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えくすとら! その百五十八 嫌いじゃないけど、好きになれない

Twitter始めました。基本的には悪役令嬢許嫁関係を呟くことになると思います。色々計画していることもあるし。宜しければフォローなどして頂ければ。


「ま、まあ……」

 なんとなく微妙な空気を醸し出す場を誤魔化すようにコホンと咳ばらいをして、北大路が口を開く。

「その……西島さんがエエ子やいうんは分かるんですけど……その、付き合うっていうとちょっと、どうなんやろうとは思うんですよ」

「どういう意味だよ、北大路? なんだ? 好みと違うってか? もっと清楚系が好きとか? 西島みたいな軽いやつは嫌いか?」

「浩之!? 別に琴美ちゃんが清楚系じゃ――」

「清楚系か、藤田? 西島って」

「――……な、無いかも知れないけど!! にしてもお前、ちょいちょい琴美ちゃんにあたりがきつくない!? 半分は優しさで出来てるお前は何処に行ったんだよ!!」

「頭痛薬じゃねーよ、俺は。まあ、あたりがキツイつもりは無いけど……北大路にだって好みがあんだろ」

「んじゃ紹介するなよ!!」

「今回のは完全に、北大路の婚約逃れだろ? 別にお互いが良いと思って彼氏彼女になるなら良いけど……」

 正直、北大路の女性のタイプ……つうか、なにもかも知らんしな、北大路の事。まあ、家同士知り合いで身元もしっかりしてるし、悪いやつじゃねーだろうってのは分かるんだが。

「無理やり押し付ける訳にもいかねーだろうし」

「……の割にはさっきニヤニヤしてなかったか、お前?」

「移るんだよ、近くにいると。俺もそろそろラブ警察に入るかも知れん」

 桐生、絶対こっちに居たら鼻息荒くなってただろうしな、さっきの言葉で。

「……それですわ」

「どれだ? ラブ警察か?」

「そうやなくて……その『婚約者』の方です」

「婚約者の方?」

 俺の言葉に北大路が何とも言えん顔で頬を掻く。

「ええっと……感じ悪いの百も承知で言いますけど……俺んち、まあまあ『名家』言われるやつなんですよ。それこそ、『家の為に許嫁を!』とか言い出してまう様な家でして……」

 ちらっとこっちを見る北大路。

「浩之さんやったら分かって貰えると思うんですけど……『名家』ってこう、色々と面倒くさいと言いましょうか……俺、次男やしそこまでやないと思うんですけど、それでも俺の『彼女』って結構、その……どういいましょうか……面倒くさい? ああ、そうですね、面倒くさいと思うんですよ」

「……」

 ……まあ、正直我が家は東九条でも異端の方向に生きる分家だろうから、北大路の言う『名家だから面倒くさい』と云うのが肌感覚として分かるかと言われるとちょっと微妙である。微妙ではあるが、明美あたりがパーティー終了後に『……疲れました』とぐでーっと伸びている姿を見ると分からんでもない。

「重いかも知れへんですけど……こう、やっぱり好きになった子っていうか、付き合う子は大事にしたいやないですか。遊びで、言うのは趣味やないですし、一緒に居たいぐらい好きな子やったら、こう……その、死ぬまで一緒に居たい言うか……」

「……」

 おめーよ。まあ、重いが……好感は持てるわな。少なくともチャラ男よりは。

「せやけど、俺自体に魅力あるか? 言うたらそんな御大層なものは無いんですよね。名家言うても俺なんて次男やし、経済的に無茶苦茶楽させて上げられるか言うたらちょっと微妙ですし……やってるスポーツがバスケなんで将来性言うのもそないに無いんですよ。バスケを馬鹿にする訳や無く、事実して」

 北大路の言葉に藤田が何とも言えない表情でこちらを見やる。なんだよ?

「……前、浩之が言ってたやつか」

「俺?」

「ほれ、桐生と婚約破棄……って言うのか? アレ、させられそうになっただろ? あの時お前言ってたじゃねーか。結婚は家と家だって」

「言ってたな」

「北大路的には……まあ、自分ちは結構しきたりとか礼儀作法? って言うのか? あとはお付き合いとか……まあ、『義務』が多い、と」

「そうです」

「その割には返せる見返りっつうか……メリットが少ない、と」

「……そうです。まあ、そんな俺でもエエいうてくれるんやったら嬉しいんですけど……でも、俺やったらイヤですもん。面倒くさい事ばっかり押し付けられて、それでも旨味少ないって……そんな奴、そもそも」


『好き』にならない、と。


「……せやから、そういう意味では秀明はすごいな~って思うで?」

「俺?」

「ああ。東九条は京都やったら知られた名家や。分家の長女や言うても茜さんやって世が世なら立派なお姫様やで? お前、茜さんの事遊びちゃうんやろ?」

「当たり前だろ。その……浩之さんの前で言うのはなんだけど……け、結婚まで、こう……視野に入れていると言うか……」

 うん、秀明? 大事にしてくれている様でお兄ちゃん、嬉しい。嬉しいけど、頬を赤らめるな、気持ち悪い。

「それやったら秀明、東九条の身内になるってことやん? こう……気ぃ、悪くせんといてな? 普通の家やろ、お前んち?」

「まあな。サラリーマンの家だ」

「秀明、こないだのパーティーでも変なのに絡まれたりしたやろ? あんなんが続くって事やで、これから。そんな思い……」

 好きになった子に、させられへん、と。

「……まあ、その気持ちは分からんでもない。こないだのだって……そんなに気にはなんねーけど、気持ちが良いかって言われたらそういう事も無いしな」

「……」

「でもまあ、俺は別にそこまで思ってはいないかな? 別に茜と付き合ったから義務……って言うのか? それが嫌ともあんま思わねーし。ああ、正確にはああいうパーティーに参加するのは面倒くさいと思うけど……でも、茜と一緒に居られるならその方がメリットだしな」

「……」

「そもそもだな? 名家とかなんとかいうけど……」

 そういって秀明は呆れた様に。



「茜、だぞ?」



「……そ、それは……」

「『魔王』だ『狂犬』だ言われてる、あの茜だぞ? 世が世ならお姫様? ハッ! へそで茶を沸かすわ!! 『あれ』でなんとかなるんだったら、そんな気にする事でも無くないか? 名家とか、そういうのって」


 ……間違ってはいない。いないが……秀明? その……彼氏として、もうちょっと優しい表現をしてあげてくれない? お兄ちゃん、不憫すぎて泣いちゃうよ?



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