第6話 【前提条件】
前回の日米交渉から5日後
東京・神楽坂の料亭「椿」にて、再び日米の非公式交渉が行われた。
今回は日本側が交渉場所を指定し、アンダーソン中将を呼び出している。
日本側の交渉相手は、タナカ少将である。
2人は簡単な挨拶を済ませると、早速本題に入った。
「アンダーソン中将、我々は貴国の提案を検討させて頂きました。
残念ながら、オシリスの提供は不可能というのが日本政府の結論です。」
「何故、オシリスの提供が不可能なのでしょうか?
理由を教えて頂ければ、譲歩が可能かもしれません。」
「これは決して貴国の譲歩を引き出すための材料ではありません。
貴国との交渉を行うための前提条件とお考え頂きたい。
その上で、我が国は先日のチャーリー盗難事件と同じように、今後もオシリスを貴国に協力させる用意があります。」
「タナカ少将、あなたは今『前提条件』と言われました。
これは、前提条件が満たされなければ交渉を打ち切るという意味でしょうか?」
「その通りです。前提条件に関しては交渉の余地はありません。」
「・・・分かりました。我が国があなた方の前提条件を受け入れられるかどうか、一旦持ち帰り、検討させて頂きます。」
「それで結構です。」
タナカ少将は、アンダーソン中将があっさりと引き下がった事を、交渉打ち切りのシグナルと判断した。
『これで交渉は決裂するだろう。アメリカ側が前提条件を受け入れるとは思えない。
日米関係にはマイナスとなる展開だが、今回ばかりはやむを得ない。』
ところが事態は、タナカ少将の予想とは違った方向に進んで行く事になる。




