第5話 【緊急出動】
その頃、何も知らないオシリスとアメリカ海軍第7艦隊所属の空母ロナルド・レーガンを中心とした第5空母打撃群は共同演習のため、ハワイ沖に展開していた。
共同演習と言っても、軍事的な意味はほとんど無く、儀礼的なものに過ぎない。
実際、演習におけるオシリスの役割は、ロナルド・レーガンの左舷1kmに浮上したら、オシリスの艦橋でミカミ艦長が敬礼し、その後30分ほど空母に随伴するだけで終了である。
オシリスクルーにとって、正直に言えば退屈な任務であった。
一方、ロナルド・レーガンの艦橋にはタナカ少将が招待されている。
タナカ少将の目前でオシリスは予定通り浮上し、艦橋からミカミ艦長が姿を現した時、タナカ少将の持つホットライン通信機が鳴動する。
「失礼」
タナカ少将は隣に立つ第5空母打撃群の司令官であるグレッグ・ノース下級少将に会釈すると、通信機を取り出す。
応答したタナカ少将は、自分が話している相手がヒューム大統領本人である事を知り、少なからず驚く。
しかし彼が本当に驚いたのは、ヒューム大統領が置かれた状況を聞いた時だった。
手短に状況の説明を終えたヒューム大統領は、自身の生死を分ける質問を口にする。
「タナカ少将、オシリスは現在の状況で8時間以内にエアフォースワンを救出する事が出来るだろうか?」
タナカ少将は一瞬の沈黙の後、結論を伝える。
「大統領、救出の対象が航空機となると、オシリスだけで対応する事は困難です。
ただし、第5空母打撃群を中心としたアメリカ軍の全面的な協力が得られれば、エアフォースワン救出は可能かもしれません。」
「もう一度確認したい。君は今『エアフォースワン救出の可能性はある』と言ったんだな?」
「その通りです、大統領。可能性はあります。」
大統領は直ちに、オシリスの出動を正式に要請する。
「タナカ少将、合衆国政府はオシリスに関するアメリカと日本の秘密協定に基づき、オシリスの緊急出動を要請する。
アメリカ軍の全面的な協力は、アメリカ大統領の責任において、私が保証する。」
「要請を承りました。
オシリスは協定を誠実に遵守し、エアフォースワン救出のため全力を尽くします。」




