第3話 【タイムリミット】
「メーデー、メーデー、メーデー、こちらはエアフォースワン、エアフォースワン、エアフォースワン。
メーデー、エアフォースワン。現在当機は操縦不能の状態にあります。当機の位置は北緯・・・」
ライアン機長が遭難信号を発信している間、ヒューム大統領とそのスタッフはショックから立ち直れないでいた。
『操縦不能!』
衝撃的な機長の報告に、キャビン内の全員が凍り付いている。
間もなく遭難信号の発信を終えた機長は、報告を再開する。
「機長から報告します。当機は操縦不能ではありますが、油圧コントロールは生きており、燃料も十分に残っています。
現在の高度は38,000ftですので、直ちに墜落する心配はありません。
また補助翼が固定されているため、当機は現在のところ旋回飛行を続けています。そして・・・」
機長の報告を遮るように、スコウクロフト補佐官が質問する。
「旋回飛行?、つまり同じところをグルグル回っているだけなのか?」
「その通りです。燃料が無くなるまでは、このまま飛行を続ける事が可能です。」
「ライアン機長、燃料が無くなった後なら、エアフォースワンを海上に不時着させる事が出来るのではないか?」
「残念ながら不時着は不可能です、スコウクロフト補佐官。」
「なぜ不可能なんだ?」
「海面への不時着は高度な技術と精密な姿勢制御が揃って始めて実現可能ですが、それでも危険が伴います。
補助翼を動かす機能を失い、真っ直ぐ飛ぶ事が出来ない当機が海面への不時着に挑む事は自殺行為に等しいでしょう。」
「具体的には、どうなると言うんだ?」
「・・・旋回しながら着水した機体はバランスを失なってひっくり返り、バラバラに破壊される事が予想されます。」
「何という事だ・・・」
言葉を失ったスコウクロフト補佐官の代わりに、ヒューム大統領が機長に話しかける。
「状況は分かった。ライアン機長、君の意見が聞きたい。」
「大統領、現在の高度を維持して飛行を続ける事が、現状では最も安全です。」
「どれ位の時間が稼げる?」
「エンジン出力を最低限に絞れば、あと8時間は飛行が可能です。」
『あと8時間・・・』
残された時間のあまりの少なさに、その場の全員が戦慄する。




