第1話 【失なわれた長遠】
チャーリー盗難事件の1ヶ月後、帝国の首都・北京にある国家指導部専用居住区の中央に位置する王副主席の広大な邸宅では、2人の男が密談を行っていた。
「それにしてもまずいことになりました、副主席。」
「信じがたい事態だ。もう少しで核魔法兵器の秘密が手に入るはずだったのに、まさか我が国の最新鋭艦である長遠3号がハワイ沖で消息不明になるとは・・・
作戦成功を確実にするため、核魔法兵器の運搬に長遠を投入した事が裏目に出てしまった。」
「未確認ながら、長遠3号がアメリカに拿捕されたという情報もあります。」
「もしそれが事実であれば、我々は完全に終わりだ。
良くて強制収容所送り、そうでなければ銃殺刑になる。」
「だが、それが事実でなかったとしても、我々が極めて不利な立場にある事に変わりはない。
私が最高責任者として推し進めた核魔法兵器奪取計画が失敗した上に、我が国に3隻しかない最新鋭潜水艦の一つを失ってしまった。
林副主席がこのチャンスを見逃すはずが無い。
このまま何もしなければ、来年の人民幹部総会で間違いなく我々は失脚するだろう。
我々はそれまでに今回の失点を帳消しにするような成果を上げなければならない。」
「王副主席、やはり例の作戦を実行するのですね。」
「そうだ。立案した時は、まさか本当に実行するとは思いもしなかったが、こうなった以上、選択の余地は無い。『彼』には退場してもらう。」
「分かりました。直ちに実行部隊を編成し、準備に入ります。」
チャーリーを巡る帝国とアメリカの戦いは、オシリスの活躍によりアメリカの完勝で終わった。
一方、敗北により追い詰められた王副主席は、自らの保身のため、更に危険な賭けに打って出ようとしている。
この日、帝国とアメリカの宣戦布告無き戦いは再開された。




