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えくすとら! その二百十 東九条の血筋は結構『重い』


「あ、貴方達ね……」

 プルプルと震えながら皆を睨みつける桐生。そんな桐生の視線もどこ吹く風、智美はにこやかに笑って見せる。

「でもさ~? 彩音って結構『重い』オンナじゃん? なんだっけ、涼子? ホラ! 彩音がヒロと付き合いだした時に言ってたやつ」

「あー、あれね? えっと……『足元に縋り付いて『捨てないで!』って泣き叫ぶわ』とかだっけ?」

「そうそう! あの時から『重いな~』とは思ってたけど……流石に重いよ、彩音?」

 そう言って智美は桐生から距離を取ると、俺にしな垂れかかってくる。ちょ、おま、マジで止めろください。見て見ろ、桐生の顔。般若みたいな目をしているジャマイカ。

「その点、私なんてサバサバ系女子じゃない? どう、ヒロ? あんな重い彩音なんか放っておいてさ? 私に靡かない?」

 そう言ってウインクして見せる智美。そんな智美に、涼子が鼻をふんっと鳴らす。

「智美ちゃん? 智美ちゃんの何処がサバサバ系女子なのかな? 浩之ちゃんと彩音ちゃんがイイ感じになったらグジグジグジグジと悩んでたくせにー」

「うぐぅ!」

「ま、そういう意味じゃ智美ちゃんもまあまあ『湿度』高いよね~? どう、浩之ちゃん? 重い女も湿度が高い女も一緒に居ると大変だよ? ほら! 私にしとかない? 良いじゃない? 文化系清純派幼馴染はどの界隈でも人気だよ~?」

 にっこりと笑ってそういう涼子。そんな涼子の後ろで、瑞穂が大きくため息を吐いて見せる。

「いやいやいやいや涼子先輩? 涼子先輩の何処が清純派なんですか。幼馴染ズのラスボスの癖して。清純派というより腹黒系幼馴染でしょ、涼子先輩。看板に偽りアリです!」

「……瑞穂ちゃん、酷くない?」

「酷くありませんよ。事実ですし。それより浩之先輩!! 此処はやっぱり、妹系幼馴染で元気っ子の私なんか如何でしょうか! 怪我した時にはお世話になりましたし、今度は私が背一杯『お世話』してあげますよ?」

 そう言って妖艶に笑う瑞穂。そんな瑞穂を鼻で笑って、明美が一歩前に出る。

「あらあら? 何を言っているのですか、瑞穂さん? 浩之さんの『お世話』? そんな、小学生みたいな体型で何を一丁前の事を言っているんですか。良いですか、皆さん? 重い女も、湿度の高い女も、腹黒い女も、幼児体型もお呼びじゃないんです。此処は、この『ザ・大和撫子』である私が! 私こそが、浩之さんにふさわ――」


「「「ナチュラル・ボーン・ルーザーは黙っといて」」」


「――しい、って、なんか貴方達、最近私の事を落ち要員かなんかだと勘違いしてませんか!?」

 あまりにも酷い明美の扱いに涙が出そう。お前ら……幼馴染愛は無いのか、幼馴染愛は。

「と、ともかく! 私は別に重くないわよ!! ふ、普通に彼氏で大好きな人ならずっと一緒に居たいのは当然の事でしょう!? ねえ、東九条君!」

「……まあな」

 それに関しては是非はない。そら、彼女とは何時だって一緒に居たいよ。

「ええ~。でもさ、浩之ちゃん? たまには一人でゆっくりしたいな~みたいな時は無いの? そういう時、彩音ちゃんは許してくれないんじゃない? いっつも私と居て! みたいな?」

「んな事ねーぞ?」

 涼子の言葉に首を左右に振って見せる。つうか、正直そんなに束縛激しくないしな、桐生。

「こないだも藤田とゲーセン行ったし。なあ、藤田?」

「こないだって……ああ」

 俺の言葉に藤田は小さく頷き。


「お前がミニスカメイドが大好きって発覚した日だな」


「……おい」

「エリタージュ行った日だろ? 事実じゃん」

 いや、事実ではあるけども! 事実ではあるが、それは今は言わなくてもいい奴じゃないですかねぇ、藤田さん!?

「エリタージュ……ああ、彩音様がミニスカメイドで浩之さんにご奉仕した日ですね?」

「いかがわしい言い方するの止めて貰えるか、明美。別に奉仕されたワケじゃねーよ」

 ……うん、まあ……うん。結構、ギリギリだった気はせんでも無いが。と、言うかだ。

「そもそも……俺、別に束縛されるのそんなに嫌じゃねーし」

「……え?」

 俺の言葉に驚いた様な顔を浮かべる智美。ああ、この言い方はアレか。

「いや、この言い方はちょっと語弊があるが……なんだ? 束縛したいってのは独り占めしたいってのと同じだろ? 俺がどこで何してても『あら、今日は遅いの? 分かったわ』なんて聞き分け良すぎるのもこう……なんか寂しい気がするっていうか。もうちょっと気にして欲しい気もせんでもない」

「あ、それはなんとなくわかるかも! 私も秀明にはちょっとくらいは嫉妬とかして欲しいって気持ちもあるし! おにぃの言う事にも一理あるかも!!」

 にこやかに俺に相槌を打ちながら、『……俺、結構嫉妬深いぞ?』とかいう秀明にキラキラした目を向けて『うん! いっぱい嫉妬して! なんか愛されてる気がする!!』という茜。だよな? この気持ち、ちょっとは分かるよな?

「……まあ、浩之さんの言う事も一理あるかも知れませんね。確かに、『どうでも良い』と言われるよりはある程度『縛って』欲しいという気持ちはあります。ああ、物理的にじゃありませんよ? 精神的にです」

「誰もんな事言ってねーよ。つうか、大和撫子は物理的に縛って欲しいとかいわねーの」

 何処が大和撫子だ、明美。そんな俺らの会話を聞くとは無しに聞いていた西島がポツリと。



「…………東九条の血筋も、愛が重すぎませんかね? ああ、彩音先輩と東九条先輩がお似合いなの、なんかわかって来たかもです。なんかヤンデレ漫画の最終コマみたい」



 ……どういう意味だよ、おい。



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