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(23)オレは弟子を取る

 演武会に出場した夜、不思議な興奮状態のまま寝つけずにいた。

 

 結局オレたちのギャラは、元々の報酬2100ゼニーに加えて1人当たり銀貨20枚の手当が支払われた。

 ピンピンの太っ腹具合には脱帽、と言うか感謝しかない。

 

 3人合わせて6300ゼニー+銀貨60枚。

 前日の荒稼ぎの更に上を行く66300ゼニーの収入となった。

 

 眠れないのはそのせいで興奮しているのもあるかもしれないが、やはりピンピンと戦った時の感覚がまだ体に残っているのが大きい。

 

 武器を持たず身ひとつで戦った時のあの妙にフィットした感覚。

 前日魔物と戦った時とは自分の動きが全く違っていたように思う。

 

 一体その差は何なのか。

 調子の良し悪し以外の要素で他に考えられるのは?

 武器の有無、人間相手と魔物相手、実戦と試合、観客の有無……。

 

 考えても考えても答えは出ない。

 

 空が白み始めるまで悶々としていたのだが、さすがに体が睡眠を欲したのかいつの間にか眠りに落ちていた。



*****



 明くる日、宿で軽く食事をしてからオレたちはまず冒険者組合へと出かけた。

 オレひとりだけ眠い目をこすりながら。


 組合の中に入るとやはり視線が集中する。

 しかも今までとは段違いの熱い眼差しだ。

 

 昨日まではどちらかというと色モノ扱いだったのが、今朝はほとんど英雄扱い。

 演武会を見ていた冒険者、またはその噂を聞きつけた冒険者が多数いるのだろう。

 

「いらっしゃいませ。森のジュリアスのみなさま、お待ちしておりました。さぁ奥へどうぞ」


 すぐにセレナがやって来て奥へと案内された。

 階位認定の件の結果でも出たのだろうかと思っていたらまさしくその話だった。

 

「昨日のうちに階位の討伐認定について承認が下りています。みなさんの場合、大勢の証人がいたのもあって申請内容の真偽確認が済んでいたのが幸いでした」

「で、私たち何級になったの?」


 待ち切れずにジュリアが尋ねる。

 

「はい。ジュリアさん、アスカさん、ロビーナさん共に5級冒険者に認定されました」

「5級……」


 考え込むジュリア。


「すみませんセレナさん。5級の根拠は何ですか?」


 グリードが第3等級であるのを考えると、それを倒したオレたちが5級というのはやや納得がいかない気もするので一応聞くだけ聞いてみる。


「はい。実は討伐認定による階位認定では、昇級幅は最大でも3階級までという制限があるのです」


 なるほど、一番下の丙からは乙・甲・5級までが限界という事か。

 それなら5級でも仕方ないわな。

 

「でも第3等級の魔物を倒したのに5級止まりなんて……」


 ジュリアはまだ納得がいかないようだ。

 ロビィは特に表情の変化がないので何を考えているのか不明。

 

「私個人としても同感ですが、冒険者組合の規則ですのでそこは御理解願います」


 セレナが申し訳なさそうに頭を下げる。


「あ、いえ。セレナさんが謝る事じゃないです。こっちこそごめんなさい。せっかく手続きしてくださったのに」


 ジュリアも頭を下げる。

 

「それが私の仕事ですから。その点についてはどうかお気遣いなく」


 セレナが軽く微笑んで答えた時、ロビィが口を開いた。


「次また第3等級を倒したら今度は何級になりますか?」

「はい。これまでの例から考えますと少なくとも3級は確実かと」

「そうなの? ならもう1回倒せばいいのね。なぁんだ」


 ジュリアがあっさり納得した。

 オレ自身もその言葉ですんなり受け入れられた。

 ロビィの慧眼……なのか偶然なのかはわからないが、とにかくナイスだ。

 

「ところで、みなさん昨夜は随分と御活躍だったそうですね。私も直接拝見したかったのですが仕事で……残念です」


 セレナまで昨日の演武会の話を知っているのか。

 いや、よく考えればセレナともあろう人がそんな情報を入手していないはずもないのだが。

 

「まぁあれはちょっとした暇潰しというか、気まぐれみたいなものだったので」


 ジュリアが照れて謙遜するが、その発言はプンクルの人達に失礼だぞ。


「直接見たという方々から色々と話を聞きました。今朝の組合の待合室もその話で持ち切りでしたよ」


 セレナが言うからにはそうなのだろう。

 ちょっと予想以上の反響にオレも不安になってきた。


「注目されるようになるのは何かと大変かもしれませんが、これからも御活躍される事を楽しみにしています」


 そう言うと新しい赤札を3枚、オレたちの黒札と交換して部屋を出て行った。

 

