第7話 【予知夢】
- 北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)が核ミサイル発射の兆候を捉える16時間前 -
それは禍々しい光景だった。
地表にあるハッチが開き、姿を現した地下サイロの中からミサイルが発射されていく。
ミサイル発射に伴う轟音と熱風、そしてロケット燃料が燃焼する目が眩むような炎、シオリはそれらの全てをありありと感じ取る。
死の配達人は一人だけではなかった。
数え切れないほどのミサイルが、世界中に死を撒き散らすために次々と飛び去って行く。
そしてシオリは、それらが大陸間弾道核ミサイルである事を瞬時に理解する。
禍々しい光景には続きがあった。
ニューヨーク、東京、ロンドン、パリ、そして揚子江連合の首都である南京、アメリカ合衆国と同盟国の主要都市に、大陸間弾道ミサイルが次々と落下していく。
たった今まで平和の中にあったそれらの都市は一瞬で核の炎に包まれ、焼き尽くされる。
『こんな事をしてはいけない!』
シオリの強い願いも空しく、破壊は拡大していく。
そしてシオリの「交流」は、彼女の意思とは無関係に開かれていた。
それは彼女の心が、壊滅の只中にいる人々の心と直結する事を意味する。
その結果、シオリは突然の災厄に見舞われた何億もの人々の驚きと恐怖、苦しみを一身に受け止めてしまう。
それは人間が受け止められる限界を遥かに超えた、凄まじい「感情の洪水」だった。
「やめて!!」
シオリは悲鳴と共にベッドから飛び起きる。
彼女が飛び起きた瞬間、まるで安全装置であるブレーカーが落ちたように「感情の洪水」はピタリと止まった。
「ハァ、ハァ、ハァッ・・・」
心臓の鼓動は限界まで高まり、全身が冷や汗でびっしょり濡れている。
それから5分ほどかけて、シオリは何とか落ち着きを取り戻す。
あと5秒「感情の洪水」に晒されていたら、間違いなく命を落としていただろう。
まさに危機一髪であった。
彼女はベッドの脇に置かれた水差しからコップに水を注ぐと、ゆっくりと飲み干す。
「フゥー・・・」
目を閉じたまま深呼吸したシオリは、ついにその時が来た事を知る。
『これは夢じゃない・・・とうとう始まるんだ。』
彼女にとっては、随分前から分かっていた事だ。
覚悟を決めたシオリは、着替えもそこそこに、発令所に向けて走り出した。




