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第十四話 屋上での食事会、やっぱり『悪役令嬢』は最強

6:10時点でジャンル別日間、一位……! ヤバい、ありがとうございます!

今回、ラストヒロイン登場です(ちょこっとだけ)。この子が一番好きです、私。


 俺たちの通う私立天英館高校の屋上は基本的に昼休みと放課後、それぞれ開放されている。カリキュラムは別としても、子供ファーストの昨今の『ゆとり』教育の風潮の中、やれ危険だとかやれ不良の溜り場になるだとか揶揄されそうなモンだが、真っ向から対立するように屋上を開放するのは校是が『自主自立』だから、というのもあるだろう。何があっても自己責任、フェンスこそ高くするけどもう良い年齢だしそれを飛び越えて遊びたかったら遊べばいいし、別に不良に成りたかったら勝手にすればぁ? 困るのは自分だしぃ? という考え方なのだ。何があっても自分で責任取れよという、放任主義な辺りが結構俺は気にいってる。ちなみに、ボール遊びは禁止。理由は『下に居る人に当たったら迷惑を掛けるから』だ。

 まあ、そんな訳で屋上開放は生徒には人気が高い。別に馬鹿するやつも……全然とは言わんがそんなにいないし、昼休みには屋上で飯食ってる人間も多い。多いのだが。

「……お前、スゲーな?」

「そう?」

 俺たち四人――俺と涼子と智美、それに桐生が屋上に来た時にはそこそこ人が居たのだ。皆和気あいあい、食事やお喋りを楽しんでいたというのに。

「……お前が来ただけで皆帰って行ったぞ?」

「別に取って喰う訳でも無いのに……逃げる必要は無いと思うんだけど?」

 失礼しちゃうわ、とでも言いたげな表情を浮かべる桐生。でもお前、凄かったぞ? お前が屋上に上がって来た時、全員二度見して気まずそうに視線を逸らし、そそくさと去って行ったじゃねーか。取って喰われるとでも思われてんじゃねーの? 主に、日ごろの行いで。

「……貸し切りになっちゃった。ま、いっか。さ、桐生さんも食べよう! 涼子、シート頂戴! 敷くから!」

「はーい。それじゃ智美ちゃん、お願いね~」

 カバンからピクニック用の大き目なレジャーシートを取り出すと涼子は智美にそれを手渡す。結構大き目なそれを『ふわさ』と一度振ると、綺麗に正方形の形に広がった。

「よし、完成! ささ、桐生さん? どうぞどうぞ! 座って~」

「え、ええ。あ、ありがとう」

「……」

「な、なにかしら?」

「いやー……ちょっとびっくりしただけ。桐生さんの口から『ありがとう』なんて出て来るなんて思って無かったから」

 おま、智美! なんて失礼な事を言うんだよ! そんな事言ったら桐生の『悪役令嬢』の側面が飛び出すぞ!

「……そうね。確かに、この学校に来てから『ありがとう』なんて言葉、口に出した事は数えるくらいしか無いかも知れないわ」

「でしょ? イメージ無いもん」

 あれ? 飛び出さないの?

「でも、別に私は感謝が出来ない人間ってワケじゃないわよ? 単純に、感謝されるようなことをされてないだけで……こうやってお招き頂いて、準備までして貰えば当然お礼ぐらい言うわよ」

