第3話 【疑念】
アメリカ合衆国は、その歴史上初めて「デフコン1」を宣言した。
「デフコン1」とは国防総省が定める5段階の防衛準備態勢の内 最高レベルの態勢を意味する。
1962年のキューバ危機の時でさえ、「デフコン1」が宣言される事は無かった。
アメリカは、建国以来最大の危機に直面している。
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ヒューム大統領が帰還したホワイトハウスでは、緊急の国家安全保障会議が開かれていた。
現状を説明するのは、国家安全保障担当のスコウクロフト補佐官である。
「我が国のミサイル迎撃システムが能力を最大限に発揮したと仮定して、アメリカ本土への核攻撃の80%までは防ぐ事が可能でしょう。しかし、それ以上は防ぎきれない可能性が高い。」
「被害予想を聞かせてくれ。」
「被害予想は考えたくもありませんが、恐らく敵の攻撃で我が国と同盟国が被る人的損害が7億から8億人、我々の反撃で敵が被る人的損害が4億から5億人、2時間以内には大都市を中心に世界人口の少なくとも15%程度が失われる事になるでしょう。」
「そうだな・・・全面核戦争とはそういうものだ。だが何故だ?何故帝国はこんな無謀な行動に出る?帝国の指導部は我々の報復攻撃が予想出来ない程度の判断力しか持ち合わせていないとでも言うのか?」
大統領の問いかけに対して、答えを用意できる者はいなかった。
「帝国の行動は不自然過ぎる・・・そう、まるで彼らは我々の報復攻撃など全く恐れていないかのようではないか?」
『帝国はアメリカの報復攻撃を恐れていない』
そう考えれば、一見無謀にしか見えない今回の行動について、全ての辻褄が合うのだ。
そしてそれは、アメリカにとって悪夢のような結論だった。
次回は7月10日(金)20時に公開予定です。




