第12話 【西へ】
ライト中尉が操縦するF/A-18Fは、エアフォースワンから約1マイルの距離を保ったまま、飛行を続けている。
シオリはエアフォースワンを魔力航行の支配下に置いたが、それだけでは対象物に何の変化も起こらない。
実際、エアフォースワンの機内で異変に気が付いた人は一人もいなかった。
一方、F/A-18Fの機内では、魔力航行を発動させたシオリがライト中尉に指示する。
「もうすぐ進路が変わる。それを機長に伝えて。」
「エアフォースワンの進路が変わるのですか?」
「そう。これからパールハーバー・ヒッカム統合基地へ向かう。」
「了解しました。」
ライト中尉は早速エアフォースワンに通信を試みる。
エアフォースワンの通信チャンネルは、早期警戒管制機から入手済みだ。
「エアフォースワン聞こえますか?こちらはアメリカ海軍第102戦闘攻撃飛行隊所属のトーマス・ライトです。応答願います。
エアフォースワン、応答願います。」
ライト中尉は、間もなく応答したライアン機長にシオリからのメッセージを伝えると通信を切る。
「ヤマモト少尉、エアフォースワンに連絡しました。」
「ライト中尉、パールハーバー・ヒッカム統合基地の方位を確認」
「了解。パールハーバー・ヒッカム統合基地の方位を確認します・・・基地の方位は270度、真西です。
「分かった。」
シオリはエアフォースワンを見つめながら意識を集中させ、ゆるやかに進路を変更させていく。
「・・・動いた!ライアン機長、進路変更が始まりました!」
同時刻、エアフォースワンの操縦席ではライト中尉の連絡を受けて、グラスコックピットを注視していた副操縦士が報告する。
「こちらも確認した。予告通りだな。」
それから2分後、方位が安定した事を確認した副長は再び報告する。
「機長、方位は270度。当機はパールハーバー・ヒッカム統合基地に向かっています。」
ライアン機長はキャビンに状況を報告する。
「機長より報告します。当機は現在、方位270度でパールハーバー・ヒッカム統合基地に向かって飛行中です。
これより高度3000ftまで降下します。シートベルトを着用して下さい。」
「分かった、引き続き頼む。」
ヒューム大統領とスタッフは、事態が好転した事に喜びを隠せない。
スタッフの表情は明るくなり、笑い声を上げる者さえいた。
一方、ライアン機長は厳しい表情のままである。
彼はこれからが本番である事を正確に理解していた。
エアフォースワンには最後の試練が待ち受けている。
最後にして最大の試練、着陸である。