「赤札か……」


 手に取ってみたものの、特に何が変わったわけでもないのでいまいち実感がない。


「いいじゃない。森のジュリアスは全員5級冒険者の赤札。これで今までより箔が付くわ」

「赤は好きな色です。黒は好きではなかったので嬉しいです」


 ロビィの感性はいつも独特で面白い。



 赤札になったオレたちが再び待合室に戻ると、改めてどよめきが起こる。

 さすがは冒険者たち。

 目ざとく札の色の変化に気付いたらしい。

 

 特に目ぼしい依頼も出ていなかったので、売店で魔鉱石の指輪を購入して(ロビィから借りたヤツはダメになってしまったので)そのまま組合を出た。

 

 その足で町の外へ。

 人目につかない林の奥まで行き、3人で魔法の稽古をする事にしたのだ。



 オレは主に魔法の制御中心。

 といっても何をどうしたものやら。

 2回ほど魔法を発動したら、買ったばかりの魔鉱石の指輪があっという間に黄色がかっているのを見て暗澹たる気持ちになる。


「器に水を入れたと考えてください。器に大きな穴を開けたら、一度にたくさんの水がそこから流れてしまいます。でも、小さな穴だとしたらどうですか?」


 ロビィがいきなり例え話をして来た。


「え? 水? 水の量は少ないけど勢いよく流れる?」

「そうです。アスカの魔法は大きな穴から流れてしまっています」

「それを小さく抑えろってこと?」

「そうです」


 なるほど、わかりやすい……ような気がする。

 だが、

 

「それってどうやればいいの?」

「自分で身につけるしかありません。言葉で教えられるようなものではないのです」


 はぁ~、そっか~、ラクはできないもんだねぇ。


「でもさ、ロビィ」

「なんですか?」

「大きな穴の方がいい場合ってのもあるんじゃない?」

「いいえ、穴は小さい方がいいです」


 ん、ごめん。ちょっとオレの心の中でだけ脱線してみた。

 詳しくは説明しない。


 後は自分で色々試しながら体で覚えるしかないという有難いお言葉をもらって練習に励むのみ。

 ひとりでコツコツね。はいはい。



 一方のジュリアは雷属性の魔法。

 オレの雷竜(ライトニングドラゴン)を習得するためらしい。

 言っちゃなんだが草生えるわ。

 苦手の克服は一朝一夕に克服できるよなものではないのだよジュリア君。

 

 先程から何やらパチッ、パチッと静電気のような音がしてくる。

 

「調子はどう? ジュリア」

「ちょっと黙ってて。今集中してるところなんだから」


 パチッ。


「ジュリア。もう少し自分に近いところに出すイメージでやった方がいいです」


 ジュリアへもロビィの有難いお言葉が。

 

「え……近く?」


 なんだかもじもじしているジュリア。


「怖いの、ジュリア?」

「怖くないわよ」

「じゃあやってみれば」


 もじもじ……なんだそれは! 気持ち悪い!

 

「やっぱり怖いんじゃん」

「うるさいわね。怖くないったら!」


 バチィッ!


「きゃっ!」


 ジュリアが前に出していた右手を引っ込めて後ろに2,3歩後退りをする。


「おっ、今のはいいんじゃない?」

「はい。さっきより良くなってきました。今度は手の中で雷を作るイメージでやってみましょう」

「手、手の中……?」


 喜びも束の間、完全にびびっているジュリア。


「あの魔法だけど、オレの場合は自分の体の中から外に出て行くイメージでやってるからそれが出来ないと絶対無理だと思うけど」

「わ、わかったわよ。やればいいんでしょやれば」


 不貞腐れたように言うジュリア。

 お、マジでやる気か?

 そういう努力家なところは素直に尊敬するわ。

 

「手の中ね、手の中……」


 ぶつぶつ呟きながら右手を前に出す。

 が、指がもぞもぞ動いている。


「うー、手の中手の中……」


 バチッ!


「きゃあっ!! いったーい……」


 涙目になっているジュリアを見ながら、ロビィと大笑いしてしまった。 

 ジュリアの方もまだまだ道程は遠いようだねぇ。


 結局この日ジュリアは何の成果も上げられなかったようだ。



 ロビィはというと、矢に魔法を帯びさせて弓を射る練習をしていた。

 もともと習得している技術だそうだが、矢を射るまでの速度や、込める魔法の強さなどの調整をしているのだそうだ。

 むむむ、なにやらひとりだけハイレベルな練習をしていて羨ましいぞ。

 

「あ、そう言えばロビィ。あの時一度だけ見せてくれた本気の攻撃、あれなんだったの?」


 まだ聞いてなかったのでこの機会に聞いておきたかった。


「あの時とはどの時ですか?」

「グリードの頭に突き刺さったやつ」

「ああ……」


 そう呟いたまま押し黙るロビィ。

 そういう所は相変わらず口が重いなぁ。

 

「一瞬弓が光ってたように見えたんだけど」

「そうですか。見えましたか」

「って事はやっぱり光ってたの?」

「アスカにそう見えたのなら、そうなのでしょう」


 もうだからやめてその禅問答みたいな答え方。

 じゃあ少し違う角度から攻めてみるか。

 

