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えくすとら! その百四十六 やっぱパネェわ、西島さん。

過日、本作品の書籍版が発売されました!! 皆様の応援のお陰です、ありがとうございます!! みわべ先生の美麗なイラストが目を引く一巻、無理にお願いは出来ませんがお財布に余裕があれば検討の端っこにでも加えて頂ければ幸いです。


「久しぶりだな、北大路」

「はい! 今日から三日間、よろしゅうお願いします、東九条……え、ええっと……ひ、浩之さん」

「呼びにくかったら東九条のままでも良いぞ?」

「い、いえ! 緊張はしますけど……そ、その、やっぱり『浩之さん』ってお呼びしたいですし……」

 そういってはにかんだ様な笑顔を浮かべる北大路。少しだけ頬を朱に染めるその姿は、男子高校生としてはどうか、と思わんでもないのだが。

「……先輩、先輩」

「……なんだ、西島」

「なんですか、あの子。アレですか? 今はやりの子犬系男子ですか?」

「……そんな流行があるの、初耳なんですけど?」

 なんだよ、子犬系男子って。

「北大路君のバスケの動画とか漁っても格好いい姿は出てくるんですけど……あんな、可愛い顔も出来るんですね!! こう……なんというか、くすぐりますね、母性を!」

「……おい、よだれ出てる」

『はっ!!』なんて言って慌ててよだれを拭う西島。いやマジでこいつ、肉食系すぎないか? ある意味ぶれねーと言えばぶれねーやつなんだけど。

「……食うなよ?」

「……セクハラですよ、東九条先輩?」

「そっちの意味じゃなくて……なんか、物理的に」

 んなワケ、絶対ないんだが……でも、なんだろう? こう、舌なめずりしている感が半端ないと言うか……マジで合わせてよかったんだろうか、こいつと北大路。

「と、紹介がまだだったな。北大路、コイツが西島だ。お前の……ああ、なんだ? 彼女役というか……」

 そう言いながら西島の背中を押して北大路の前に出す。『ちょ、東九条先輩!? こ、心の準備が!!』なんて言いながら、俺と北大路の前に体を出した西島が少しだけ照れた様に髪の端をちょんちょんと弄る。

「え、ええっと……そ、その……は、初めまして。西島琴美って言います。その……よ、よろしく……」

「え、えっと! は、初めまして! 俺……ちゃう、ボク、北大路利典って言います! 今回はなんて言うか……迷惑かけて、えらいすいません!! しかもこんな無茶苦茶なお願いで!!」

 西島の照れたような仕草に、北大路が手をわちゃわちゃと目の前で振って見せる。そんな北大路の姿に、少しだけ西島がほほ笑む。

「……クス。『俺』、で良いよ、北大路君? 敬語もいらないから。それに、そんなに緊張しないで? 事情を聞いたら、流石に可哀想だって思ったもん。いきなり許嫁なんて……まあ、びっくりするわよね?」

「……はい」

「だから、敬語じゃなくて良いってば。ほら、タメ口、タメ口! 笑顔も~」

 そういって自身の両手の人差し指で自身の口の端を『にー』と引っ張って見せる。そんな姿に、北大路の顔にもようやく笑顔が浮かぶ。

「ぷっ……」

「あー! なんで笑うのよ! なに? そんなに変な顔だった? 別に、変顔したつもりは無いのに!!」

 ぷくーっと頬を膨らます西島。そんな西島に、『すまん、すまん』と頭を下げて、北大路は大きくため息。

「そういう訳やない。それに、可愛らしい顔だったで、西島さん」

「……あれ? もしかして、北大路君ってチャラい系? 女の子、侍らせ候みたいな感じ?」

「なんやねん、それ。侍らせ候って」

「京都だし」

「京都は武士の町やないで?」

 そういって屈託なく笑う北大路。そんな北大路に、少しだけほっとしたような顔を浮かべて見せる西島。

「……うん、良い顔! 緊張も解けてきたかな~? あ、それとも彼女役がこーんな可愛い子で、まだまだ緊張解けないカンジ?」

「自分で可愛いとか言うもんやないで?」

「えー! そりゃ、女子高生特有の自惚れ入れても、そこそこ整った顔立ちしてるつもりなんだけど……北大路君は嫌いな顔かな? 私、ぶちゃいく?」

「そ、そんなことはあらへん!! そ、その……と、整った顔立ちをしていると思います」

「んじゃ、可愛い?」

「……」

「ん? ほれほれ、言ってみなされ~?」

「…………彼女役が西島さんでラッキー思うくらいには」

 北大路の言葉に満足したようにほほ笑む西島。そんな西島に、ようやく緊張も取れたのか北大路が笑顔を浮かべる。

「かなわへんな、西島さんには」

「へへへ。そうだよ~。私に勝とうなんて百年早い!」

 笑顔を苦笑に変えて――その後、真剣な顔を浮かべて見せる北大路。

「――ほいでも、後一回だけ、謝らせてもらえるか? ほんまに、すまん。こっちの事情に巻き込んで……俺に何が出来るか分からへんけど、最大限報わせて貰おうとは思っているから」

「硬いな~、北大路君。それにもう良いってば。私だって明美さんにはお世話になったし……恩返しもしたいな~って、そう思ってたんだ」

「……そういって貰えると……まあ、助かる」

「それにさ?」

 手を後ろに組んで、北大路の顔を下からのぞき込む様に見つめて。



「――私も、役得だな~ってちょっと思ったんだ。こんな格好いい北大路君の彼女役なんて……良いじゃない」



 顔を真っ赤にさせて、ずさーっと後退る北大路。そんな北大路の姿を真剣に見つめて。


「――彼女『役』じゃなくて、本当の『彼女』に立候補しても……良い?」


「あ!? え、ちょ、ええ!?」

「……クス。北大路君、慌てすぎ! ま、流石にそれは早いかな~。お互いの事、まだ知らないし……それはおいおい、って所でね? それじゃ、折角だし出逢いを祝して遊びに行こう!! おー!!」

 そういって片手を挙げると、桐生の側まで近寄って『行きましょ、桐生先輩!!』みたいに連れだって歩く西島。そんな姿を半ば呆然と見送っていると。

「ひ、ひりょゆきしゃん」

「……動揺しすぎだろ、お前」

「ど、動揺しますよ!! は、恥ずかしながら、俺、彼女いない歴年齢なんで!! なんですか、あの子? え? あの子、ほんまに俺の事を……?」

「……まあ、気に入ってはいるんじゃね?」

「そ、それ、付き合った方がエエんですかね? いや、勿論、初対面であれなんですけど……あ、あれ? それともあれ、揶揄われただけです? アレです? 西島さん、小悪魔系とかいうヤツですか!?」

「……」

 あー……まあ、その、なんだ?

「……んな可愛いもんじゃねーよ」


 俺らの数歩先、こちらを振り返った西島の顔からは『作戦通り!』と言わんばかりのわるーい笑顔が浮かんでいた。あれだ。ありゃ茜とは別の意味で魔王だ、魔王。



昨日、一巻のサイン本がヤフオクで転売されていて嫁と爆笑しました。発売一日で……商魂逞しいな、おいw

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王だらけ(笑)
[一言] 転売ヤー滅ぶべし……
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