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えくすとら! その百二十四 やらないヤツに限って権利ばっかり主張するお話、よくあるよね?

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


 藤田の『それじゃ頼む、浩之。俺と一緒にバスケ部に入ってくれ』と言われた俺は快諾して、その日の昼休みに二人で佐島の元に向かった。

「あれ? 東九条に藤田じゃん。どうしたんだよ?」

 たまたま教室の入り口で出逢った一年の頃のクラスメイトに佐島の呼び出しを頼んで数分後、佐島が俺らの前にやって来た。

「東九条に藤田か。どうした?」

「こないだの話だ。バスケ部に入部してくれって言ってただろ? だから俺と藤田で一緒に入れて貰おうかと思ってな」

 そう言った俺に、佐島の顔に喜色が浮かぶ。


「あー……その話か」


 浮かぶ、事はなく、少しばかり渋い顔をして見せる。あれ?

「……お前から勧誘された記憶があるんだけど……俺の勘違いか?」

「い、いや、勘違いって訳じゃない。こっちから誘ったんだが……あー……」

 少しばかり悩んだ素振りを見せた後、佐島は俺と藤田に声を掛ける。

「お前ら、昼飯は?」

「まだだ」

「俺も」

「それならちょっと付き合ってくれね? 購買でよかったらパンも奢るからさ。屋上でちょっと話があるんだよ」

 佐島の言葉に俺と藤田は眼を見合わせる。え、えっと……

「……奢ってくれるっつうなら喜んで奢って貰いたい所ではあるんだが……その表情を見る限り、俺たちの入部祝いって訳じゃなさそうだな?」

「……その辺も含めて、事情を話すから。な? 侘び代わりと思って受け取ってくれねーか?」

 そう言って頼む、と両手を合わせて頭を下げる佐島に俺と藤田は頷いて見せる。何があったか知らんが、本当に申し訳無さそうな佐島をこれ以上追及するのもなんだし、三人で連れだって購買へ。俺は焼きそばパン、藤田はカレーパンを購入して屋上を目指す。辿り着いた屋上は昼休み始まったばかりという事もあり、然程混雑はしていなかった。

「……それで? 俺らを此処まで連れて来て話ってなんだよ?」

 焼きそばパンを齧りながらそう問う俺に、佐島が渋い顔をして見せる。

「その……すまん、俺から言っておいてなんだが……入部の誘い、あれ、無かったことにして貰えたら助かる」

 ……まあ、そうだろうな。ある程度そんな想像は付いていたが……

「……理由、聞いても良いか?」

 俺の言葉に佐島がため息を吐く。

「お前らがバスケ部に入ってくれる理由って……あれだろ? 西島さん絡みだろ?」

 佐島の言葉に首肯。そんな俺の姿に、佐島が大きく息を吐く。

「……そこまで知っているならこっちも知っているよな? 今、西島さん、仲間内で結構ヤバい事になってるってこと」

「まあな。その為に俺らがバスケ部に入ろうとしてるんだし。んで? なんだ? それが問題なのか? そんな不純な動機で入られたら困る、ってか?」

 その問いかけに佐島は首を左右に振って見せる。

「いや、理由がどうであろうと入部自体は有難い。前も言ったが、俺は勝ちたいからな。どんな動機でも入部してくれれば良いし……それに、どんな動機だろうと東九条や藤田が練習の手を抜くとは思えないし」

「……まあな」

 動機はどうであれ、バスケをやる以上は一生懸命やろうと思っているさ。思っているけど……

「……んじゃ、何が問題なんだよ?」

「……」

「言い難い事か?」

「言い難い……と、いうか……まあ、その、なんだ」

 一息。


「その……西島さんのグループにな? バスケ部の先輩の彼女がいるんだわ」


「……おお」

 巡り合わせの何とも言えない妙に間抜けな声を出す俺。そんな俺に、佐島が困ったように眉根を寄せた。

「具体的な話は聞いてない……というか、聞きたくも無いから聞いて無いが、話の流れからして、先輩の彼女が先輩に西島さんが入部する事を話したっぽい。その先輩、『俺は聞いてない!』って怒り出してな?」

「……」

「……半分は先輩の彼女に頼まれたところもあるんだろうけど、ともかく先輩は西島さんの入部に大反対。表向きは『バスケ部はいじめられっ子の盾になる為にある訳じゃねえ!』って……いや、まあ、確かに正論と言えば正論なんだが……」

「……バスケ部は仲良しクラブじゃねーって言い返さなかったのか? そこまで言うなら真面目に練習しろって」

「……体育会系なんだよ、あんなんでも一応」

 ……まあな。体育会ってのは先輩の言葉には『はい』か『イエス』で答える様に訓練されているし。

「そもそも、一個上の代って女バスと男バスの仲も悪いんだよ。女バスは決して強くないけど毎日練習頑張ってるだろ? なのに、さぼってばかりの男バスと体育館半分ずつだからな。覚えてるか? それこそ西島さんの告白権を掛けた試合で鈴木が言ってただろ?」

 智美? ああ、そう言えば。

「勝った方が体育館の使用権、だっけ?」

「そう。あれ、結構マジな話で女バスのお願いなんだよ。『遊んでいるなら私達に体育館を使わせて欲しい』、ってのは雨宮先輩にもよく頼まれてたし」

「その先輩が?」

「俺が。まあ、雨宮先輩も分かって愚痴ってるだけだけどな? 『佐島君から強く言ってよ~』なんて笑いながら言われてた。眼は笑ってなかったけど」

「……」

「なもんで、先輩からしたら可愛い彼女の頼みだし西島さんの入部に反対。加えてその提案が女バスから出ているって事で他の先輩もだいぶ怒ってるんだよ。この上で西島さん助ける為にお前と藤田が入部してみろ」

「……荒れるな~、それは」

「そういう事だ。こっちから申し込んだ事なのに、本当に申し訳ないんだが……」

 そう言ってもう一度、『すまん』と頭を下げる佐島。そんな佐島を見ながら、俺は焼きそばパンを齧りながら声を掛ける。

「頭上げろよ、佐島。そんな事情ならまあ、しょうがないわな」

 正直、別段腹も立たん。先輩方は散々サボってたくせに何言ってんだと思うが……知ってるか? 古今東西、一番声がでかいヤツってのは基本的にサボって奴なんだよ。義務は果たさないけど権利だけ主張するってのは一定数いるからな。

「……すまん」

「いいさ。そういう事情なら仕方ねーだろ。藤田? お前もそれで良いか?」

 藤田的には心配だろうが……そういう事情なら仕方無いだろう。そう思い、藤田に声を掛けると。

「……ちなみにさ?」

 俺の言葉を聞き流し、藤田は佐島に。


「琴美ちゃん関係なしに、バスケ部に入るってのは……ダメか?」


 そんな事を言いだした。お、おい? お前、いつからそんなバスケ大好きっ子になったんだよ!!



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