第7話 【密約締結】
日本時間の午後10時、神楽坂の料亭から滞在先である赤坂のホテルに戻ったアンダーソン中将は、第2回交渉の結果を大統領に電話で報告した。
「そうか・・・これほどの条件を示しても、オシリスの提供を断ってきたか。」
「ええ、そもそも日本側が示した条件が不自然です。
最初に示した条件という点を差し引いても、あまりにも日本側に有利な条件であり、まるで交渉の決裂を初めから望んでいるかのような内容です。
しかも条件が受け入れられない場合、彼らは交渉を打ち切ると明言しました。
つまり彼らはオシリスが核魔法兵器以上の価値を持つと考えている事になります。」
「これで決まりだな。」
「はい、向こうの条件を丸呑みしましょう。
確かに日本側に有利な条件ですが、逆に言えば、我々が条件を全て受け入れた場合、もはや彼らは断る事が出来ない。
日本政府が条件を示した時点で我々の勝利です。
起爆ユニットの魔法式が暗号化されている以上、彼らが核魔法兵器のコア技術を手にする事はありません。
何しろ魔法式の秘密は彼ら自身が守ってくれましたからね。」
「日本政府にオシリスの存在を認めさせ、更にはオシリスが我が軍に協力する事も約束させた。
その一方で、核魔法兵器のコア技術は日本に流出しない。
我々は今回、十分満足のいく成果を得る事が出来たと言えるだろう。
アメリカ外交の勝利だな。」
「それでは早速、日本側に我が国の返答を伝えます。」
アメリカ政府は今回の交渉結果を自国の勝利と捉えている。
しかしそれは、ハルカワシオリの秘密を守ることが出来た日本政府も同様である。
こうして互いの知恵の限りを尽くした外交戦は、両者引き分けの結果に終わった。
その2ヶ月後、日米両国の正式協議が決着し、オシリスと核魔法兵器に関する密約が結ばれた。
第3部・了




