」
そう言って桐生が指さした先にあったのは。
「ちょ、ちょっとアレ、やってみたいかな~って」
桐生が指差した先にあったのは『太古の鉄人』という、何故か原始人っぽい恰好をした太鼓のキャラクターが楽しそうに笑っている、和太鼓っぽい筐体をした音ゲーだった。