「ロビィのその弓って何か特別なものなの?」


 大きさは普通の弓より少しだけ大きいかな、ぐらい。

 真っ白であらゆる所に彫刻のような豪華な彫り物がしてあり、明らかに特別な弓のように見える。

 一番目立つのは胴の上、烏打と呼ばれる部分に付いている5つの赤い石だ。

 魔鉱石のようにも見える。

 

「この弓はパルティナムと言います」

「えっ!? パルティナムってロビィの名前だよね?」

「はい。私の家系に代々伝わる家宝の弓です」

「そ、そうなんだ……道理ですごい弓だと思った」


 とでも言うしかないだろう。

 びっくりしたわ。

 弓が、というよりロビィの家系というかそういうモノが伝わるほどの家だったなんて。

 

「その5つ付いてる石って……」

「これは魔鉱石です」


 やはりそうか。魔鉱石が付属している武器、確か魔鉱具とか言ったっけ。

 初めてみるなぁ。


「やっぱりそうなんだ。なんだか普通よりもすごく濃い赤だね」

「はい。上質な魔鉱石ほど赤に深みが出てくるのです。これは真紅の魔鉱石と言われる最上級の魔鉱石です」

「そ、そうなんだ。すごいんだね」


 そんな貴重なものを5つも着けている魔鉱具か。

 一体どれだけの価値があるのだろう。

 

「アスカの方こそ、いいモノを持っています」

「え!?」


 オレが何を持っているというのだ。

 ああ、オットから渡されたこの古い剣のことか。

 鞘は立派だが、重たいし剣の方はうす汚れているけど。

 

 あれ?

 もしかして話題すり替えられた?


「その剣はこのパルティナムに劣らぬ武器だと思います。アスカに記憶がないために使いこなせていないだけです」

「うっ、それを言われると申し訳ない」


 本当にアスカはこの剣の使い方を知っていたのだろうか。

 もしオレが使いこなせず、宝の持ち腐れにしてしまっているのだとしたら、本当に情けない話だ。

 この剣を使いこなせるようになるのも、オレの課題のひとつだな。


「ロビィはこの剣のことで知ってる事はないの?」

「はい。私も初めて見る剣です。それでも只ならぬ気配の逸品である事はわかります」

「どうやったらこの剣の本当の価値っていうか、力がわかるのかなぁ」

「それはアスカが自分で見つけるしかありません。鑑定士がいれば何かわかるかもしれませんが」


 鑑定士とは武具や魔鉱石、様々なアイテムを鑑定する能力と知識を備えた人物だ。

 この世界では非常にレアな存在らしく、ニセモノも横行しているという。

 

「鑑定士かぁ……。ウルズスラにはいなさそうだなぁ」

「2人でサボって何の話をしてるの?」


 ジュリアがやって来た。


「別にサボってたわけじゃないけど」

「アスカは無駄話をしていました。これは明らかにサボリです」

「なッ!」


 ロビィめ、簡単に人を売りやがって。

 こういうところが油断ならないというか、立ち回りに卒がないというか。

 伊達に176年も生きてないってことだな。



*****



 日も暮れた頃、オレたちは再び北東の公園に来ていた。

 プンクル演武会の千秋楽公演を見学するためだ。

 

 昨日の夜ほどではないが、今夜も盛況だった。


 注目の試合では、ピンピンが冒険者3人を同時に相手するという形式で大盛り上がり。

 

 冒険者は青札2人に赤札1人。立派なものだ。

 その3人が実戦用の武器を装備して戦ったのだからほとんど真剣勝負といって良い。

 

 しかしピンピンは圧倒的に強かった。

 こうして観客として見ているとその凄さがわかる。

 冒険者とのスピードの違い、技のキレの違い、何より技の威力の違いが歴然。

 

 しかも、その状況でもピンピンはショーとしての体裁を考えた立ち回りをしている。

 冒険者たちにも見せ場を作ってやりつつ、それを全てかわして最後は圧倒したのだ。

 

 それなりに腕に自信がある者たちだっただろうに、きっとその自信は粉々に打ち砕かれてしまったに違いない。

 

 あれ? よく見ると赤札の冒険者って、昨日の午前の部で善戦していた男の子じゃないか。

 二度目の参戦とは度胸があるというか怖いもの知らずというか。

 こういう子は成長したらきっと怖いよなぁ、うんうん。

 

 試合終了後の拍手喝采の中で、ピンピンがこちらを見た気がした。

 この観衆の数だからオレたちと認識できたかどうかは知らないが、一応こちらも手を振っておいた。

 

 放っておくとまた人に囲まれてしまうので、ピンピンがまだ何かしゃべっている間に会場を出る事にした。

 入って来る時に大騒ぎになって大変だったんだよなぁ。 

 有名人の苦労ってヤツをこんな形で知る事になろうとは。

 

 

 会場を出て公衆浴場へ行き、今日一日の汚れと疲れを洗い流した後はやっぱりカラテ食堂。

 

