表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

407/418

えくすとら! その二百十五 きっと、最高のデートに


「ま、まあ北大路君のはともかく!! 何処に行こうかしら!!」

 なんとも言えない空気の中で、一番に声を上げたのは意外にも桐生だった。まあ、このメンツの中で西島の次――もしかしたら、西島より乗り気かも知れん桐生らしいっちゃらしいが。

「……え? 俺、なんか変な事言いましたっけ?」

 対して北大路はきょとん顔だ。北大路……いや、本当にすまん、ウチの妹が狂犬で。

「……大丈夫だ、北大路。お前はまだ間に合うから。これから徐々に慣れて行けば良い」

「ひ、浩之さん? なんでそんな孫を見るおじいちゃんみたいな目で俺の事見てはるんです?」

 益々訳が分かんない、という顔を浮かべる北大路の肩をポンと叩く。この話は止めよう、北大路。建設的じゃない。そんな俺の視線の意味を悟ったのか、北大路は曖昧な顔で頷いて見せる。

「ええっと……ほな、ゲーセンとか……どないでしょうか?」

「ゲーセン? ゲーセンって……ゲームセンターの事?」

 北大路の言葉に、西島が首を捻る。そんな西島に、北大路は頷いて見せた。

「ええっと……その、なんやろ? 遊園地とか動物園は定番っちゃ定番なんやろうけど、流石に今からやったらあんまり時間が無いかな~って。映画も無しや無いやろうけど、皆さんの好みも分からへんし……この間みたいにアラウンドワンでバスケ……っていうか、運動系は西島さん、しんどいやろ? かといってどっかのモールとか行ってウインドショッピングいうのも……なんかちょっとかな~って」

「……だからゲームセンターなの?」

 西島の言葉に、北大路が自信なさげに言葉を続ける。

「ゲームセンターなら、色んなゲームあるやん? 格闘ゲームとかはともかく、レースゲームとかなら楽しく遊べるかな~って。リズムゲームとかも後ろで見てて楽しそうやな~って思うし。それに……ゲーセンやったら対戦も出来るやん? エアホッケーとかだったら浩之さんと桐生さん、俺と西島さんで対戦とかもエエかもって思ったんやけど……」

 だ、ダメかな? なんて自信なさげに呟く北大路。そんな北大路に、黙って下を向いていた西島は徐に顔を上げて。

「北大路君!」

「は、はいい! いや、やっぱ駄目やんな!? 俺、デートとか経験無いし、こうやったらええかなって思ったんやけど……さ、最近の若い人の遊びとか分からへんし!! 情けない話やけど、西島さん、デートコース決めてくれはっ――」



「――合格!! 大合格だよ、北大路君!!」



「――たら……え? ご、合格?」

「あー、ごめん。合格はちょっと感じ悪かったカモ。何様だって話だよね?」

 そう言ってペロッと舌を出して恥ずかしそうに頬を掻く西島。

「……北大路君の考えてくれたデートコース、凄く良いなって思うよ?」

「へ? え、ええ!? ほな……」

「うん! ゲームセンター、凄く楽しそうだし! 何より、私の為に……って、言って良いよね? 北大路君、私とのデートを楽しみにしてくれていたって認識で問題ない?」

 西島の言葉に、北大路が思わず言葉に詰まり――そして、赤面。少しだけ気まずそうに、先程の西島の焼き直しかの様に頬を掻いて見せる。

「……その、折角の『デート』やし。西島さんはその……か、可愛いし? そら、デート出来たら嬉しいから……」

「それで、考えてくれたんだよね? 私が楽しめる、デートコース」

「……せやね。やっぱり俺だけ楽しんだらアレやし、やっぱり西島さんにも楽しんで貰えたら思うて……」

 北大路の言葉に、西島はにっこりと微笑んで。



「……うん! その気持ちが凄く嬉しい!!」



 嬉しそうに……つうか、だらしなく、だな。だらしなく『えへへ~』と笑った西島、何を思ったか北大路の腕にぎゅっと抱き着いた。西島の、その、ええっと……胸が、北大路の腕で『むぎゅ』と形を変えて、その変化に合わして北大路も顔色を真っ赤に変化させる。

「に、ににににににに西島さん!? え、ちょ、ま、まってーな!?」

「なーに? 顔真っ赤にさせて~?」

「ニヤニヤ笑うのやめてーな!? 分かってんやろ!?」

 面白そうにニヤニヤ笑う西島に、慌てまくる北大路。なんかラブコメ見ているみてーだなと思っていると、俺の腕にも感触が。

「……何してるの、桐生?」

「……西島さんを見て、鼻の下伸ばしていたから。羨ましいかと思って、私もしてみたのよ。なんだったかしら……ああ、『当ててるのよ』?」

 俺の腕に抱き着いて、じとっとした目を向けてくる桐生。いや、別に鼻の下を伸ばしているとか、羨ましいとか思ってないとか、色々と言いたいことはあるのだが。



「……当てて、る?」



「……」

「……」

「…………胸か背中か分からないとか言ったら……ぶつわ」

「い、言ってないから!!」

 やば、失言だった!! ち、ちゃうねん!! 別に桐生の魅力はそこじゃないねん!! っていうか、桐生!! ほら! 俺なんか見ずに!! お前の大好きなラブコメだぞ!! あっち見ろ、あっち!!

「……でも。ホントは北大路君、バスケとかしたいんじゃなかったの? 別に良いよ? 私、今日は運動できるようにパンツで来たし、靴もスニーカーだからさ? あんまり汗が出ちゃうような激しいのは無理だけど、邪魔にならない程度に一生懸命やるくらいは出来るよ?」

 いじらしい事を言う西島に、桐生も意識をそっちに持っていかれたか、興味深そうに北大路の返答を見守る。そんな視線を知らずだろう、北大路は真剣な目で西島を見やり。



「ああ、それはない」



「……へ?」

「確かに、浩之さんとバスケをするのは楽しいし、もっとやりたいとも思う。思うんやけど」



 今日は、西島さんとのデートやん? と笑って。




「せやったら、俺は西島さんを精一杯楽しませる――ちゃうな。西島さん『と』いっぱい、楽しい事したいねん!!」




 屈託のない、少年の様な笑顔で笑う北大路の笑顔をポカンと見つめる西島。やがて、その顔が徐々に赤く染まり。


「そ、そう……それは……あ、アリガト……」


 真っ赤の顔のまま、北大路から顔を逸らして……ああ、口の動きを見る限り、『鼻血出るかと思った。あれ? これ、マジで行けるやつ?』って言ってるな、アレ。ぶれねーな、あいつ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ラブ警察 3組目検挙www
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