第8話 【ライアン機長の決意】
午後4時
タナカ少将とシオリが空母ロナルド・レーガンの艦橋に戻った時には、大統領の指示は国防総省を経由して正式に第5空母打撃群全体に伝わっていた。
ノース指令は彼らのために、艦橋のすぐ近くに救出作戦のための臨時指揮所を用意してくれていた。
タナカ少将は案内された指揮所に入ると、直ちに作戦の概要をヒューム大統領に報告する。
「先程申し上げた通り、オシリスは航空機をコントロールする事が可能ですが、船舶と異なり、オシリスだけでコントロールを行う事は出来ません。
戦闘機によるエアフォースワンの監視とサポートが必要です。」
この説明は真実ではない。
実際には、シオリが乗っていないオシリスは全く無力である。
ハルカワシオリの秘密を護るため、エアフォースワンをコントロールするのは、あくまでもオシリスであるとアメリカ側に思わせる必要があった。
要するにシオリの秘密を護るための苦肉の策である。
「大統領、進行方向の制御はオシリスが行いますので、実際の着陸はエアフォースワンの機長に行って頂きます。」
「ライアン機長、聞いての通りだ。君を信頼している。頼むぞ。」
「最善を尽くします、大統領。」
ライアン機長は飛行時間が1万時間を超えるベテランパイロットである。
そんな彼であっても、自機の進行方向の制御を魔法に委ねるのは初めての経験だ。
当然の事ながら、不安が無いわけではない。
だがもはや、ライアン機長に別の選択肢は残されていない。
このままでは墜落を待つしか無いのだ。
乗員乗客の命を預かる機長として、ここで逃げるわけにはいかなかった。
『必ず成功させる』
これが生きて帰るための唯一のチャンスである事を悟ったライアン機長は強く決意を固めるのであった。