「あ、いらっしゃいませ! おばさーん、ジュリアさん達が見えたわよ」


 店に入るといつものようにディアナがビビアンにオレたちの到着を知らせる。

 そして、いつもの場所に案内してくれる。

 

 入口から席へ移動する短い間にも、店内の視線が集中するのがわかる。

 みんながオレたちを見て噂している。

 それはこのカラテ食堂でも例外ではない。

 

 もしここが元の世界だったら、スマホでパシャパシャやられまくっていたに違いない。

 そしてツイッターやSNSに居所を晒されて更に人が群がって来るという悪循環。

 

 それに比べたらこんなの、別にどうってことない。

 慣れてしまえばこっちの勝ちなのだ。

 

「それじゃ、今日もゆっくりして行ってね」


 ディアナが一旦下がる。

 毎日のように通いつめた結果、ここはもうひとつの我が家同然となっていた。

 ディアナもビビアンもよく行き来する親戚、みたいな感じ。

 こっちの飲食に関する好みもほぼ完全に把握されたと思う。

 

 こうして席に座ると勝手に料理や酒が振る舞われ、時々こちらからリクエストして別途持ってきてもらう的な感じでいつもやっているのだ。

 

 一通り食べ終わり、後はじっくりゆっくり飲みながら御歓談という段になってイヤな客がやってきた。


「よぉ、嬢ちゃんたち。久しぶりだな」


 そうでもねぇよこのヤロー。

 一昨日あったばっかじゃねぇか。


「なんだ、誰かと思ったらタダ働きのホークじゃないか」


 強烈な皮肉をぶつけたつもりなのだが、ホークの顔はニヤケたままだ。

 

「嬢ちゃんたちは随分と稼いだんだってな。オレにも一杯奢ってくれよ。それくらいいいだろ」

「なんでアンタなんかに!」


 ジュリアが喧嘩腰で立ちあがる。

 今にもホークに掴みかかりそうな勢いをロビィが押し留める。


「まぁまぁそんなにカッカしなさんな。金持ち喧嘩せず、じゃないのか」

「私たちにお金が幾らあったとしても、お前に恵んでやる義理などありません」


 ロビィもいつになく辛辣なお言葉。

 あの時治癒してあげた人と同じ人物とはとても思えませぬ。

 

「おー、相変わらず森の民様は当たりがきついねぇ。ところで昨日も随分と稼いだって聞いたが、本当なのか?」


 さすがにホークも耳にしていたか。

 いや、逆に見られてなくて良かった。

 こいつにはあまり手の内を知られたくない。

 何故かは知らないが本能的にそう感じるのだ。

 

「アンタには関係ないでしょ!」


 怒鳴るジュリアを無視してこちらを見るホーク。

 オレ?


「町の人間なら誰でも知ってるはずだ。余所で聞けよ」


 オレだって優しく教えてやる義理はどこにもない。

 

「あ~あやだねぇ~。ちょっと有名になるとお高く止まりやがって。オレなんかと話は出来ねぇってか。いやいやこいつは御見逸れしたねぇ」


 いちいち腹立つなぁこの男。

 やっぱ1回ぶちのめしておかないと気が済まないかも。


「おっといけねぇ」


 急にホークが首をすくめて身を隠すような姿勢になった。

 同時に今しがたまでふてぶてしかったホークの様子がコロッと変わり、そそくさと逃げ出すように店の裏口の方へ姿を消した。

 

 一体何が起きたんだ?

 不思議に思って店内を見回すと―――あッ!!??

 

「みなさんこんばんは。今日も見に来ていただいてありがとうございました」


 ピンピンだった。

 オレと目が合うとツカツカとオレたちの席までやってきて先程の言葉と共に一礼をしたのだった。

 

「ピンピン。どうしてここへ?」


 聞かずにはいられない。

 

「町の人達に聞いたらたぶんここだろうと言われました」


 げげ! 町の人達にオレたちの動向バレまくりじゃん。

 ツイッターもSNSもない世界なのになんで? どうして!?

 

 じゃなかった。

 そういう事じゃなくてここに来た理由が知りたいんだけど。

 

「まぁまぁ。せっかくピンピンが来てくれたんだから。一緒に飲も! さ、座って座って」


 席を勧めるジュリア。

 まぁちょうどあと1人座れるんだけどね。

 

「はい。ありがとうございます」


 遠慮なく座るピンピン。

 スリットから見える太腿がめっちゃ気になるんですけど!

