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えくすとら! その二百 最近の悪役令嬢モノではむしろ主流な展開じゃない、これ?

あ、あれぇ? 『番外編もいくつか書きます』とか言ってたのに……二百言って幾つかって言って良いのか問題……


 腕を組んだまま、にっこりと微笑んでみせる桐生。そのご機嫌が絶妙に不機嫌なのは……まあ組んだ腕の右手の人差し指がトントンと左腕を叩いていることで察しがつく。その様子に、ミホとシズカは怯んだ様に桐生を見やる。あー……

「その……桐生? その辺で……な?」

「その辺で……な? とは? 何が言いたいのかしら?」

 少しだけ険の籠った目をこちらに向ける桐生。なんだかんだ、初対面の時以来のその瞳の強さに、俺は少しだけ苦笑を浮かべる。

「……怖い目すんなよ? 分かってるから」

 そう言ってポンポンと桐生の頭を撫でる。公衆の面前でなにやってんだろ、俺とは思わんでもないが……まあ、桐生の目から険が取れ、少しだけ照れた様な、気まずそうな視線をこちらに向ける。

「そ、その! ご、ごめんなさい……」

「良いって」

 まあ、気持ちは分かるしな。そう思い俺はミホとシズカに視線を向ける。

「……まあ、別に俺は藤田みたいな聖人君子じゃねーし。お前らが西島がムカツク事自体は別に構わねーと思うぞ? でも……ツレを馬鹿にされたり、貶めたりするようなのはあんまりじゃねーか? 桐生が怒る気持ちも分かるだろ?」

 どう思います、と言わんばかりに視線を『タケル先輩』に向ける。そもそもだな? アンタが西島に下手にコナ掛けたりしなかったらこんな面倒くさい事になってねーんだぞ? という気持ちを視線に込める。その視線の意味に気付いたのであろう、タケル先輩の顔がゆがむ。

「……おい、行くぞお前ら」

「え? た、タケル先輩!? で、でも……私達、こんなに馬鹿にされたんですよ!!」

「いいから!」

 ミホとシズカの二人の抗議を無視してさっさと歩き出すタケル先輩。その姿を呆然と見た後、慌てた様にその背についていくミホとシズカ。最後に、『きっ』とした視線を桐生と西島に向けて。

「……やっぱり叩き潰しておくべきだったのじゃないかしら? 見た、最後の視線? 許さないと言わんばかりの視線だったわよ?」

「……怖い事言うな」

 何が怖いってお前、マジで出来そうだし。

「それにまあ……西島の立場もあんだろうが?」

 お前はまあ、悪役令嬢だろうし。アイツらも一々反抗して来ることも無いだろうけど、西島は違うんじゃね?

「にしじ――っ! ご、ごめんなさい、西島さん! そ、その……つ、つい……」

 俺の言葉にはっと気付いたように桐生の顔が青褪める。そんな桐生の顔色の変化に、西島は少しだけ楽しそうに苦笑を浮かべる。

「あー……まあ別に構いませんよ? どうせあいつら、私に何も出来ませんし。知ってるでしょ、東九条先輩? 私のお姉ちゃん、ああ見えてシスコンですし。外野からやいやい言って終わりですよ。そんなの、今までと一緒ですし」

「……西島」

「……でもまあ? 桐生先輩があいつらボコボコにする所も見て見たかったのは見て見たかったですけど? 見ました、ミホとシズカのあの顔!! 桐生先輩に『あんたら、魅力ないから。そんなんだからオトコが別のオンナに色目使うんだろうが、ざぁこ』って言った時。いや~、気持ちよかったですね!! なんか久しぶりにスッキリしましたよ!!」

「…………西島……」

 ああ、ああ、知ってたよ! お前が根性が捻じ曲がってる奴だって事はな!!

「ま、それは冗談ですけど」

「……嘘だ」

「冗談ですって。ミホとシズカにハブられたのはムカつきますけど……まあ、気持ちは分からないでもないですし? 自分のカレシが他のオンナに色目使ってたら気持ちは良くないでしょうしね。ま、それもこれも私が魅力的なのが悪いんでしょうけど~」

「……」

「……ここ、笑う所ですよ? ま、それはともかく……私の責任じゃないところで一々文句言われたら敵わないってのは本音で……でもまあ、私も今までの自業自得の性格もあって仲間――というか、信じてくれる人もいませんでしたし。下のお姉ちゃんには『貴方が男をジャグリングしてるのが悪いんでしょ? するなとは言わないけれど、もうちょっと上手くジャグリングしなさい。仲間内での立ち位置が悪くなるジャグリングなんて、下手くそ過ぎるわ。いい? オタサーの姫は馬鹿には出来ないのよ?』とか言われましたし」

「……下のお姉さん、クセが強くない?」

 西島のお姉さんらしいと言えばお姉さんらしいんだけど……

「だから……まあ、ある程度自己責任ではあるって思ってたんですよ」

「……言ってたもんな、お前。別に助けはいらねーって」

「ですです。私の行動があんまり褒められることじゃないのは私でも分かりますし。だからまあ、ある程度諦めはついてましたし、そこまで気にすることもないとは思っていたんですけど……」

 そう言ってちょこちょこと自分の前髪を弄る西島。少しだけ照れくさそうに、はにかんだ笑みを桐生に向けて。


「――だから……桐生先輩がそうやって私の事を庇ってというか……悪くないって、そうやって味方してくれたのは、その……す、すごく嬉しくてですね? ええっと、こう……なんというか、ちょっと感動と言いますか……そ、その、だから別に謝って貰う事じゃないって言いましょうか……さっきも『琴美さん』って呼んで貰えて、ちょっと嬉しかったというか……と、ともかく!! そんな感じなので!! 全然、気にしないでください!! その……」


 きゅっと両手でスカートの端を握って。



「――ありがとう、ございます……『彩音』先輩」



 非常に綺麗な笑顔を見せた。あー……




「……そっか。最近の悪役令嬢モノってアレか。性格捻じ曲がった奴を更生させるパターンもあるもんな……」


 あれだな。劇場版西島みたいになってる。綺麗な西島だ、これ。


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