第6話 【転属】
タナカ司令官への報告の3日後、アキヤマ中佐に対して「ふゆしお」の艦長職を解き、潜水艦隊本部付とする辞令が下った。
これは左遷人事というより、正式な転属先が決まるまでの一時的な辞令か、さもなくば病気療養の士官に下されるような辞令である。
『この人事には裏がある』
賢明なアキヤマ中佐は、これがカモフラージュの人事である事を見抜いていた。
三週間前の攻撃から始まった、数々の不可解な出来事。
今回の人事も、それらに関係しているのだろう。
既にアキヤマ中佐は自身の立場が大きく変わる事を確信している。
1週間後、後任艦長への引継ぎも済ませ、一息ついたアキヤマ中佐の元を一人の女性下士官が訪れた。
女性下士官は敬礼を済ませると、メッセンジャーとしての任務を果たす。
「アキヤマ中佐、本日ヒトサンマルマル、呉基地内のヘリポートに出頭するようにとの命令です」
『来たか!』
発令者も目的地も告げない謎めいた命令も、今のアキヤマ中佐にとっては予想の範囲内だ。
「分かった」
アキヤマ中佐は短く返答し、女性下士官は戻っていった。
既に出発まで3時間を切っている
『忙しくなりそうだ』
慌しく出発の準備をしながら、事態が動き出した事に、アキヤマ中佐は少年のようにワクワクしていた。
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午後1時
ヘリポートに待機してたのは、長距離飛行が可能な高速タイプのヘリコプターだ。
既にローターはゆっくりと回転を始めている。
ヘリポートには先程の女性下士官も待機していた。
「お待ちしておりました、アキヤマ中佐、コザクラ一等兵曹です。こちらにお乗り下さい」
そう言うと、コザクラ一等兵曹は先にヘリコプターに乗り込む。
どうやら彼女も一緒のようだ。
『目的地は遠いのか?・・・いや、行けば分かるさ』
意を決して、アキヤマ中佐はヘリに乗り込む。
アキヤマ中佐を乗せたヘリは晴れ渡った空に舞い上がり、彼を新しい運命へと導いてゆく。