 おかしいなぁ、昨日戦った時には全然気にならなかったのに。

 

 早速ジュリアが今日見た試合の感想をピンピンに語る。

 

「見たわよ、あの試合。すごかったわ」

「いえ、私なんかアスカさんの足元にも及びません」

「え、オレ?」

「昨日は本当に鼻っ柱をへし折られましたから」

「あ~いやごめん」

「どうして謝るのですか? それだけ強いんですからもっと堂々としてください」

「そうかな。ははは」


 そんな事言われても困る。


「ピンピンは本当は私と戦いたかったのですよね」


 ロビィが蒸し返す。

 おいおい今は止めて差し上げろよ。

 

「あ、はい。ロビーナさんとは機会があれば是非一度お手合わせ願いたいです」

「いつでも受けて立ちます」

「私は!? 私とはやらないの?」


 ジュリア、そういう子供みたいな対抗意識は止めた方がいいよ。


「ジュリアさんも是非。名高い森のジュリアスの3人と個別で立ち会う事が出来ればこんな嬉しい事はありません」

「ふふっ、じゃあ約束ね。今度私とも試合すること!」

「よろしくお願いします」


 なんと、2人とも試合の予約完了とか。

 ピンピン人気ありすぎだろ。

 

 それにしてもちょっと気になる。気になるからには言わずにいられない。


「ピンピン、そろそろその畏まった話し方やめなよ。普通にしゃべろう」

「そうよピンピン。私たち、もう友達じゃない」

「私もそれには同感です」


 ピンピンは一瞬驚いたような顔をした後、すぐに破顔した。


「ありがとう……ありがとう」


 二度目のありがとうを言うまでの間に一気に涙が溢れた。

 涙を手の平で拭いながらしゃくりあげるピンピン。

 

 え? 何故泣く?


「どうしたのピンピン?」


 こういう時でも遠慮なく斬り込むところがジュリアらしい。

 

「ううん。なんでもない。なんか急に安心しちゃって」

「そっか、なんたって座長だったんだもんね。今日で無事終わってほっとしたんだよね」

「え……ああ、うん」


 あちゃー、たぶん違ってるよジュリア。

 いや、そのボケすら計算されたものだとしたらそれはそれで驚きだが。

 

「はい、こちらサービスのホプスです。どうぞごゆっくり」


 絶妙のタイミングでディアナがピンピンの横にお酒を置いていった。


「サービス? 私何も頼んでないけど」

「いいのいいの。このお店は私たちの親戚みたいなものだから」

「親戚?」

「いいからいいから。さ、お酒持って。かんぱーい!」


 ジュリアの音頭で4人で乾杯すると、そこからはもう打ち解けた会話になった。

 当然まだよく知らないピンピンの話題が中心になっていく。

 

 ピンピンの実家はプンクルの宗家で父親が師範であること。

 物心ついた頃からプンクルの稽古をしていたこと。

 10歳から当時の師範代について演武会に同行していたこと。

 師範代になった15歳の時から演武会の座長を任され、このウルズスラへ毎年来ていること。

 セイランという弟がひとりいて、どちらかが将来道場を継ぐ予定であること。

 どちらかというと自分は師範向きではなく、世界中を旅しながらプンクルを広めたいという夢のこと。

 そのことで父親とは揉めていること、などなど。

 

 一旦心を開いたピンピンはよくしゃべるしゃべる。

 お酒の勢いもあったかもしれないが、意外な一面が見られた気がした。

 オレたち3人が結託して質問責めにし、ピンピンに質問する余地を与えなかった的な雰囲気も若干あったが。


「ところでピンピンって歳はいくつなの?」


 ジュリアが思い出したように聞く。

 オレもそれは気になっていた。


「17よ。ジュリアは?」

「ええ~~~ッ! ピンピン年下だったの? 私18よ」

「なんだ、じゃあジュリアおばさんって呼んだ方がいいかしら?」

「失礼ね! ちゃんと年上を敬いなさい」

「は~い。で、アスカは何歳なの?」

「一応17って事になってる」

「一応ってどういうこと?」

「まぁまぁ細かいことは気にしないで。アスカは訳ありなのよピンピン」

「ふ~ん、そうなんだ」


 一応納得してくれたのかそれ以上は追及されなかった。

 ジュリアサンキュー。

 

 しかしピンピン17だったとは。

 最初見た時の印象だと20過ぎててもおかしくないと思ってただけに驚いた。

 だが、今こうして接していると確かに年相応に感じる。

 

 座長の時はちゃんとそれらしくしていたんだな、きっと。

 

「ロビーナさんは?」


 ピンピンが今度はロビィに矛先を向けた。

 なぜロビィだけさん付けなのか。


「今年で176年目になります」

「……ひ、ひゃくななじゅう……えっ!?」


 森の民が長寿であることを知らないのかピンピン。

 それとも酒の席の冗談とでも受け取ったか。

 

「それじゃピンピンの価値観だとひいひいおばあちゃんでも足りないんじゃない?」


 ジュリアが調子に乗って蒸し返すが、それは自殺行為に等しいだろオイ……。

 

「あ……なんでもないなんでもない。冗談よ、冗談。あ、ディアナ! チュールのおかわりお願い!」


 ロビィの殺気に気付いたジュリアが慌てて誤魔化す。

 

 一瞬で場の空気が覚めてしまったじゃないか。

 どう責任取ってくれるんだよジュリア。

 

