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えくすとら! その百四十八 バスケ馬鹿はやっぱりバスケ馬鹿だよね~、というお話

活動報告でも書かせて頂きましたが、本作書籍版の二巻、発売出来そうです。時間は少し空きそうですが、打ち切りでは無いです。

みわべ先生のイラストは勿論のこと、応援して下さった皆様のお陰です、マジで! ありがとうございます!!


 北大路の『バスケがしたい』という言葉を受け、俺と桐生、それに西島は一路アラワンに向けて歩き出した。道中、西島が散々こと北大路に絡んでいたが……まあ、北大路の方も迷惑そうな顔はしていなかったので良しとしよう。顔はちょっと赤かったけど。やがて辿り着いたアラワンで、二時間パックのチケットを購入してボールを借りてバスケットコートに向かうと。

「……珍しい組み合わせだな、おい」

「あれ? 浩之じゃん」

「あ、浩之さん!! ――って、北大路? お前、何してんのこんな所で?」

 バスケコートでバスケに勤しむ藤田と秀明の姿があった。いや、マジで珍しい組み合わせだな。

「どうした? 秀明と二人でバスケなんて……バスケ部みたいじゃないか、お前」

「バスケ部みたいって……遊びだよ、遊び。秀明、今日は暇だって聞いてたからな。最近運動不足だし、ちょっと遊びに付き合って貰ったんだよ。バイト代も入ったし」

「……有森を連れて行けよ」

「アイツ、今日部活なんだよ。それにまあ、秀明も『いいっすよ!』って言ってくれたからな」

 そういって『な?』と声を掛ける藤田。そんな藤田に、秀明が少しだけ苦笑を浮かべる。

「藤田先輩と遊ぶのは全然楽しいんで良いんですけど……まさかバスケとは、と思ってます。まあ、明日試合なんで良い調整と言えば良い調整なんですけどね。そこまでしんどくは無いですし」

「なにをー! 秀明、俺とのバスケを調整扱いというか!!」

「いや、藤田先輩? 申し訳ないですけど、藤田先輩とガチでバスケしなくちゃいけないんだったら俺、聖上のベンチから外れてますよ?」

 苦笑を濃くする秀明に俺も頷く。まあ、藤田が本気でバスケに取り組めば凄い成長をするかも知れんが……流石に今の秀明とじゃ分が悪いからな。

「えっと……すんません、その……」

「ああ、悪い北大路。ツレにあったから、ついな」

 藤田と秀明を見てついつい声を掛けてしまったが、北大路を放置してたな。悪い、悪いと頭を下げる俺に北大路はいえ、と首を振って見せる。

「いえ、それは構わへんのですけど……なんやお三方とも仲良さそうやな~、思うて。ええっと……藤田先輩、でエエですかね?」

「おう! ええっと……誰君?」

「ああ、すんません。俺、北大路利典言います!! 京都の高校通ってて……明日、バスケの試合があるんでこっちに来たんですけど……」

 そういって北大路はキラキラとした視線を向ける。

「あ、あの……藤田先輩って、あの藤田先輩ですかね!?」

「……『あの』?」

 藤田、きょとん。そんな藤田に北大路はマシンガンの様に喋り倒す。

「お、俺、こないだの市民大会の映像、見ました!!」

「市民大会の……って、え? あれ、映像とかになってんの? なに? 動画投稿サイト?」

「知らん」

 まあ、去年の大会も動画投稿サイトに上がってたし、今年もあがってるのかも知れんが……見た記憶はねーな。

「ちゃいますよ! 俺、中学のツレが正南通ってるんですよ!! それで、俺、浩之さんの大ファンやったんで、撮った映像見せてもろうたんですけど……あの試合で4番されてはった藤田先輩ですよね!!」

「え、ええっと……そ、そうだけど? な、なに? おい、浩之? なんだ、コイツ? なんでこんな目がキラキラしてるんだよ?」

 いや、俺に聞かれても。そう思い、視線を北大路に向けると。

「あの試合、みんなめっちゃ格好良かったです!! 秀明のアリウープはちょっとムカついたんですけど……浩之さんのパスもですし、3番の女子も! 桐生さんも随所で視野の広いエエプレイしはってましたし!!」

「……まあな」

「それでも、一番格好良かったのは4番の藤田先輩でした!! あ、いや、当然浩之さんの事も尊敬しているんですけど……藤田先輩、バスケ経験ないでしょう?」

「まあな~。やっぱ経験者からしたら分かるのか? 俺の下手くそっぷり」

「下手くそなんてとんでもないですよ!! いや、そりゃ技術的な面は皆さんに劣りますけど……でも、誰よりもコート内を走って、誰よりも一番にボールの側に駆け寄って、誰よりも相手のマークに真剣やったやないっすか! あのチームの4番、ガタイも大きいし荒っぽいプレイしてましたけど藤田先輩、全然当たり負けしてへーんでしたし!! それにあの張り付くようなディフェンス、厄介でしたよね!!」

 まるでマシンガンの様に喋り倒す北大路に、目を白黒にさせる藤田。その後、少しだけ照れた様に頬をポリポリと掻いて見せる。

「あー……いや、そこまで言って貰えると恥ずかしいと言うか、何と言うか……いや、有難いのは有難いんだが……な、なあ浩之?」

「素直に褒められておけよ。実際、凄かったんだし」

 難儀なヤツだ、コイツも。

「いや、でもバスケ部に褒められる程のプレイじゃないぞ? 所詮、素人だし」

「……まあな」

「バスケで大事なのは技術じゃない……とは言いませんけど、あれだけ直向きなプレイはやっぱり大事ですよ!! そういう姿勢は、チームの活力になりますし! 特に素人の藤田先輩が頑張ってたら負けられねーってなるやないですか。なあ、秀明?」

「……まあな。藤田先輩があんな頑張ってるのに、みっともないプレイは出来ねー、って思うよな」

「せやろ? せやから、藤田先輩! 胸張ってください!!」

「お、おう」

 そういって少しだけ照れた様に、それでも素直にうなずく藤田に満足げに頷いて。


「それで……今から俺らもバスケするんですけど……よろしかったら、藤田先輩も、秀明も一緒に……え、エエですか、浩之さん?」


 ……んな期待に籠った目で見られたらイヤって言えねーだろうが。苦笑する俺に、藤田も秀明も頷き、そのしぐさに北大路の顔がぱーっと華やいだ。ったく……どんだけバスケ馬鹿だよ、こいつも。



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