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魔法潜水艦オシリス  作者: 天空ヒカル
文明の終焉、あるいは・・・
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第8話 【特別声明】

『・・・番組の途中ですが、ホワイトハウスよりヒューム大統領の特別声明を放送します。』


直前まで通常のスポーツ番組が放送されていたアメリカABCテレビの画面が突然ニュースセンターに切り替わり、緊急放送の予告が開始された。


これはABCテレビに限られた事態ではない。


全米のテレビ・ラジオネットワークは、ABCテレビと前後して通常の番組編成を中断し、次々とホワイトハウスの大統領危機管理センターにある放送施設との生中継に切り替わった。


主役である大統領は()だ姿を現していない。


画面に映っているのは無人のスピーチ台のみである。


それにもかかわらず、画面からは異常な緊張感が(ただよ)っていた。


簡単なメイクを終えたヒューム大統領は既に舞台裏に(ひか)えている。


大統領の目には、(わず)か数メートル先にスピーチ台が見えていた。


これから始まる特別声明の目的は二つある。


一つ目は一人でも多くの国民の命を救う事。

もう一つは国内にパニックが起こらないようにする事。


ヒューム大統領は、相反しかねない二つの目的を同時に達成しなければならない。


圧倒的に短い準備期間の中、大統領専属スピーチライターの仕事が間に合うはずも無く、ヒューム大統領は全て自分の言葉で国民に語り掛ける必要があった。


やり直しの効かない一発勝負である。


場数を踏んだヒューム大統領であっても、勝負の舞台となるスピーチ台が、限りなく遠くに感じられた。


逃げ出す事が可能であれば、今すぐにでも逃げ出したくなるような状況だ。

しかし彼は、それが許されない事を誰よりも理解していた。


大きく深呼吸をしたヒューム大統領は、決意を固め前に踏み出した。


薄暗い舞台裏から煌々(こうこう)とライトの照らされたスピーチ台へ、彼は内心の緊張感を一切表情に表さないポーカーフェイスでスピーチ台に立つと、ゆっくりと話し始める。


「親愛なるアメリカ合衆国国民の皆さん、おはようございます。大統領のダグラス・ヒュームです。

私はここ、ホワイトハウスより皆さんに残念なお知らせをしなければなりません。

本日、我が国の防衛網は黄河民主主義人民共和国による、複数の核ミサイル攻撃を確認しました。

彼らが犯した、我が国と世界の平和と安定を損なう重大な挑戦に対し、アメリカ合衆国は(すみ)やかに正当な自衛権を行使し、彼らの野望を完璧に打ち砕きます。

我々は確実に勝利しますが、国民の生命を守るため、皆さんに対し一時的な避難を勧告します。

落ち着いて近くの丈夫な建物の中に避難して下さい。

近くに地下室や地下施設があれば、そこに避難する事が最も有効です。

私は大統領として、アメリカ国民の生命・財産を守るために全力を尽くす事をお約束します。

皆様にはどうか落ち着いた行動と避難を望みます。

アメリカに神のご加護があらん事を。」


ヒューム大統領の短い、しかし全身全霊を懸けた声明が終わった。

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