 その時、ピンピンが意を決したかのように口を開いた。


「あ、あの!! アスカさんに折り入ってお願いがあるんですけど……」


 だんだん声が小さくなっていく。

 しかもまた口調が逆戻りしてるし、何だよ急に改まって。

 

「お願い?」

「はい。あの……」


 と言ったきりなかなか先が続かない。


「なになに? もしかして森のジュリアスに入りたいのピンピン? それなら私に言ってくれないと……」

「違うんです!」


 即座に否定され、気勢を殺がれるジュリア。


 すっとピンピンが立ちあがると、テーブルの横に移動して背筋をまっすぐ伸ばすとそのまま頭を90度以上倒して大声で叫んだ。


「アスカさん! 私を弟子にしてくださいッ!!」


 ――――一瞬何を言われたのか理解できなかった。

 

「はぁ? 弟子ってなんのこと?」


 ジュリアも一呼吸置いて気の抜けた声を出した。

 ロビィは身じろぎもせずピンピンを見詰めている。

 ちなみにもう怒ってはいないようだ。たぶん。


「どういうことかな、ピンピン」


 未だに理解が追いつかないオレはそう聞くしかなかった。

 するとピンピンが腰を曲げたまま頭だけ少し上げてまっすぐオレの目を見ながら言う。


「言葉通りです。アスカさんの傍に置いていただいて修行をさせてくださいッ!」


 そして再度頭を下げる。

 うん、たぶん120度ぐらい行っちゃってる。

 

「いや、修行ったってなんの?」

「アスカさんの体術の、です!」


 頭を上げずそのままの姿勢で言う。

 

 オレの体術?

 いやぁどうだろう、教えられるようなものじゃないしなぁ。

 第一オレ自身だましだましっていうか、出たとこ勝負でやってるだけだし。

 

「いや、それは無理だってピンピン」

「どうしてですかッ? アスカさんの技に私は心から感動したんです! プンクルとも違うその未知の技を私も習得したいんです!」


 ピンピンが起き上がり、拳を握って叫ぶ。

 熱いなぁ、若いなぁ。


 さすがのジュリアも二の句が継げない状態らしい。

 

「うーん、そう言われてもなぁ」


 だいたい弟子ってなんだよ。

 そんなんどう対処していいのかわからんっつーの。

 

 それに自慢じゃないがオレは人に物を教えるのは昔から苦手だ。

 いつも途中で面倒になって投げ出すか、さもなければ怒りだしてしまう性質だ。

 そもそももしそんなのが得意だったら窓際になんか座らされないだろ。

 ピンピンもリアルなオレを見たら絶対に弟子にしてくれなんて言わないに決まってる。

 

「お願いしますッ! 何でもしますッ! 言うこともききますッ!」


 うわぁ、何でもしますキタコレ。

 何をさせるんだオレ。

 

「どうするの、アスカ」

「どうするったって……う~ん」

「アスカ。人を育てることで自分も成長することが出来ます」


 突然ロビィが説法みたいな事を言い出した。

 いや、言ってる事はわかるけどさ、人には向き不向きってもんがあるんですよ。

 

 しかしここがチャンスとばかりにピンピンが畳みかける。


「アスカさん! いえ、師匠ッ!! お願いしますッ!!」


 し……なんだって?

 オレが師匠?

 

「どうするの、師匠?」


 ジュリアが茶化す。


「観念するのです、師匠」


 ロビィまで言うか。


「師匠ッ!!」

「師匠! ぷっ……」

「師匠」


 お前ら絶対面白がってるだろ。

 

 まぁでもそれもアリか。

 ピンピン美人だし、なんか可愛いところもあるし。

 そのスリットを毎日見られるっていうのも密かに御褒美だし。

 もしかするとそのうちラッキースケベ的なハプニングも期待できるかもだし。

 師匠の立場を利用して弟子にあんなことやこんなことを……ってさっきからロクでもない事しか考えてねぇじゃねぇかオレ!


 本当にこんなのが師匠でいいのかピンピン。


「わかったよ、やればいいんだろやれば」


 あくまでも仕方なく、自分の本意ではないのだがというニュアンスを強調して言うオレずるい。


「し、師匠ッ!! ありがとうございますッ! ありがとうございますッ!!」


 ピンピンの全力抱擁キターーーーッ!!

 

 ハグを遥かに超越してもはや完全にベアハッグだろこれ。

 くっ、苦しいッ!

 腕が、胸が、背中が痛いッ!

