えくすとら! その百十四 なに、その組み合わせ
活動報告で『転勤になったので来週まで更新は無理!』って書いたんですが……新しい家に来週じゃ無いと入れないらしいので、今週投稿! 来週はちょっと厳しそうですが……
「……貴方達のチームワークは……なんというか、凄いわね」
ある程度バスケをし、『少しばかり休憩しよう』と揃ってベンチに座り缶ジュースを呷っていると、少しばかり呆れた様に桐生がそう口を開く。
「あー……まあ、長い事一緒にやってるしな、瑞穂とは」
「ですね~。まあ、ポジション一緒で身長も似たようなもんですし。プレイスタイルも似て来るんで、やっぱり練習方法も似るんですよ」
「そうなの? でも、身長って……」
「まあ、私の方が二十センチくらい低いですが……浩之先輩も私もマッチング相手とは大体、十センチくらい差がありますから」
瑞穂は一般高校女子としても小柄な方だし、バスケ選手としてはチビだしな、俺も。
「なもんで、どうしても外から打ってみたりトリッキーなプレイをしがちではありますね。これが茜……浩之先輩の妹とかとするとちょっと違うんですが」
「そうなの? 茜さん、そんなに身長高かったかしら?」
そう言って首を捻る桐生。まあ、幼馴染女子バスケ三人衆である智美、茜、瑞穂だったら智美が一番高く、茜と瑞穂はさして変わらない身長ではある。
「五センチくらいだっけ?」
「こないだ茜、百五十五センチになったって言ってましたよ? 七センチ差になってしまいました……一生懸命、牛乳飲んでいるのに、私……あの子、牛乳嫌いなのに……」
ずーんと影を背負った様な瑞穂。そんな姿に、桐生が慌てた様に声を掛ける。
「ま、まあ体質とか成長期とかもあるし! ま、まだ瑞穂さんは高校一年生でしょう? こ、これから成長期を迎えるかもしれないじゃない!!」
「……本当に思ってます、彩音先輩?」
「お、思っているわよ!!」
「んじゃ、自分の胸を見てからもう一回、同じセリフが言えます?」
「……」
「……」
「……生まれ持ったものも、あるわね。少なくとも私はもう、諦めたわ」
「……前世でどんな悪い事したんでしょうね、私達」
二人して影を背負う。いや……なんだろう、不憫な。
「……なにか失礼な事考えてないかしら?」
「……気のせいだろう?」
「タメが長い気がするけど……まあ、良いわ。話を戻すけど茜さんもそんなに身長が高い訳じゃないでしょう? なら、プレイスタイルは智美さんよりも瑞穂さんに近くなるのではなくて?」
顎に人差し指を置いてこくん、と首を傾げる桐生。そんな姿に、俺、瑞穂、藤原という茜を知る面々はこっそりと視線を逸らす。
「……なに、その微妙な反応? 私、何か変な事言ったかしら?」
「いや……まあ、うん」
三人で目配せをして――ああ、これ、『お前、言えや』って感じだな?
「……まあ、あれだ。茜ってあんな感じだろ?」
「あんな感じ?」
「狂犬」
「……ああ」
「そもそも身体能力の高いヤツではあるんだよ。その上、こう……なんというか、北大路をアイアンクローのまま持ち上げる程の膂力というか、なんというか……」
……うん。
「端的に言って、フィジカルが鬼強い。当たり負けしないんだよな、アイツ。相手が十センチ以上高くてもゴール下でガンガン押し合って良いポジション取って、十センチ以上高い相手よりも高く跳んでオフェンスリバウンドとか取る」
「……」
「……」
「こんなことを言ってもいいかどうか分からないけど……なんていうか、イメージ通りね」
「……まあな」
本当に。あいつ、どっちかって言えば華奢な体つきなんだが……どっから出てくるんだろうな、あのパワー。
「ま、まあそれはともかく……でも、やっぱり茜さんも上手なのね」
「当たり負けしないって云うのが上手というかどうかは微妙な所だが……まあ、技術レベルも低くはないさ。バスケする為に京都の高校にまで行ったくらいだしな」
「……ねえ」
「なんだ?」
「その……茜さん、上手だったのよね? 瑞穂さんだって上手だし、理沙さんも雫さんも上手でしょ? それじゃ、貴方達の中学校の女子バスケ部って……強かったんじゃ無いの?」
「あー……まあ、弱くは無かったよな?」
「そうですね~。まあ、そこそこは強かったんですけど、流石に全国に行けるレベルでは無かったですよ。ね、理沙?」
「そうですね。別に弱かったって訳じゃ無いんでしょうけど……まあ、茜が一人だけ上手かったのもありますよ。私達は……ねえ?」
「雫も大きかったですけど、シュートはそこまで巧い訳じゃないですし、私はチビでフィジカルも弱い。理沙は……なんでも器用にこなすけど」
「これと言った特技もないものね、私。器用貧乏ってヤツですよ」
「なもんで、私達のチームは弱くは無いけど強くも無かったんですよ。県大会に出るくらいは出来るけど、全国なんて夢のまた夢のチームだったんです。ああいうチームって尖った才能が一番ですから」
「ですから、天英館のバスケ部は良いんですよ。特に器用貧乏な私にはぴったりです」
そう言ってにっこり笑って見せる藤原。まあ、基本はエンジョイバスケってあの猫目の雨宮先輩も言ってた――
「やっぱ此処か! そうだと思ったんだよな。にしても、好き過ぎだろう、バスケ」
不意に、そんな声が俺の後ろから聞こえて来る。その視線に俺はそちらに視線を向けて。
「……どんな取り合わせ、そのメンツ?」
視線の先に居たのは藤田と有森――と、それに。
「……うっす、東九条」
バスケ部の次期キャプテン候補、佐島君の姿だった。えっと……これ、どんな取り合わせ?




