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魔法潜水艦オシリス  作者: 天空ヒカル
第6部 危機の予兆
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第7話 【政変Ⅱ】

突然の政変から2日後


党の機関紙および国営放送は、陽主席の「病死」と、林副主席の主席就任を一斉に報道した。


陽主席の死因は心臓発作と発表された。


人民統一党の規約では、党の主席が後継者を指名せずに死亡した場合、臨時の人民幹部総会が開かれ、副主席の中から選挙で主席を選出する事になっている。


ただし例外として副主席が一人しか存在しない場合、副主席が自動的に主席に就任するため、人民幹部総会が開かれる事は無い。


今回は(まさ)にその「例外」に当たるため、公式発表が真実であれば、党の規約に(のっと)った正規の手続きにより、林主席は誕生した事になる。


こうして事件の真相は隠蔽(いんぺい)され、闇に(ほうむ)られた。


実際、陽主席には油断があったとしか言いようがない。


彼は3週間前に党のナンバー2である王副主席を解任した時点で、(ただ)ちに臨時の人民幹部総会を開き、新任の副主席を複数選任しておくべきだったのだ。


党の筆頭書記や北京市長などを歴任し、日の当たるエリートコースを一直線に進んできた陽主席と異なり、林副主席はキャリアの(ほとん)ど全てを軍事・情報畑で過ごした人物である。


陽主席にしてみれば、常識的には副主席止まりのキャリアしか持たない林副主席の事を、自分の立場を(おびや)かすライバルとは思いもしなかったのかもしれない。


典型的な党エリートである陽主席は、自分の権力を保障する基盤が(はな)やかな経歴などではなく、兵権の掌握(しょうあく)であり、王副主席解任後の状況が(みずか)らにとってどんなに危険であるかを理解していなかった。


一方、林副主席にしてみれば、陽主席にいくら忠誠を尽くしたところで、彼が自分に権力を禅譲(ぜんじょう)するつもりが無い事は明らかだった。


林副主席の選択は二つあった。


一つは現在の地位に満足する事。


もう一つは主席の地位を簒奪(さんだつ)する事。


才能があり優秀で、しかもそれを隠そうとしない王副主席に比べて、林副主席は、言われた事はそつなくこなすものの、才気が先走る事も無く、どちらかと言えば目立たない存在であった。


より正確に言えば、陽主席からそのように見える様に自己を演出していたという事だ。


実際、王副主席のギラギラした自己主張の強さを陽主席は嫌っていた。


林副主席は、その事を十分に理解しており、彼自身は陽主席に対して絶対服従のポーズを示す事で、陽主席の警戒心を買わないように細心(さいしん)の注意を払いつつ、その裏で人事を駆使(くし)する事により、軍と情報機関を完全に掌握(しょうあく)していた。


そこに最大の障害であった王副主席の失脚による、権力継承(けんりょくけいしょう)の例外状態が生まれたのだ。


林副主席はこのチャンスを待っていた。


今までひた隠しにしていた牙をむき出した彼は、一切の躊躇(ちゅうちょ)なく陽主席を排除(はいじょ)し、一気に権力の頂点へと上り詰めた。


黄河帝国は、わずか3週間で党の序列ナンバー1とナンバー2が相次いで権力の座から滑り落ちるという激震に見舞われた。


その結果、帝国には力による世界制覇(せかいせいは)を目指す、極めて危険な指導者が誕生した。


やがて世界は、混沌(こんとん)と戦争の時を迎える事になる。


第6部・了

オシリスのラストは既に決まっています。

ただ、そのゴールに至るまでの道のりをどうするかという問題があり、今も試行錯誤中です。

不定期更新の本作ですが、これからもよろしくお願いいたします。

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