 

 ああでもピンピンのいい匂いがする……。

 

「ピンピン……く、くるしい……」


 かろうじて声が出た。


「あッ、す、すみませんッ! つい嬉しくて。許してください師匠!」


 ようやく解放されてげほごほと咳き込むオレの背中をさすってくれるピンピン。

 弟子に早速殺されかける師匠とかシャレにならんわ。

 

 しかし対戦した時はあまり気付かなかったがとんでもない馬鹿力だな。

 先が思いやられるぜ。


「あれ、でもそれじゃピンピンもこれから私たちと一緒ってこと?」

「そうなりますね」


 ジュリアとロビィが今更他人事のように言ってるが、そこ考えてから発言するように。


「じゃあやっぱりピンピンも森のジュリアスに入る?」

「いえ、私は師匠の弟子ですから」


 ピンピンの揺るぎない信念。

 そしてジュリアの困惑した顔。

 

 確かにややこしいな、それ。


「でも私たち明日からまたベガス親方の仕事に戻るんだけど、ピンピンはどうするの?」

「師匠と一緒に行きます!」

「でもそれじゃ報酬は出ないわよ」

「ただの弟子ですから。仕方ありません」


 うーん、真面目なのはいいと思うんだが、もう少し柔軟性が欲しいなぁ。

 仕方ない、じゃあこんな感じで。


「ピンピンって冒険者登録してないの?」

「はい師匠。私はプンクル一筋ですので」

「でもオレの弟子なんだろ?」

「はい、あ……」

「冒険者の弟子ならまず冒険者にならないと」

「わかりましたッ! 今から行って登録してきますッ!」


 言うなり食堂の外へ駆けて行ってしまった。

 行動はやっ!


 でもまだ冒険者組合開いてるかな?

 結構遅い時間だけど……。


「アスカ、ほんとにいいの?」

「いいってなにが?」

「弟子のこと」

「だって、ああでも言わなきゃ引き下がらない勢いだったろ、あれ」

「そうだけど……」


 ジュリアはやはりまだギルドの新メンバーとして迎え入れたいのか?


「ギルドメンバーではないけれど仲間? 友達? 人間の関係とは複雑ですね」

「そうだね、ロビィ」


 ロビィとジュリアで何故か納得している。

 

「でもそのうちピンピンも気が変わってメンバーになってくれるかも」


 やっぱりまだ諦めてないジュリア!

 うん、まぁ頑張って勧誘して。

 

「なんだか楽しくなりそうです」


 ロビィがそんな事言うなんて意外だったが、オレも少しそんな気がしていた。

 

「あらまぁ、有名人が揃ってるね」


 そこへバルサがやって来た。

 もちろんアンドレを引き連れて。

 

「バルサ! どうしたのこんな所で」

「どうしたもこうしたも、メシを食いに来たに決まってるさ」

「今日も魔物討伐に行ってたのか?」

「まぁね。昨日今日と4等級に当たって少しは稼げたってところだね」

「そうなんだ。アンドレは?」

「あ、ボクは……5等級を2頭ほど」

「へぇ、やるじゃんアンドレ」

「ありがとうございます」


 今度は漏らさなかったろうな、とは言えなかった。

 そこまで意地悪くないよオレも。


「まぁアタシたちがあの辺の魔物はあらかた退治しちまったから、明日っからは暇になるよアンタたち」

「そいつはどうもありがとう」

「それじゃ、アタシたちを労ってひとつ今日の晩飯はアンタたちの奢りってことでどうだい?」

「えっ!? どうするジュリア?」

「別にいいんじゃない? バルサさん達も同じ仕事してるんだし」

「人数が多い方が楽しいです」


 ロビィも賛成みたいだし、じゃあそうしよう。


「決まりだね! この隣のテーブル空いてるのかい?」

「ああ、さっき客が帰っていったからたぶん」

「よし、アンドレ座りな。たっぷり食うんだよ!」

「あ、はい。すみません、ご馳走になります」

「いいって。遠慮すんなよアンドレ」


 通路を挟んで隣のテーブルで、同じ依頼を受けた冒険者5人。

 一際賑やかになって再び酒盛りが始まる。


 バルサもオレたちの昨夜の話は噂で耳にしていたようで、実は姿を探してここに来たらしい。

 お互いに昨日今日の出来事を報告し合いながら、酒を飲む。

 当然さっきの弟子の一件も報告。


 するとそこへピンピンが戻って来た。


「師匠! 只今戻りましたッ! これで私も無事黒札です」


 冒険者組合開いてたのか。


「プッ……アハハハハハ! アスカが師匠とは傑作だね! アハハハハ」

「バルサ、笑いすぎ」


 オレとピンピンのやりとりを初めて目にしたバルサが食堂中に響く笑い声を上げた。

 ピンピンもびっくりしてバルサの方を見る。


「師匠、こちらの方はお知り合いですか?」

「ああ、ごめん紹介するよ。こちらはバルサ。同じベガスの依頼を受けてる冒険者だ」

「バルサだよ、よろしく新弟子さん」


 立ちあがって握手を求めるバルサ。

 その手を取るピンピン。


「そんでこっちがアタシの相棒のアンドレだよ」

「アンドレです、よろしくお願いします」


 アンドレは立ちあがらず、座ったままちょこんと頭を下げる。


「リー・ピンピンです。師匠の弟子になりました。よろしくお願いします」


 ピンピンが改めて挨拶すると、弟子のくだりでまたバルサが噴き出す。

 

「バルサ、もういい加減にしろよ」

「すまないね、ちょっとツボに入っちまったよ……ハハハ」


 まだ軽く笑ってるじゃないか。

 そのうちピンピンが激怒しても知らないぞ。


「とりあえずピンピンも座りなよ」

「あ、はい師匠」

「ぷっ……クククク」


 もうやっちゃっていいぞ、ピンピン。

 むしろやれ!

