第7話 【救出準備Ⅱ】
ヒューム大統領の出動要請から1時間後の午後3時
オシリス艦内では、タナカ司令も加わって、緊急の作戦会議が開かれていた。
タイムリミットを考えれば、オシリスがパールハーバーに入港する時間的余裕は全く無い。
そのためタナカ司令はヘリコプターとボートを使って、外洋に停泊中のオシリスに乗艦している。
現在の状況を説明したタナカ司令は、シオリに可否判断を求める。
「シオリ、ぶっつけ本番になってしまうが、エアフォースワンを安全に着陸させる事は出来るか?」
「問題ない。上から真っ直ぐ着陸させるのが一番簡単。」
「確かにその方法が一番安全だろう。
ただ、いくら閉鎖されたとはいえ、空港にはまだ多くの一般人が残っているはずだ。
VTOL機ならともかく、さすがにそれは目立ち過ぎる。
却下だ。」
「ムゥ・・・」
シオリは不満げな表情を見せたものの、それ以上反論はしなかった。
「当然の事ながらエアフォースワンを安全に着陸させるのが最優先だが、可能な限り目立たずに着陸させたい。
第三者からは、まるで通常の着陸を行っているように見えるのが理想的だ。」
タナカ司令の示した目標に対して、ミカミ艦長が解決策を提示する。
「司令、エアフォースワンは転舵が出来ないだけで、他の機能は生きているのですよね?」
「そう聞いている。」
「それならば、シオリは進行方向の制御だけを行い、速度制御と高度制御、さらには実際の着陸はエアフォースワンに任せてはいかがですか?」
「それが出来れば問題は解決するが・・・シオリ、本当にそんな事が可能なのか?」
「相手を見ながらだったら、確実に出来る。」
「そうか、分かった。しかしそうなると日没までには決着を付ける必要があるな。」
ここまで黙って話を聞いていたヨロイ少尉が作戦の問題点を指摘する。
「タナカ司令、ハルカワ大佐が進行方向を完璧に制御したとしても、エアフォースワンのパイロットが着陸に失敗する可能性は否定出来ません。
大佐が着陸までを完全にコントロールした方が良いのではありませんか?」
「ヨロイ少尉、通常であれば君の指摘は正しい。
君も知っての通り、我々はシオリの魔力航行を使って、エアフォースワンをコントロールしようとしている。
しかし、そのためにはハルカワシオリをエアフォースワンに接近させる必要がある。
高度38,000ftを飛行するエアフォースワンに接近するためには戦闘機を使う以外に方法は無い。
そして時間内にそれが可能な戦闘機は、空母ロナルド・レーガンの艦載機であるF/A-18F スーパーホーネットしかあり得ない。
しかしそれは同時にシオリをアメリカ軍の目に晒す事を意味している。
オシリスの秘密を護る観点からすると、これは極めて危険な行為だ。
だからこれ以上、オシリスの秘密を危険にさらす事は出来ない。
シオリがどんなに上手にコントロールしたとしても、通常の着陸と魔力航行による着陸は違う。
どうしても不自然さは残ってしまうだろう。それはどうしても避けたいのだ。
万一の場合は、シオリが直ちに介入して事故を未然に防ぐ。シオリ、大丈夫だな?」
「大丈夫、出来る。」
「分かりました。タナカ司令の判断を支持します。」
「よし、決まりだ。」
ヨロイ少尉は納得したが、これは本来なら、タナカ司令のみで判断すべき問題ではない。
日本政府の承認が必要である。
しかし今は非常時である。
既に日没まで4時間を切っているのだ。
日本政府に対しては事後承認で済ます事を覚悟したタナカ司令は、作戦開始を宣言する。
「直ちに救出作戦を開始する。
シオリ、軍服に着替えたら私と一緒に空母に戻るぞ。」