 そう言ってもう一度『ありがとう』と頭を下げてレジャーシートにちょこんと腰を降ろす桐生。その姿を『うん!』と頷いて見ながら智美と涼子も腰を降ろした。

「……それにしても……良かったのかしら?」

「なにがー?」

「だって……私は東九条君の『許嫁』よ? 貴方がたに取っては」

 チラリと俺の方を見ながら。

「……『敵』では無いのかしら? 少なくとも、好ましいと思われてるとは思わなかったんだけど?」

「敵、ね~。どうかな? 涼子?」

「んー……私としては若干腑に落ちない部分もあるよ?」

「……ごめんなさい、賀茂さん」

「わわわ! あ、謝らないで! 別に桐生さんが悪いワケじゃなくて……どっちかって言うと、浩之ちゃんのお父さんのせいだし!」

「間違っちゃいないが、あまりに親父が不憫過ぎね?」

 智美も涼子も娘の様に可愛がってたのに……この数日で親父の株価はストップ安なんだけど。

「……理由はどうあれ、中々認めにくい事では無いかと思うのよ」

「だから、『腑に落ちない』って言ったんだよ? でも、それはある意味では仕方無い事だし……まあ、諦めるつもりは無いけど」

「……そう。それで? 鈴木さんの方はどうなの?」

「わはひ?」

「こら! 何勝手に食ってんだよ!」

 勝手に弁当箱を開けて唐揚げをつまみ食い中の智美が、口に唐揚げ突っ込んだままそう返答する。いや、おまえ、こういう時は全員そろってからだろうが!

「……んぐ。そうだね~?」

 そう言って腕を組んでうんうん唸る。

「……ま、敵か味方かって言われれば『敵』だとは思うよ?」

「……そう」

「でも、好ましく無いかって言われれば……別にそこまで毛嫌いしているワケじゃない」

「敵なのに?」

「うーん……なんだろう。私、バスケ部入ってるんだけどさ」

「知ってるわ。有名じゃない」

「そう? それで、バスケ部で試合に行ったりすると……まあ、会場に居る他所のチームは皆『敵』なワケ。でもね? 別にその敵が『嫌い』かって言われるとそうじゃなくて」

「……ノーサイドの精神って事?」

「なにそれ?」

「試合中は当然敵だけど、試合が終われば敵味方が無いって事よ」

「あー、それそれ。それに近いかな。なんだかんだで皆バスケが好きだから、そんなに敵だって毛嫌い出来ないんだよね」

 そう言って卵焼きを摘まむ智美。だから! 『いただきます』は!

「……それにさ? 桐生さんの言ってることで言えば、私と涼子なんて絶対仲良く出来ないと思わない?」

「……確かに」

「ま、バスケの話に戻せば『バスケが好き』な子はチーム関係なく味方だと思ってるよ。『バスケが好き』ならね? でも、純粋にバスケが好きじゃなくて……そうね、『バスケを利用』する子は……敵、かな~?」

「……耳が痛いわね」

「桐生さんは特殊ケースじゃない? それに、話してみて分かったけど、なんとなく悪い子じゃ無さそうだし」

「そうかしら?」

「だって普通に喋れるし。『悪役令嬢』って呼ばれてるのが嘘みたいだもん」

「……そのあだ名は私、あんまり好きじゃないの。申し訳ないけど、そう呼ぶのは――」

「ああ、勿論呼ぶつもりは無いよ。でもまあ、そう呼ばれてるのは知ってるでしょ?」

「勿論よ。陰に日向に『悪役令嬢』と呼ばれているもの」

「やっかみの部分が多いのは知ってる?」

「でしょうね。自分で言うのもなんだけど、私は優秀だから。当然、やっかみも受ける」

「接し方を変えようとは思わないの、桐生さん? それだけで、随分皆の態度は変わるよ?」

 首を傾げながらそういう涼子。その姿に、なんだか疲れた様に笑う桐生。

「……そうね。賀茂さんの言う通り、その方が『生きやすい』とは思うわ。でも……根っこのところでダメなのよ。なんで私が努力して得た成果を、周りの視線の為に曲げなくちゃいけないのか……そう考えると、ね」

 性分なのよ、と、苦笑して肩を竦めて見せる桐生。その姿を目を丸くしてみて、涼子と智美は視線をこちらに向けた。

「……んだよ? どうかしたか?」

「いや……」

「なるほど、と思って」

「? どういう意味?」

「ううん、こっちの話。ただ、なんとなく『わかった』だけ」

「わかった?」

「こっちの話! それより、桐生さん? あの――」


「――ああ! こんな所にいた!」


 突如、屋上の扉がバーンと音を立てて開く。すわ、何事かと視線をそちらに向けると。



「やっほー、浩之せんぱーい! 一緒にお昼しましょー!」



 ツインテールのちびっ子が、そこに立っていた。


『面白い!』『面白そう!』『続きが気になる!』『っていうか続きはよ』と思って頂ければ評価などを何卒お願いします。

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