 

「そう言えばあんたたち、ちょっと見ない間に有名になっただけじゃなく、階位まで上がってるじゃないか」


 バルサがオレたちの赤札を見て突っ込んできた。


「あ、そう言えばアンドレも昇級したんだろ?」


 そう言ってアンドレの札を確認するが、赤のまま。


「え、なんで赤札のまま?」

「それが聞いておくれよ。この子ったら赤札のままでいいって言い張って討伐認定の申請を断ったんだよ」

「エエ~~~~~ッ!?」


 オレとジュリアがハモって叫んだ。

 ロビィは静かにアンドレの顔を見詰めている。


「なんで? なんで申請断ったの? 昇級したくないの?」


 ジュリアが矢継ぎ早に質問する。

 

 当のアンドレは困った風な表情で頭を描きながらモジモジしている。


「アンドレ?」


 促すと、仕方ないなぁといった感じでやっと答えてくれた。


「ボクは今度の昇級試験で上がるつもりだから。この間のグリードはまぐれみたいなものだし、あれで昇級しちゃったらなんだかずるしたみたいでちょっと……」


 その理屈だとオレたちだってずるした事になってしまわないか?

 真面目なヤツだとは思ってたが、ここまでクソ真面目だったとは。


「この子は言い出したら聞かないところがあってね。ま、好きにさせてやるさ」


 バルサも諦め顔だ。

 

 なるほど、地道に一歩一歩か。

 それも悪くない。

 

 ここで突然思い出した。


「そう言えばピンピンにちょっと聞きたい事があるんだけど」

「はい、何ですか師匠」

「もしかしてホークと知り合いだったりする?」

「ホークというのはホーク・バンデラスの事ですか? それなら知っています」


 ビンゴだ!

 

「やっぱり! どういう知り合いなの?」

「2年ほど前ですが、うちの道場でしばらく稽古をつけていました。父が面倒を見てやれと言うので私が指導していたのですが、ある時ふっといなくなってしまって、それきりです」


 ははぁ~ん、何となく読めてきた。


「指導って、ピンピンがホークにプンクルを教えてたの?」


 ジュリアが割り込んでくる。


「はい、そうです。見かけに寄らず筋が良かったので、割と早く上達しました」


 あのコンガと戦っていた時の動きはやはりプンクルだったのか。


「じゃあホークはピンピンの弟子だったってこと?」


 ジュリアの言ったその一言がオレの神経に何故か触った。


「はい、そうなります」

「ちょっと待てピンピン。てことはだ、ホークはオレの又弟子ってことになるのか?」

「言われて見るとそうですね。そうなります」


 ぐへぇ、勘弁してくれ。

 あんなのが弟子の弟子だなんて……気持ち悪ッ。


「ピンピン、今すぐホークのやつを破門にしてくれ」

「師匠、どうしたんですか急に。 ホークとはどういう知り合いなんですか?」

「実はさっきピンピンが最初にここに来る直前までホークのやつがここにいたんだ。それが、ピンピンの姿を見るなり裏口から逃げていったからちょっと気になってて」

「ああ、さっきのホークのあれってそういう事だったの?」


 ジュリアも思い出したというように納得した表情。

 

「へぇ、アンタその若さであのホークの師匠ねぇ……」


 バルサが感心したような、でもまだなにか納得できないかのような表情で呟いている。

 

 ピンピンはちょっと小首を傾げて軽く受け流す。


「じゃあ明日は感動の再会ってわけね。知ってた? ホークも同じ仕事してるのよ」


 ジュリアが面白そうに言うとピンピンも楽しそうな、もといギラギラした顔になる。


「そっか。もう2年も会ってないから久しぶりだわ。私が教えた技が鈍ってないか確かめないと」


 おおこわっ。

 ピンピンにしごかれるホークの姿が目に浮かぶ。

 いいぞ、もっとやれ!


 こうしてホークを肴に意気投合したオレたちは翌日の旧師弟の御対面を楽しみにしつつ、大いに飲み大いに語った。


 本当に心の底から楽しい一夜だった。

 

 そして、ピンピンがオレの弟子になった記念すべき夜になった――――。

読んでいただきありがとうございます。

またもや一回分の最長記録を更新してしまいました。

ダメですね、もう少しシェイプアップ出来れば良かったのですが。

とにかく、アスカが師匠になりました(笑)。

弟子のピンピンも加わって、今後は4人の話になっていきます。

引き続き応援よろしくお願いします。

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