第8話 【その名はオシリス】
「見たまえ、これが人類史上初の魔力特化型潜水艦、オシリスだ」
次の瞬間、薄暗かったドッグが、眩いほどに明るくなり、ついにオシリスがその全貌を現す。
目測でも全長は200mを優に超えている。
見たことも無いような、巨大潜水艦である。
アキヤマ中佐は、オシリスの船体を呆然と見渡していた。
「君が思っている通りだよ、アキヤマ中佐。ふゆしおを攻撃したのは、このオシリスだ。魔法が軍事転用されて既に40年、未だに魔法は物理装備の補助と考えられていた。いよいよ時代が変わるのだ。これからは魔法が優位になる。君はそれを一足先に体験したという事さ」
アキヤマ中佐は、返す言葉が見つからなかった。
潜水艦というものを日常的に見慣れているアキヤマ中佐にとっても、目の前に浮かんでいるオシリスは、何故か強い違和感を覚える存在である。
アキヤマ中佐は魔力特化型潜水艦について、まだ何の知識も持ち合わせていない。
しかし彼の直感は、オシリスが普通の潜水艦とは異なる事をはっきりと教えていた。
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オシリスに対面したアキヤマ中佐が次に向かったのはドッグの地下施設である。
広大なドッグは地下、つまり海面下にも施設が広がっており、その一部は直接海中に接していた。
「ここから艦底の状況が目視で確認できる」
タナカ少将に案内され、海中に接する地下施設の窓から艦底を観察したアキヤマ中佐は、思わず腰を抜かしそうになる。
「スクリューが・・・無いっ!!」
「ほぅ、気が付くのが早いな。スクリューは必要ない。魔力で進むからな。ついでに言えば、スクリューが無いからスクリュー音は発生しない。完璧な無音潜航が可能だ」
耳を疑うような情報の連発に、アキヤマ中佐のメンタルは崩壊寸前である。
『俺は、こんなでたらめな艦と戦っていたのか・・・勝てるわけが無い』
タナカ少将とアキヤマ中佐が再び地上に戻ると、先程までは誰もいなかった、オシリスとドッグを連結する桟橋の出口に、一人の青年が立っている。
「紹介しよう。彼がオシリスの艦長、ミカミユウキ中尉だ。ミカミ艦長は魔法大学の学生でもある」
紹介を受けた青年は敬礼し、にっこりと微笑む。
「艦長が、学生!?」
「フフッ、これ位で驚いていては、ここの仕事は務まらんぞ」
「では艦内を案内しよう。ミカミ艦長、また後でな」
「はい」
2人は桟橋を通り、オシリスの内部へと足を踏み入れる。




